第1話 日常からの異世界召喚
放課後の廊下を一人の青年が部室へ向かって歩を進めていた。
金本 研二は中肉中背、黒髪で平凡な青年で天文部に所属している。
ケンジが天文部の部室に向かって歩いていると後ろから声を掛けられる。
「カネモト先輩、一緒に行きましょうよ!」
ケンジが振り返るとそこには2人組の女子生徒がいた。
天文部の後輩の火野 灯と風間 風香だ。
アカリは黒髪おさげの平凡な少女で、フウカは金髪ボブのゆるふわヘアーのミーハー女子だ。
「そうだね、一緒に行こうか」
フウカの誘いに了承するケンジ。
「よかったねアカリ!」
「ちょっと、変なこと言わないで……!」
アカリとフウカが何やら軽く揉めているが、いつものことなのでケンジは気にせず、「行くよ」と言って部室に向かう。
ケンジたち3人が部室につくと、他の部員は既に部室に到着していた。
「おや、やっと来たかい」
そう答えたのは部長の土野 小虎だ。
ココ先輩と慕われるしっかり者の部長で、綺麗系の整った顔立ちと黒髪ロング、そして赤縁眼鏡がトレードマークである。
「ちょっと遅かったね、ホームルームが長引いた?」
そう問うのはもう一人の天文部員でケンジの友達の水本 涼。
明るい茶髪の線の細い少年で、中性的な顔立ちで女子に間違えられることもある美少年である。
「そうかな?いつもこのくらいだと思うけど……」
と答えるケンジ。
「いっつも話長いんですよ、うちの担任!話の中身も髪の毛もスカスカのくせしてぇ!」
と不満を漏らすフウカにアカリは「ちょっと言い過ぎじゃない?」とたしなめる。
天文部の部員はこの5人で全員である。
「揃ったし、さっそく始めようか」
そういい、ココは鞄から写真を取り出して机に並べていく。
「おお、すごい!」
「きれー!」
各々様々な反応をしている写真はココが旅行先で撮影してきた星空写真で、今日は星空写真の鑑賞会をやる予定だったのだ。
「すごいですねココ先輩。久しぶりに天文部らしいことしてますね」
「まるで普段は駄弁ってばかりみたいに言ってくれるじゃないか」
ケンジの言葉にジト目で返すココ。
だが、確かにケンジの言う通り、普段の天文部は基本的に部室で駄弁るのが活動になっていた。
「まあまあ、二人ともそのくらいで」
とリョウが仲裁に入る。
「カネモト先輩っていっつも一言余計ですよね」
と、フウカが追撃し、アカリが少し困った表情を浮かべる。
いつもと変わらない天文部の日常がそこにあった。
——だが、その日常は唐突に崩れ去る。
「なんだろう、床が光ってない?」
最初に異変に気付いたのはアカリだった。
アカリの言葉で部員たちが床を見た時に、床に魔方陣が出現。
声を出す間もなく天文部の5人は魔法陣の光に飲み込まれた。
目を覆うほどの光が収束し、ケンジたち天文部が目を開けるとそこは見知らぬ場所であった。
剥き出しの木の柱に石造りの壁、そしてランタン。
まるで中世モデルのゲームの世界に入り込んだようだ。
「成功か?」
小太りの男が隣にいる細身の初老の男に声を掛ける。
「そのようですね」
ローブを羽織る細身の初老の男は答える。
「しかし、子供ではないか。本当に『異界からの来訪者』なんだろうな?」
「そうですね、魔能診断でも受けさせてみましょう」
小太りの男と細身の初老の男はケンジたちを見ながらも謎のやり取りを繰り広げる。
「あの、ここはどこですか? そして、あなたたちは誰ですか?」
天文部を代表してココが二人の男に問いかける。
「これはこれは、失礼しました。私はホロー・マギアン。こちらの方はアクト・アクトーク子爵でございます」
細身の初老の男・ホローは自己紹介し、アクトーク子爵はふん、と鼻を鳴らす。
「ここはアクトーク子爵の御屋敷で、あなたたちは選ばれし存在、我々は『異界からの来訪者』と呼んでいます」
ホローは説明を続ける。
冷静さを取り戻したケンジが辺りを見回すと、ホローとアクトーク子爵の他に剣や鎧で武装した屈強な男が何人も立っていた。
「あなたたち力ある者にお願いしたい事がございますが、まずは魔能診断を受けてもらいます」
ホローはそう言い残し、魔能診断に必要な道具を取りに去っていく。
アクトーク子爵はケンジたちを疑うような目で黙って見つめている。
(周囲の武装した兵士、とりあえずは従った方がいいな)
ここが小声で天文部員に呟く。
(そうですね、怪しい連中ですけど今は従うのが得策だと思います)
ココの言葉に同意するケンジ。
他の天文部メンバーも頷いて賛成する。
(俺たちはこれからどうなるんだ……)
ケンジは心の中で不安を呟く。
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