第2話 異能覚醒と無能者
「お待たせしました」
ホローがボーリング玉ほどの大きさの水晶を抱えて帰って来た。
一緒にいる従者と思われる男は台を抱えている。
おそらく巨大水晶を乗せる台なのだろう。
「こちらの水晶に触れてください。これが魔能診断です。触れるだけなので簡単です」
そう言い、ホローは水晶に触れる。
すると水晶は橙色に変化し、謎の文字を表示する。
「私は土属性なので、土属性に対応する橙色に、そして、適性のある錬金魔術が文字で表示されました」
ホローは魔能診断の説明を終え、次は貴方たちの番です、と天文部に告げる。
「私から行こう。部長だしな」
「ココ先輩……」
部長であるココが最初に魔能診断を受ける。
天文部メンバーは心配そうにココを見つめる。
ココが水晶に触れると、水晶は橙色に変化し、謎の文字を表示する。
読める文字ではないが、ホローの時とは違う文字であることはケンジたちにも分かった。
「ほう、なるほど。すごいものですね異界からの来訪者は」
ココの結果を見てホローは呟く。
魔能診断を終えてココは戻ってくる。
「ココ先輩、大丈夫ですか?」
リョウが問いかける。
「ああ、なんというか不思議な気分だ。あの水晶に触れると、自分の能力とこの世界の知識が流れ込んでくる。元から自分に異能があって、この世界の文字が読めたと錯覚するよ」
ココは自分に起きた変化を説明する。
「すごいですね。じゃあ、次はあたしが行ってみても良いですか?」
フウカが次に立候補する。
話し合いの結果、フウカ、リョウ、アカリ、ケンジの順番で魔能診断を受ける事になった。
「すごいですね。ココ先輩も言っていましたけど、最初から異能と識字出来た様な気がします」
水晶に触れて帰って来たフウカが感想を言う。
魔能診断の結果、ココは地属性、フウカは風属性、リョウは水属性、アカリは火属性だと診断される。
そしてケンジの番がやってくる。
水晶に手を触れるケンジ。
だが、水晶は何の変化も起こさなかった。
色は変わらず、文字の表示も無し。
「ん?何も起きない?」
変化を起こさない水晶に対して不思議に思うケンジ。
「これはこれは、非魔法職でも何かしらの反応がある魔能診断で無反応とは。異界からの来訪者とは興味深い存在ですね」
「つまりは無能が一匹紛れ込んどるという訳では無いか!」
興味深そうに呟くホローに対し、怒りを見せるアクトーク子爵。
「まあまあ、アクトーク様。それはこれから話し合いましょう。あなた達も少し疲れたでしょう? お部屋にお通ししろ」
ホローはアクトーク子爵をたしなめ、配下にケンジたちを部屋に案内するように命令する。
「こちらです」
案内係の兵士について行き、豪華な部屋へと通されるケンジたち。
「それではごゆっくり」
そう言い残して案内役の兵士は去っていく。
天文部メンバーはソファーに腰掛けてやっと一息つく。
「これからどうなるんですかね、私達……」
フウカが不安そうに呟く。
「異世界転移ってやつだよね。アニメでよく見るけど自分の身に起きるとちょっと怖いね」
「そうですね」
リョウの言葉に同意するアカリ。
「これからどうする、か。俺はこれからどうなるんだろうな……」
ケンジが呟く。
他の天文部メンバーは強力な異能を持つが、ケンジのみ異能を持たず、アクトーク子爵から無能の烙印を押されている。
この状況がケンジを不安にさせていた。
「だ、大丈夫ですよ!いざとなれば私の炎で先輩を守ります!」
アカリがケンジを励ます。
「……ありがとな。ところで、みんなどんな能力なんだ?」
アカリの励ましを受け取ったケンジは率直な疑問を投げかける。
「ふむ、では少し説明しようか」
ココがケンジに説明する。
ココたち別世界から来た者は異界からの来訪者と呼ばれ、異界からの来訪者は異能と呼ばれる、この世界に存在する魔法体系とは別の特殊能力を有する。
異能は精神力に由来し、本能的に能力を扱う超能力に近い力で、精神力で発動するため、闘志や活力がある限りエネルギー切れしないという、この世界では破格の性能を有する。
異能の性質は人によって異なり、出来る事も違う。
ココは精神力を大地の力に変換して操る異能「地魔天操」、リョウは精神力を水の力に変換して操る「水魔天操」、アカリは精神力を火の力に変換して操る「炎魔天操」、フウカは精神力を風の力に変換して操る「風魔天操」の異能を有している。
「へえ、みんなすごい能力を持っているんだな」
ココの説明と各々の異能の内容を聞いたケンジは天文部メンバーの異能に感心する。
その時だった、部屋の扉がノックされる。
ココが「どうぞ」と答えると案内役の兵士が入ってくる。
「アクトーク子爵がお呼びです。ついて来てください」
天文部メンバーが立ち上がり、兵士の後について行くが、ケンジのみ別の兵士に止められる。
「あなたには別の要件があるので、お部屋で待機していてください」
兵士にそう言われ、ケンジは不思議に思いながらも部屋で待機する事になり、他の天文部メンバーを見送る事になる。
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