表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様、魅了の対象そこじゃないです 〜魅了スキルをもらったのに、対象が動物と魔物だけでした〜  作者: たかつど
第2章「星の向こう側」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/78

1話:英雄扱いに慣れない

1日おそいですが


明けましておめでとうございます。

皆様に幸多き一年となりますようにお祈り申し上げます。

 ――結果から言えば。


 その魔獣は、マコトが本気を出す前に倒れていた。


「……え?」


 マコトは、地面に転がる巨大な影を見下ろし、素直に困惑していた。


 灰色の毛皮、鋭い牙、分厚い前脚。

 見た目だけなら完全に危険指定――Dランク相当の魔獣 灰牙豹(グレイファング)


 本来なら、複数人パーティで慎重に当たる相手だ。


 なのに。


「……あれ?」


 マコトは、自分の手を見る。

 さっきやったことと言えば


 ・魔獣が突っ込んできた

 ・反射的に魔力を流した

 ・地面が凍った

 ・滑って転んだ

 ・そのまま首から落ちた


 ――以上。


「たまたま……だよな?」


 その言葉に、周囲の冒険者たちがざわついた。


「た、たまたま……?」

「いや、今の見たか?」

「凍結の範囲、おかしくなかったか?」


 魔獣の周囲は、円を描くように凍りついている。しかも、ピンポイントで足元だけ。


「制御、上手すぎだろ……」

「いや、無詠唱だったぞ……?」


 マコトは慌てて手を振る。


「い、いや違うんです! 狙ってないです! ほんとに足滑らせただけで……!」


 言えば言うほど、周囲の視線が変わっていく。


「……謙遜?」

「余裕の証か?」

「いや、あの年で?」


 マコトは胃が痛くなった。


(違う……! 俺はただ、相変わらずドジなだけだ……!)


 そのとき。


「ぶもーーーー!!」


 誇らしげな鳴き声が響いた。


 マコトの足元。

 そこには――胸を張り、鼻息荒く立つ、巨大猪魔獣・プーコ。


 前脚を高く上げ、完全に勝利ポーズ。


(見たか人間ども! これが我が主だ!)

「ちょ、プーコ! 静かに!」


 マコトが慌てて止めるが、遅い。


「おい、あの魔獣……」

「完全にドヤってないか?」

「マコトの使い魔だよな……?」


 プーコはマコトの横にぴったり並び、さらに胸を張る。


「ぶもぉ……」


 マコトの腰に、鼻先をすり、と。


「……」


 マコトは、静かに天を仰いだ。


(なんで俺より、こいつの方が英雄っぽいんだ……)

「もふもふ!」


 肩の上のモフも、得意げに鳴いた。


(私も手伝ったぞ!)

「お前、ずっと肩で震えてただけだろ……」

(精神的支援は重要……)

「それ、何の役にも立ってない……」


 その様子を、少し離れた場所から見ていたリーネが、小さくため息をつく。


「……マコトさん」

「はい」

「一応、言っておきますけど」


 リーネは、冷静な声で言った。


「今の、普通じゃありませんからね?」

「えっ」

「たまたまでDランク魔獣は倒れません」


 マコトは、言葉に詰まる。


「……そう、ですか」

「はい」


 リーネは少しだけ、困ったように笑った。


「どうやらあなた、もう弱い冒険者じゃないみたいです」


 マコトは、その言葉を受け止めきれず、視線を落とす。


「……でも、実感、ないです」

「それでいいんです」


 リーネは、空を見上げた。


「慢心しない英雄が、一番厄介ですから」


 プーコが、マコトの背中を鼻で押す。


「ぶも!」

「……帰ろうか」


 マコトは苦笑して、歩き出した。


 周囲の冒険者たちの視線は、確かに――以前とは違っていた。


 だが本人だけが、まだ気づいていない。

 ――自分が、確実に強くなっていることに。


 ギルドに戻ると、受付嬢が驚いたように声を上げた。


「魔獣使い殿! もう戻られたんですか!?」

「え、ああ……はい」

「グレイファングは……?」

「倒しました」

「……一人で?」

「いえ、プーコとモフと……」

「ぶもー」


 プーコが、胸を張る。


「もふ!」


 モフも、尻尾を振る。

 受付嬢は、しばらく黙っていたが、やがて小さく呟いた。


「……やっぱり、噂は本当だったんですね」

「噂?」

「魔王を仲間にした冒険者、って」


 マコトの顔が、真っ青になった。


「い、いや、仲間っていうか……あれは……」

「謙遜なさらなくても」


 受付嬢は、微笑んだ。


「あなたは、もう英雄ですよ」

「英雄って……」


 マコトは、頭を抱えた。


(違う……俺はただ、運が良かっただけで……)


「ぶもぶも」


 プーコが、マコトの足を鼻で突く。


(お前は強い。認めろ)

「お前に言われたくない……」

(でも、本当だよ)


 モフも、珍しく真面目な声で鳴いた。

 リーネが、マコトの隣に並んだ。


「マコトさん。みんなが言ってること、本当ですよ」

「でも……」

「強くなったこと、認めてあげてください」


 リーネは、優しく微笑んだ。


「じゃないと、あなたを信じてる人たちに失礼です」


 その言葉に、マコトは何も言えなくなった。


「……わかりました」

「よかった」


 リーネは、安心したように笑った。




 その夜。


 宿に戻ったマコトは、ベッドに寝転びながら考えた。


(俺、本当に強くなったのかな……)

「ぶもぉ……」


 プーコが、部屋の隅で丸まっている。


「もふぅ……」


 モフも、マコトの枕の上で眠っている。


(……まあ、いいか)


 マコトは、小さく笑った。


(強くなったかどうかは、わからないけど)

(守りたいものは、増えた)


 それだけで、十分だ。

 そう思いながら、マコトは眠りについた。


 そしてこの日。

 ギルド内で、こんな噂が広まり始める。


「謙遜が過ぎる変な魔獣使い」

「強いのに自覚がないのが一番怖い」


 マコトはまだ知らない。

 自分が英雄に近づいていることを。


 そして――

 新しい冒険が、すぐそこまで来ていることを。



2章から更新は1日に1話になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ