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神様、魅了の対象そこじゃないです 〜魅了スキルをもらったのに、対象が動物と魔物だけでした〜  作者: たかつど
第2章「星の向こう側」

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28話:均衡破壊装置、起動

 

 世界は壊れず、戦場になった


 街が、鳴いた。


 鐘でも、悲鳴でもない。

 世界そのものが軋む音だった。

 空気が震え、地面が唸り、建物が悲鳴を上げる。


「――起動を確認」


 セレナの声が、震える。


 上空。黒い裂け目が、完全に開いた。

 夜空を引き裂くように広がる"穴"の向こう側。


 そこには、形を持たないはずの、

 異界存在の影が、はっきりと覗いていた。


 無数の触手。

 歪んだ眼球。

 人の理解を拒絶する形。


「……見られてる」


 リーネが、呟く。


「違う」


 マコトは、空を見上げたまま言った。


「――測られてる」


 異界存在は、街を見ている。

 人を見ている。

 そして、マコトを、見ている。




 街の各所で、魔力反応が同時多発する。

 魔獣狂化。

 結界の歪み。

 暴走する魔道具。

 全部が一斉に、同時に、制御不能。


「……最悪の起動条件だ」


 アイシアが歯を食いしばる。


「均衡破壊装置……世界を一つの答えに収束させる兵器」

「強い者が生き残り、弱い者は淘汰される」

「それが、レグスの望む世界」


 ベルゼビュートが低く笑う。


「趣味の悪い思想だ」


 マコトは、頷いた。


「……でも、させない」

 

 その時。


「……来る!」


 エルナが叫んだ。


 街の南区画。狂化魔獣の群れ。

 北。異界影から落ちる"何か"。

 西。結界崩壊。

 東。市民避難が遅れている。


 同時だ。


 すべてが、同時に起きている。

 これは一人では、絶対に対処できない。

 

 マコトは、深く息を吸った。

 そして、迷わず、声を出す。


「ミルファ!」

「にゃっ!」

「南区画! 魔獣の動線を逃がす!」

「了解にゃ!」


 ミルファが、瞬時に動く。

 魔獣たちの前に立ち、関節を狙う。

 殺さない。傷つけない。

 ただ、動きを変える。

 魔獣たちは、街の外へ逃げ出した。


「アイシア!」

「北だな」

「迎撃じゃない! 落下角度を変えろ!」

「……なるほど」


 アイシアが、翼を広げる。

 氷の壁が、空中に展開される。

 異界存在の"何か"が、壁に当たり軌道が変わる。

 街の外へ、落ちていく。


「エルナ!」

「はい!」

「西の結界、完全修復じゃない!」

「持たせるだけでいい!」

「了解です!」


 エルナが、光を放つ。

 結界が、わずかに輝く。

 崩壊は、止まった。

 完全ではない。

 だが今は、それで十分。


「リーネ!」

「東区画ですね!」

「避難誘導優先! 魔法は抑制で!」


 リーネが、氷の道を作る。

 市民たちが、その道を走る。

 魔法は、攻撃ではない。

 守るための、道。

 

 誰一人、質問しなかった。

 誰一人、迷わなかった。


 それが、マコトの戦場だった。


 彼の指示は、明確だ。

 理由は、後で分かる。

 だから、みんな動ける。

 

 マコト自身は、前に出ない。

 代わりに、"見ている"。

 魔力の流れ。

恐怖の向き。

仲間の限界。


 すべてを、把握する。


(……ここだ)


 彼は、最小の魔法を放つ。

 風。ただの、風。

 詠唱なし。魔法陣なし。


 だがそれは、戦場全体の流れを、わずかに傾けた。


 魔獣たちの動きが、変わる。

 異界存在の攻撃が、外れる。

 結界の崩壊が、遅れる。


 すべてが、マコトの意図通りに、動く。

 

「……魔獣が、暴れない?」


 誰かが呟く。


「違う……止まってる」


 ミルファが、魔獣の背に立つ。


「マコトの声が聞こえるにゃ!」

「怖くないって、言ってるにゃ!」


 マコトの【獣魅了】は、狂化を解いていない。

 だが、魔獣たちの心に、届いている。


 《大丈夫》

 《怖くない》

 《逃げていい》


 魔獣たちは、マコトを見た。

 そして、街の外へ、逃げ出した。

 

 プーコが、マコトの隣に立つ。


(マコトは、やっぱりすごい!)


 モフが、マコトの肩で震えている。


(もふぅ……こわい……でも……)

(もふ……マコト、信じる……)


 マコトは、モフを優しく撫でた。


「大丈夫、みんながいる」

 



 裂け目の向こう。

 異界存在の影が苛立つように、揺れた。


《……理解不能》


 重なった声が、空から降る。


《均衡は、力によって決まるものだ》

《強者が生き、弱者が死ぬ》

《それが、世界の法則》


 マコトは、空を睨む。


「違う」

「均衡は、選択の積み重ねだ」


 彼の目は、真剣だった。


「力だけで決まるなら、俺はもう壊れてる」

「でも、仲間がいるから、俺は立ってる」


 異界存在が、さらに揺れる。


《……理解不能》

《個は、弱い》

《集団は、脆い》


「だが――」


 マコトは、笑った。


「俺たちは、壊れない」

 

 ベルゼビュートが、不敵に笑う。


「聞いたか、化け物」

「これが、壊れない戦い方だ」


 彼女の魔力が、解放される。

 だが、攻撃ではない。

 威圧だ。

 異界存在の動きが、止まる。


「マコトの邪魔は、させない」


 アイシアが、翼を広げる。


「私も、同じ」


 氷の壁が、裂け目を覆う。

 異界存在の視線が、遮られる。

 

 装置が、悲鳴を上げる。

 マコトという存在を、計算できない。

 破壊できない。制御できない。

 均衡の外側。


 レグスが、歯を食いしばる。


「……なぜだ」

「お前は、一人では何もできないはずだ」

「なのに」


 マコトは、レグスを見た。


「一人じゃないからだよ」


 彼の目は、優しかった。


「俺には、仲間がいる」

「だから勝てる」

 



 街は、まだ立っている。


 誰も、一人で戦っていない。


 マコトの指示が、戦場を整える。

 仲間たちが、それを実行する。

 連携が、生まれる。

 信頼が、力になる。

 マコトは、仲間を見る。


 そして、静かに言った。


「……行ける」

「この戦い、壊さずに、終わらせられる」


 リーネが、微笑んだ。


「ええ、もちろん」


 ミルファが、尻尾を振る。


「マコトがいれば、無敵にゃ!」


 エルナが、頷いた。


「マコトさんを、信じてます」


 ベルゼビュートが、笑った。


「……全く、面倒な人間だ」


 アイシアが、頷いた。


「でもそれが、マコトですから」


 プーコが、鼻を鳴らす。


(ぶもー!マコトを守る!)


 モフが、マコトの肩で震えている。


(もふぅ……がんばる……)

 



 裂け目が、さらに開く。


 だが恐怖は、もうなかった。

 マコトは、前を向いた。


「行くぞ、みんな」

「次は、レグスを止める」


 仲間たちが、叫ぶ。


「おおおおお!」


 最終決戦は、ここから"勝ち方"を選ぶ戦いへと変わった。




 

 レグスが、装置に手を置く。

 黒い魔力が、さらに強まる。


「……まだだ」

「まだ、終わらない」


 彼の目には、狂気が宿っている。


「均衡を消す」

「世界を、正しい形にする」


 装置が、さらに輝く。

 街全が、光り輝やく。

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