第3話 命令拒否と人質、そして旅立ち
ケンジを除く天文部メンバーは再び召喚された広間に召集されていた。
「あなたたちに頼みたいことがあります」
そう告げるのはホロー・マギアン。
アクトーク子爵の側近の魔術師だ。
「異界からの来訪者の力を用いて、黒竜を討伐してください」
天文部メンバーに黒竜討伐を依頼するホロー。
アクトーク子爵はホローの横で黙って、じっと天文部メンバーを見つめている。
「黒竜?」
リョウが口に出した。
「はい。一夜にして旧王都を壊滅させた邪竜、今も旧王都跡地に巣食う怪物、それが黒竜です」
リョウの言葉にホローが返す。
「……私たちに伝説の邪竜を討てというのですか?」
ココがホローに尋ねる。
「そうです。あなたたち異界からの来訪者なら可能でしょう」
「無理です。私たちはただの学生です。少し強い能力があるかもしれませんが、そんな伝説の邪竜とかを討伐できるはずがありません。私達には無理なので元の場所に帰してください。そして別の適任者に頼んでください」
ココは天文部を代表してホローの依頼を拒否し、適任者に頼んで自分たちを元の世界に戻すように要求する。
今まで黙っていたアクトーク子爵が口を開く。
「やはり、素直に言う事を聞かんか」
「そのようですね」
アクトーク子爵の言葉にホローが賛同する。
「あれを連れてこい、現実を見せてやれ」
アクトーク子爵がそういうと、一人の兵士が誰かを連れて現れる。
「何をする!?」
兵士が連れて来たのは部屋に残されたケンジだった。
ケンジは両腕を鎖で拘束され、首もとには剣を突き付けられていた。
「カネモト君!」
「ケンジ!?」
「カネモト先輩ッ!」
「カネモト先輩!?」
兵士に連れられてきたケンジの状況に天文部メンバーは動揺する。
「貴様らが命令を聞かんのなら、この無能がどうなるか分かるだろう?」
アクトーク子爵は醜い笑みを浮かべて天文部メンバーに言う。
「あなたって人は!!」
アカリが炎を滾らせ、火炎を収束、炎の槍を形成してアクトーク子爵に向ける。
「ワシを焼くか?構わんが、そんなことをするとお友達もただでは済まんぞ?」
余裕の笑みを浮かべるアクトーク子爵。
ケンジの首に剣を突き付ける兵士はアカリの動き次第で、いつでもケンジに刃を突き立てられるように準備をしている。
それを見たアカリは炎を消す。
「うぅ……、カネモト先輩……」
アカリの頬を悔し涙が伝う。
(クソッ、なんで俺にはなんの力もないんだ……!)
人質となり、天文部メンバーの足手まといとなったケンジは、アカリの涙に己の無力を呪う。
「クックック、無能がいるからどうしたものかと思ったが、存外使えるではないか!」
アクトーク子爵は天文部メンバーをしり目に笑い声をあげる。
「そういう事ですので、あなた達には黒竜討伐をしてもらいます。拒否しても構いませんが、その場合はわかりますよね?」
ホローは表情を変えずに淡々と天文部メンバーに告げる。
「くっ……、卑怯者共め。黒竜を討伐したらカネモト君を開放しろ!それが条件だ!」
「いいだろう。貴様らが黒竜を討伐して帰還するまで、この無能の身の安全は保障してやる」
ココの条件を飲み、ココたちが帰ってくるまでケンジの身の安全は保障すると約束するアクトーク子爵。
「話もまとまったようですので、さっそく準備に取り掛かりましょう。明日の朝には出発してもらいます」
ホローの言葉でこの場は解散となった。
◆◆◆
翌朝、ケンジは天文部メンバーの出発を見送る事になる。
天文部メンバーはこの世界の旅人装束に着替えて、剣や弓などの武器を携えて旅の用意を終えていた。
「最後に別れの言葉を伝えさせて下さい」
天文部メンバーの旅立ちを見送るために来ていたアクトーク子爵やホロー、他数名の兵士にアカリが言う。
「いいだろう、手短に終わらせろ」
許可を出すアクトーク子爵。
アカリはケンジの元に近づき、そして、そっと抱き着く。
「ア、アカリ!?」
アカリの行動に動揺するケンジ。
「カネモト先輩、ううん、ケンジ先輩、好きです。これが最後かもしれないので、この想いは伝えておきたくて」
「アカリ……」
アカリの告白に少し驚くケンジ。
こんな状況でなければ素直に喜んでいた。
(ケンジ先輩、みんなで作ったお守りです。私たちだと思ってください)
アカリはケンジの耳元で囁いて、周囲にはバレない様にケンジのポケットにお守りを忍ばせる。
「それじゃあ、ケンジ先輩、お元気で」
「アカリ、みんな……、死ぬなよ!ちゃんと帰って来いよ!」
ケンジはただ、旅立つ仲間を見送る事しかできなかった。
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