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神様、魅了の対象そこじゃないです 〜魅了スキルをもらったのに、対象が動物と魔物だけでした〜  作者: たかつど
第2章「星の向こう側」

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19話:異界存在の影

 

 ギルドの会議室は、珍しく静かだった。

 理由は簡単だ。セレナが、真面目な顔をしているからだ。


「……えー、皆さん」


 いつも余裕と色気を振りまいている彼女が、机に肘をつき、ため息をつく。


「今日はふざけません」


 全員が身構えた。


「それ、逆に怖いんですけど……」


 マコトのツッコミに、セレナは白い目を向ける。


「マコトくん、君が原因よ?」

「俺!?」


 セレナは、一枚の古い地図を広げた。


「この世界――ファルディアはね」

「異界と重なり始めている」


 ミルファが、耳を伏せる。


「……イヤなにおい、すると思ったにゃ」


 リーネが、真剣な表情で問う。


「異界……魔界や精霊界とは違う?」

「違うわ」


 セレナは、指で地図をなぞる。


「もっと雑」

「もっと、無秩序」

「そして――人の欲望に反応する」


 マコトは、嫌な予感しかしなかった。


「……それって」

「ええ」


 セレナは、マコトを見る。


「あなたみたいな存在が現れると、歪みが拡大する」

「俺、また地雷踏んだ!?」

「正確には、生まれた時点で踏み抜いてる」

「もふぅ……」


 モフが、マコトの肩で震えている。


(もふもふ……怖い……)

「大丈夫だ、モフ……多分」


 ベルゼビュートが、腕を組む。


「……異界存在」

「我と同格、あるいはそれ以上の外側のモノか」


 セレナは、頷いた。


「そして、それを意図的に刺激している人間がいる」


 マコトは、名前を口にする。


「……レグス」

「正解」


 場の空気が、少し重くなる。


 ――が。


「ちなみに」


 セレナは、軽く手を叩いた。


「世界はまだ滅びません」

「え?」

「今すぐではない、って意味」

「やめて!? 不安しか増えないから!」

「ぶもぉ……」


 プーコも、不安そうに鼻を鳴らす。


「ぶも……」

(状況が悪すぎる)

「お前まで……」


 エルナが、真剣な顔で言った。


「……セレナさん。具体的に、どうすればいいんですか?」

「それがね」


 セレナは、困ったように笑った。


「正直、わからないの」

「え……」

「異界存在は、予測不可能」

「ただ、一つだけ確実なのは――」


 セレナは、マコトを見た。


「マコトくんが、鍵になる」

「……俺が?」

「ええ。あなたの力、あなたの選択が、世界の運命を左右する」


 その言葉に、マコトは何も言えなくなった。


 ◇


 一方その頃。

 世界のどこでもない、歪んだ空間。

 レグスは、楽しそうに鼻歌を歌っていた。


「♪~ 今日も世界がきしんでる~」


 目の前には、黒い裂け目。

 そこから、何かが覗いている。


『……器……』

「あー、まだダメ」


 レグスは、指を振る。


「今出てきたら、壊れちゃうでしょ?」

『……魔獣の王……』

「それも違う」


 レグスは、軽く笑った。


「彼はね」

「壊す側じゃない」

「直そうとする側だ」


 裂け目が、ざわめく。


『……なら、なぜ近づける……』

「簡単だよ」


 レグスは、目を細めた。


「優しすぎるから」

「守るために、限界まで我慢する」

「壊さないために、自分を削る」


 彼は、肩をすくめる。


「そんなの、世界にとって最高の楔だ」


 裂け目が、歪む。


「だから僕は」


 レグスは、楽しそうに宣言した。


「彼が我慢できなくなる状況を作る」

「街を」

「魔獣を」

「人を」

「少しずつ、追い込む」


 笑顔のまま。


「選ばせるんだ」

「壊すか」

「壊さないまま、全部失うか」


 裂け目の奥で、何かが笑った。


『……愉快……』

「でしょ?」


 レグスは、振り返る。


「次は――街一つ分でいこうか」


 黒衣の人物が、現れた。


「……レグス。お前、本気か」

「当然」


 レグスは、邪悪な笑みを浮かべた。


「魔獣使いを、完全に追い詰める」

「そして、世界ごと――壊させる」


 ◇


 会議室。

 説明が終わり、マコトは頭を抱えていた。


「……つまり」

「俺が、耐えれば耐えるほど相手は喜ぶ?」


 セレナは、にっこり。


「そういうこと」

「最悪じゃないですか!」


 ミルファが、マコトの膝に飛び乗る。


「マコト、考えすぎにゃ」

「壊れそうなら、止めるにゃ!」


 リーネも、頷いた。


「一人で選ばなくていい」


 ベルゼビュートは、鼻で笑う。


「壊す時は、一緒に壊す」

「……それもどうかと思う」


 エルナが、静かに言った。


「でも……」

「あなたが迷う場所には、私たちが立つ」


 マコトは、皆を見る。


 怖い。

 世界は、確かに歪んでいる。


 でも。


「……ありがとう」

「とりあえず」


 マコトは、小さく笑った。


「レグスに思い通りにさせない方向で、頑張ろう」


 セレナが、親指を立てた。


「それでこそ」

「――世界は、まだ楽しい」


 その言葉だけが、妙に救いだった。


「もふー」


 モフが、マコトの頭の上に乗った。


(もふもふ……一緒にいる)

「……ありがとう、モフ」

「ぶもー」


 プーコも、マコトの足元で力強く鳴く。


(俺たちがいる)

「……そうだな」


 マコトは、仲間たちを見回した。

 みんなが、ここにいる。


 それだけで――


 前に進める。




 その夜。

 マコトは、一人で考えた。


(……世界が、歪んでる)

(俺のせいで)


 でも――


(逃げない)


 そう決めた。

 仲間がいる。

 だから、戦える。


 明日も、頑張ろう。

 そう思いながら、マコトは眠りについた。

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