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神様、魅了の対象そこじゃないです 〜魅了スキルをもらったのに、対象が動物と魔物だけでした〜  作者: たかつど
第2章「星の向こう側」

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14話:暴走する力、壊れる街

 最初は、本当に些細な違和感だった。


「……最近、魔獣の動き、変じゃない?」


 市場近くの通りで、リーネが低く呟く。

 マコトも、同じ感覚を抱いていた。

 魔獣は出ている。数も、強さも、これまでと大差はない。


 ――だが。


(怖い)

(逃げたい)

(でも、止まれない)


 心読に、歪んだ感情が混じる。


「……苦しい、感じがする」


 マコトの声に、ベルゼビュートが眉をひそめた。


「狂化だが、質が違うな」

「前は、怒り一色だったにゃ?」


 ミルファが、首を傾げる。


「うん。今は……無理やり動かされてる」

「もふぅ……」


 モフが、マコトの肩で震えている。


(もふもふ……怖い……)

「大丈夫だ、モフ」


 その瞬間。


 ――轟音。


 通りの先で、石壁が砕け散った。


「きゃあああっ!」

「魔獣だ!」


 現れたのは、Cランク相当の魔獣。

 だが、その動きは異様だった。

 よろめき、躓き、それでも突進する。

 自我が壊れている。


「……止める」


 マコトが前に出る。


「マコト、慎重に!」


 詠唱。


 風を――


 ――強すぎた。


 突風が、魔獣を吹き飛ばし、そのまま家屋へ。

 壁が、崩れ落ちる。


「……!」


 悲鳴。

 粉塵。

 街が、壊れた。


「……俺……」


 マコトの手が、震える。


「制御、できてたはず!」

「戦場ではね……」


 リーネが、唇を噛む。


「……街は、壊れやすいのよ」

「ぶもぉ……」


 プーコが、マコトの足元で小さく鳴いた。


「ぶも……」

(マコトのせいじゃない)

「……でも」


 そのとき。


「――相変わらずだな」


 聞き覚えのある声。

 瓦礫の向こうから、一人の男が歩いてくる。

 短い銀髪。鋭い目。


「……レグス」


 敵対冒険者。

 かつて、マコトを外れスキル使いと嘲笑20話「俺が止める役目?」男。


「英雄様の力、街には少し過剰だったみたいだ」

「……!」

「魔獣は倒す。建物は壊す。人は怯える」


 レグスは、楽しそうに笑った。


「それで、何が守れた?」


 マコトの胸が、締め付けられる。


(違う)

(わざとじゃない)

(でも――)

「お前の力、正義じゃない」


 レグスは、低く告げる。


「使い方を間違えれば、ただの災害だ」


 ベルゼビュートが、一歩前に出る。


「黙れ」


 威圧が、空気を震わせる。


 だが、レグスは退かない。


「忠告だよ。魔王竜様」


 彼は、マコトを見た。


「次に壊れるのは、街じゃ済まない」


 そう言い残し、姿を消す。


 だが――

 その瞬間、マコトは感じた。

 レグスの体から、異質な魔力。


(……あれは)


 邪教団の黒い結晶と、同じ気配。


「……レグス、お前……」


 でも、もう彼はいなかった。



 *




 壊れた壁の前で。

 マコトは、頭を下げていた。


「……ごめんなさい」


 住民たちは、戸惑いながらも首を振る。


「助けてもらったのは事実だ」

「でも……怖かった」


 その言葉が、胸に刺さる。


「もう一度、ごめんなさい」


 マコトは、深く頭を下げた。

 エルナが、小さく呟いた。


「……あの人、本当に優しすぎる」

「ええ」


 リーネが、頷く。


「だから、辛いんです」


 ミルファが、マコトの手を握った。


「マコト、元気出すにゃ」

「……ありがとう」


 ベルゼビュートが、腕を組んだ。


「マコト。お前は、間違ってない」

「でも……」

「力の使い方を、学んでいる最中だ」


 彼女は、マコトの肩に手を置いた。


「焦るな」




 *




 夜。

 マコトは、一人、街の外れに立っていた。


「……強くなるって、こういうことか」


 力は、救う。

 同時に、壊す。

 ミルファが、そっと隣に来る。


「マコト」

「……」

「間違えたらさ、直せばいいにゃ」


 いつもの、軽い声。


「逃げなかったにゃ」


 マコトは、ゆっくり頷く。


「……逃げなかった」


 ベルゼビュートの声が、背後から響く。


「世界は、力ある者に厳しい」

「でも――」

「壊したことを悔やむ者は、まだ人だ」


 マコトは、拳を握る。


「もふぅ……」


 モフが、マコトの頭の上に乗った。


「もふもふ……」

(一緒にいる)

「……ありがとう、モフ」

「ぶもー」


 プーコも、マコトの足元で鼻を鳴らす。


「ぶも」

(私たちがいる)

「……そうだな」


 エルナが、少し離れた場所から言った。


「……マコトさん」

「……何?」

「あなたは、間違ってない」

「え?」

「力を恐れること。それは、正しいです」


 エルナの目が、真剣だった。


「力を恐れない者は、暴走する」

「……そうか」


 リーネが、マコトの隣に並んだ。


「マコトさん。私たちが、一緒にいます」

「……ありがとう」


 街は、壊れた。

 力は、暴走した。


 それでも。

 マコトは、前を向く。

 制御しなければならない。

 守るために。


 そして――

 狂化は、確実に次の段階へ進んでいた。

 レグスの不穏な姿。

 邪教団の影。

 全てが、繋がり始めている。

 マコトは、それをまだ理解していなかった。


 でも、確実に――

 戦いは、近づいている。

 その夜、マコトは魔獣たちに囲まれて眠った。


「もふぅ……」

「ぶもぉ……」

「にゃー……」


 温かい。


 それだけで、少しだけ救われた。

 明日も、頑張ろう。

 そう思いながら、マコトは眠りについた。


 重さを抱えたまま、でも――

 確かに、前を向いて。

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