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神様、魅了の対象そこじゃないです 〜魅了スキルをもらったのに、対象が動物と魔物だけでした〜  作者: たかつど
第2章「星の向こう側」

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10話:魔獣狂化事件

 


 異変は、朝だった。

 王都近郊の草原。本来なら温厚な草食魔獣が棲む場所。


 ――そこが、地獄絵図になっていた。


「……これは」


 リーネが、息を呑む。

 倒れ伏す魔獣たち。傷は浅い。だが、目が――赤い。


「狂化、ですね」


 エルナの声は、冷静だが、どこか硬い。

 マコトは、膝をついた魔獣の前に立っていた。

 震える体。荒い息。

 その小さな魔獣が、マコトを見上げる。


「……っ」


 ――声が、直接、頭に流れ込んできた。


(たすけて)


 マコトの喉が、詰まる。


(こわい やめたい)


 微心読。誤作動混じりの、それでも確かな"心"。


「……助けを、求めてる」


 ベルゼビュートが、目を細めた。


「やはりか」

「知ってるんですか?」

「邪教団が動き出しておる」


 マコトの胸が、重くなる。


「……再燃、してる?」


 リーネが、唇を噛んだ。


「魔獣狂化事件……終わってなかったんですね」

「もふぅ……」


 モフが、マコトの肩で震えている。


(もふもふ……怖い……)

「大丈夫だ、モフ」


 その時。


 ――殺気。


「来る!」


 ミルファが叫ぶ。

 森の奥から、人影。数は――多い。


「……冒険者?」


 マコトが、目を見開く。

 先頭に立つ男。鋭い目。


 ――見覚えがある。


「……あ」


 ギルドで、マコトを睨んでいた男。敵対冒険者。


「見つけたぞ、化け物魔獣使い」

「……化け物?」


 マコトは、言葉を失った。


「お前が、魔獣を狂わせてるって噂だ」

「ち、違います!」

「証拠ならある」


 男が、懐から黒い結晶を投げ捨てる。

 狂気を帯びた魔力。

 ベルゼビュートが、低く唸った。


「……邪教団」

「やっぱり、絡んでる」


 エルナが、冷静に言った。


「……この魔力、邪教団のものです」

「知ってるのか?」

「ええ。過去に、関わったことがあります」


 その声が、少しだけ震えていた。

 戦闘。

 敵対冒険者たちは、本気だった。


「殺すな!」


 マコトが叫ぶ。


「止めるだけで!」

「甘い!」


 刃が、マコトへ振るわれる。

 反射的に、手が動いた。


 ――詠唱なし。


 土が盛り上がり、盾となる。


「なっ……!?」


 敵冒険者が、驚愕する。

 風が、仲間を包み、衝撃を逸らす。

 戦況は、一方的だった。


 ――強い。


 マコトは、それを自覚してしまった。


(……俺、本当に……)


 だが。

 狂化した魔獣が、マコトに向かって吠える。

 攻撃。


「っ……!」


 躊躇。

 マコトの一瞬の迷いが、致命的だった。


「マコト!」


 リーネが、叫ぶ。


 ――間一髪。


 ベルゼビュートが、前に出た。


「貴様、優しさを履き違えるな」


 魔王竜の威圧。

 狂化魔獣が、動きを止める。

 マコトは、唇を噛んだ。


(……俺のせいで、迷わせた)

「ぶもー!」


 プーコが、マコトの前に立った。


(私が守る!)

「プーコ……」


 ミルファも、爪を構える。


「マコトは、ミルファが守るにゃ!」


 エルナが、回復魔法の準備をする。


「……私も、戦います」


 マコトは、仲間たちを見回した。


「……ありがとう」


 敵対冒険者たちは、マコトの力を見て戦意を失った。


「……くそ」

「覚えてろよ」


 撤退していく。

 残されたのは、倒れた魔獣たち。

 マコトは、膝をついた。


「……俺が、全部止められたら……」


 その時。

 ミルファが、マコトの頭に飛び乗った。


「マコト!」

「うわっ!?」

「落ち込む前に、撫でるにゃ!」

「今それどころじゃ――」


 ミルファが、額をこすりつける。


「魔獣たち、マコトが来て安心してるにゃ」


 周囲を見る。

 狂化が、少しずつ――弱まっている。

 エルナが、目を見開いた。


「……魔力干渉が、緩和されてる」


 リーネが、苦笑した。


「……本人は、ズタボロなのに」


 ベルゼビュートが、鼻を鳴らす。


「まったく……放っておけん男だ」


 マコトは、顔を上げた。


「……まだ、止まってない」

「でも」

「助けを、求められたら……無視できない」


 沈黙。

 そして。


「――はぁ」


 ベルゼビュートが、深く溜息をついた。


「仕方ない」

「え?」

「世界がズレ始めたのなら、正面から付き合ってやる」


 マコトは、思わず笑ってしまった。


「……なんか、大事になってません?」

「今さらだ」


 ミルファが、元気よく宣言する。


「じゃあ、ご飯にゃ!」

「そのテンション!?」


 緊張が、少しだけ溶けた。


 だが。

 マコトの胸の奥に、重く残る感覚。


 ――魔獣狂化。

 ――邪教団。

 ――敵対冒険者。


 平和は、まだ続いている。 


 けれど。


 確実に、歯車はズレ始めていた。




 その夜。

 マコトは、星空を見上げながら思った。


(……俺、どこまで行くんだろうな)


 その問いに、答える者は、まだいなかった。


 ――ただ一つ確かなのは。


 もう、元の「普通」には戻れない。 


 ……という自覚だけだった。





 その後、魔獣たちは全員元気になり、なぜかマコトの周りに集まりすぎて野営地がモフモフ地獄になった。


「ちょ、寝る場所!」

「マコトは真ん中にゃ!」

「もふもふ……」


 モフも、マコトの頭の上に乗っている。


「ぶもー」


 プーコも、マコトの足元で丸まっている。

 さらに、助けた魔獣たちが次々とマコトに寄ってくる。


「……ズレてるの、やっぱり世界じゃなくてこの人ですよね」


 エルナが、呆れたように呟いた。

 リーネが、笑いながら言った。


「でも、これがマコトさんらしいですよね」


 ベルゼビュートが、腕を組んで言った。


「……まあ、悪くはない」

「悪くはない?」

「ええ。賑やかで」


 マコトは、魔獣たちに囲まれながら思った。


(……これでいいのかな)


 でも、悪くない。

 そう思えた、騒がしい夜だった。

 ――笑いで、夜は終わった。





 翌朝。

 ギルドで、新しい噂が広まっていた。


「魔獣使い、魔獣狂化を鎮めた」

「邪教団と敵対冒険者を撃退」


 マコトは、その噂を見て固まった。


「……また、話が大きくなってる」

「当たり前にゃ」


 ミルファが、得意げに言った。


「マコトは、英雄にゃ」

「英雄じゃないって……」

「ぶもー」


 プーコも、誇らしげに鼻を鳴らす。


(認めろ)

「お前まで……」


 ベルゼビュートが、満足そうに笑った。


「……お前は、もう普通じゃない」

「普通じゃない……」

「ああ。特別だ」


 その言葉に、マコトは何も言えなくなった。


(……俺、特別なのかな) 


 でも、まだ――このままで

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