クリスマスの宝物
ある日の夜のことです。
外はきれいなネオンに包まれていました。
そんな、光を見ながら女の子はある決意をしました。
くまのぬいぐるみを手に取り、女の子はすくっと立ち上がりました。
寒い、寒い、木枯らしの吹く夜、女の子はそっと家を出ました。
女の子は大事な物を探しに行くことにしたのです。
シャク、シャク、シャク
女の子は踏むたびに、雪の音楽が鳴りました。
でも、そんな楽しい音楽とはうらはらに、足は雪の冷たさで、感覚が無くなってきました。
手も、風のいたずらでかじかんで動きません。
シャク、シャク
女の子はくまのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめ、一歩一歩、ゆっくりと歩きました。
このくまのぬいぐるみは、去年のクリスマスのプレゼント。
大事に、大事に、いつも、いつも、手を放したことはありません。
女の子は、抱きしめたぬいぐるみを見てニッコリ笑いました。
「くまちゃん、大丈夫? 寒くない?」
くまのぬいぐるみはジッと、その女の子を見つめていました。
女の子探し物はなかなか見つかりません。
シャク、シャク、シャク
「どこかなぁ。」
女の子は、必死で真っ白な道を歩きました。
いつの間にか、くまのぬいぐるみも、女の子も、雪に包まれ真っ白。
「くまちゃん、ひげ生えちゃったね。」
女の子は、くまのぬいぐるみを優しく撫でました。
「どこかなぁ。」
女の子は再び歩き始めます。
シャク、シャク、シャク
女の子は立ち止まると、空を見上げました。
「真っ白、真っ白、雪の世界、真っ赤な、真っ赤な、夢の世界、茶色い、茶色い、愛の世界。」
女の子は、歌い始めました。
その音楽は、雪の音楽とともに、何もない真っ白な空に響きました。
シャン、シャン、シャン、
遠くから何やら鐘の音が聞こえてきます。
シャン、シャン、シャン、
シャク、シャク、シャク、
どんどんと、その音楽は近づいてきます。
女の子は、そうとも知らず、空の向かって、大きな声で歌っていました。
シャン、シャン、シャン、
シャク、シャク、シャク、
「あーーーーー。」
女の子は、その音の正体を見つけ大きな声を出しました。
「見ーーつけた。」
目の前には真っ赤な服を着て、大きな袋を持って、白い髭を生やしたおじいさんが笑っていました。
「見つかったね。」
そのおじいさんはそう笑うとにっこり微笑みました。
「お父さんがね、寒いと思ったからね、お父さんにプレゼント持ってきたの。」
女の子はそのおじいさんに、小さい袋を渡しました。
おじいさんは目をまるく、まるくしながら、袋を開けました。
そこには、茶色い手袋がまるまって入っていました。
「ありがとう。」
そのおじいさんは、ギュッと女の子を抱きしめました。
「もう、来年は寒くないかな?」
「そうだね、この手袋があれば大丈夫。一緒に帰ろうか。」
おじいさんは、女の子とくまのぬいぐるみを、ソリに乗せました。
シャン、シャン、シャン、シャン・・・
その音楽はいつまでもいつまでも鳴り響いていました。