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神様、魅了の対象そこじゃないです 〜魅了スキルをもらったのに、対象が動物と魔物だけでした〜  作者: たかつど
第2章「星の向こう側」

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15話:詠唱制御習得

 雪の名残が残る高原。

 人気のないこの場所で、マコトは杖を握って立っていた。



「……集中しろ」


 背後から、低く澄んだ声。

 アイシアだった。

 白銀の髪を揺らし、腕を組んでマコトを見下ろす。


「お前の問題はな、出力ではない」

「え?」

「全部全力で出していることだ」


 ぐさり。

 マコトは小さく呻いた。


「……無意識なんだよ。危ないって思うと、体が勝手に……」

「それが問題だ」


 アイシアは、地面に小石を一つ置いた。


「壊せ」

「え、それだけ?」

「条件を付ける。粉砕するな。転がせ」

「……難しくない?」

「できなければ、また街を壊すだけだ」


 マコトは、息を飲む。


「もふぅ……」


 モフが、マコトの肩で小さく鳴いた。


(頑張って)

「……ありがとう、モフ」


 ――詠唱。


「風よ……」


 いつもなら、ここで流れに任せていた。

 だが、今日は違う。


(威力を……絞る……流すだけ……)

「……押し、出せ」


 風が、そっと吹く。

 小石が、ころりと転がった。


「……!」


 マコトの目が、見開かれる。


「できた……?」

「偶然ではない」


 アイシアは、頷いた。


「今のは、意図した制御だ」


 その瞬間。


「マコトーーっ!!」


 ミルファが、全力で駆け寄ってくる。


「今の見た!? 全然ドカーンってなってなかったにゃ!」

「う、うん……」


 リーネも、慎重に近づく。


「……本当に、風が優しかった」


 ベルゼビュートは、腕を組んだまま鼻を鳴らす。


「ふん。ようやくだな」

「上から!」

「当然だ。世界を壊しかねん力を持っているのだからな」


 マコトは、苦笑する。


「……でも、正直ちょっと怖い」

「なぜだ?」

「威力を抑えても、まだ……強すぎる気がする」


 アイシアの目が、細くなる。


「それは、限界ではない」

「え?」

「選べるようになっただけだ」


 彼女は、静かに告げる。


「強さとは、出力ではない」

「どこまで使わないかを決められることだ」


 その言葉が、胸に落ちる。


「……守るために、壊さない」 


 マコトは、小さく呟く。


「ぶもー」


 プーコが、マコトの足元で力強く鳴いた。


(お前はできる!)

「……ありがとう、プーコ」


 次の瞬間。

 遠くで、魔獣の咆哮。

 Bランク相当。

 以前なら、街が危なかった。


「……行こう」


 マコトは、前に出る。


「今回は――倒すけど、何も壊さない」


 詠唱。

 風と土を、同時に。

 ――地面が盛り上がり、風が巻き付く。

 魔獣は、押さえ込まれ、地に伏した。


 倒壊なし。

 被害ゼロ。

 静寂。


 リーネが、ぽつりと呟く。


「……すごい」


 ミルファが、飛びつく。


「マコト! かっこいいにゃ!」


 ベルゼビュートは、満足げに笑う。


「ふふ……ようやく、使い手らしくなったな」


 マコトは、少し照れながら、空を見上げた。


(俺……ちゃんと、強くなってる)


 それは、初めて感じた確かな成長だった。

 エルナが、小さく呟いた。


「……あの人、本当に成長が早い」

「ええ」


 リーネが、微笑んだ。


「マコトさんは、諦めないから」


 アイシアが、マコトの肩を叩いた。


「よくやった」

「……ありがとう、アイシア」

「礼には及ばん」


 彼女は、満足そうに笑った。


「これで、お前は一歩前に進んだ」

「一歩……」

「ああ。まだ道は長いが、確実に進んでいる」


 その言葉に、マコトは少しだけ安心した。






 その夜。

 マコトは、訓練の疲れで早めに眠った。


「もふぅ……」


 モフが、マコトの頭の上で丸まっている。


「ぶもぉ……」


 プーコも、マコトの足元で眠っている。

 ミルファは、マコトの腕に抱きついている。


「にゃー……」


 マコトは、小さく笑った。


「……ありがとう、みんな」


 明日も、頑張ろう。

 そう思いながら、マコトは眠りについた。


 ――だが。


 制御できるようになったその力を、狙う者がいることを。

 まだ、マコトは知らない。






 王都の地下。

 レグスは、黒衣の人物と向き合っていた。


「……あいつ、また強くなってる」

「ふむ。魔獣使い、か」

「俺の力じゃ、もう勝てない」

「安心しろ」


 黒衣の人物が、笑った。


「お前には、まだ切り札がある」

「切り札……?」

「ああ。あの男の力を、利用する方法だ」


 レグスの目が、狂気に染まった。


「……教えてくれ」

「いいだろう」


 黒衣の人物が、レグスに何かを囁く。

 レグスの笑みが、深くなった。


「……なるほど。それなら……」

「お前なら、できる」

「……ああ。やってやる」


 レグスは、立ち上がった。

 その目には、明確な殺意が宿っていた。







 翌朝。

 マコトは、いつも通り訓練を始めた。


「よし、今日も頑張ろう」

「にゃー!」

「ぶもー!」

「もふー!」


 賑やかな声が、高原に響く。


 でも、マコトは気づいていなかった。

 遠くから、自分を見つめる冷たい視線に。

 レグスが、木陰からマコトを見ていた。


「……楽しそうだな、魔獣使い」


 その声は、氷のように冷たかった。


「でも、すぐに終わる」


 レグスは、懐から黒い結晶を取り出した。


「お前の力、俺が奪ってやる」


 不穏な影が、マコトに近づいていた。

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