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カルテに書けない よもやま話  作者: いのうげんてん
1章 医者も人間
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<10> 医者の仕事は驚くことばかり-看取りは大仕事

 人が死ぬということは、本人はもちろん家族も医療者も、大変なことなのです。(←(^ω^)生きるのだってそうだよね)


 死亡診断するときには、心電図モニターで脈拍の波形がフラット(平坦)になったことを確認し、その記録用紙をカルテに貼ります。


 ところが波形は、素直にまっすぐになってくれるとは限リません。止まったと思いきやまた動き出したりして、その動静に翻弄されることもしばしばです。


「ご臨終です」


 おごそかに死亡宣告をして、集まった家族がワーッと泣き出したとたん、心電図がまたピコタンピコタンと動きだすこともあるのです。


 泣いていた家族もアレ~?てな顔をして、心電図をのぞきこんだりして。(←(^ω^)この時のバツの悪さってありゃしない)


 心臓モニターは敏感ですから、家族が泣いて抱きつきでもすれば、ノイズが入って、いかにも心臓は動いているかのように波形が出ます。


 ノイズだと分からない家族からすると、いかにもまだ心臓が動いているように見えてしまうのです。


 そんな時には、素知らぬ顔をして、モニターの電源をそっと切ってしまいます。


 時に、1度止まった心臓が、今わのきわのうめき声のように、本格的に動き出すこともあります。


 死亡確認しようと聴診器片手に構えていると、突然、動き出します。


「また動き出した!」


 知らん顔しているわけにもいきませんから、おおあわてで、また心臓マッサージをすることもあるのです。(←(^ω^)厳粛な場が、急に騒然となりますよ)


 つい最近、呼吸停止してから心停止するまで、40分かかった患者さんがいました。普通はだいたい5分もすると心停止がくるものです。


 呼吸は止まっているのに、いつまでたっても1分間に10拍ほど、モニターで脈打つのです。ノイズではありません。


 血圧はゼロでも、脈を打っている以上、死亡確認するわけにはいきませんから、1時間近く、隣室で止まるのをジーっと待ちました。(←(^ω^)モニターが壊れたかと思ったよ)


 看取る家族も大変です。


「いよいよ臨終間近です」


 病院から真夜中に電話を入れて、家族が急いで駆けつけてみると、患者はまた回復しています。(←(^ω^)こんな時、スイマセンとも良かったねとも、家族には言いにくいよね)


 夜中に起こされ疲れ切って、とぼとぼと家に帰って行く家族。


 さんざん呼び出されてもすべて空振りで、あげくの果てに、臨終に間に合わないってこともままあるのです。


 そうかと思うと、


「今回は厳しいです。覚悟してください」


と言ったのに、1年以上生きた人もいます。


 その間に、


「今度こそ厳しいでしょう」


と、何回、家族にムンテラ(病状説明)したことか。(←(^ω^)医者も家族も、「今度こそ」に慣れちゃいますよね)


 臨終の際にはいろいろなことが起き、まさにその人が生きた人生模様が描き出されるのです。


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