アイシア編:「古代竜の観察記録」
「結論」
アイシアは、淡々と告げた。
「マコト・タカハシは、魔獣の王に最も向いていない」
「ひどくない?」
「だが」
彼女は続ける。
「だからこそ、最も適任だった」
支配しない。恐れない。線を越えない。
「力を持つ者が、力に溺れない例として」
「私は、この時代を記録する」
マコトは苦笑する。
「後世にどう書かれるんだろうな」
「こうだ」
アイシアは言った。
「世界を救った、いちばん弱くて、いちばん優しい男」
「やめろ恥ずかしい」
古代竜は、少しだけ笑った。
「マコト。お前は、いい選択をした」
「……ありがとう」
「礼には及ばん。私は、ただ見届けただけだ」
彼女は、空を見上げた。
「これからも、見届けるぞ」
「お前の、未来を」
マコトは、微笑んだ。
「頼むよ、アイシア」
「ああ」
アイシアは、少しだけ柔らかい表情で言った。
「お前と旅をして、私も変わった」
「変わった?」
「ああ。人間というものを、少しだけ理解できた気がする」
「それは……」
「お前のおかげだ」
アイシアは、マコトの肩に手を置いた。
「ありがとう、マコト」
「……こちらこそ」
古代竜は、静かに頷いた。
「さあ、行くぞ。まだ、やるべきことがある」
「ああ」
二人は、空を見上げた。
未来は、まだ見えない。
でも、確かに――
希望は、そこにあった。




