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69話:長旅②

「やあカウス。久しぶりだな」


ドロスは自分の後ろに数十の兵を従わせていた。その場は確かな緊張感が漂っていた。それに対し、カウスはたった一人でこの場にいる。


「ああドロス。総主になってから4,5回は会ったかな?」


「ああ、そうだと思うよ」


「そう。毎度面倒くさいと思わないかい?わざわざ総主はアストラム家に会いに行かないといけないなんて」


「そうか?私は別に構わないよ。ダースをここまで支えてこれたのはアストラム家のおかげでもあるからね」


「その通りなら、この立ち合いは皮肉なものだね」


その一言で後ろの兵士が臨戦状態になった音がした。微かな武器の音がカウスには確かに聞こえた。しかしドロスは手を少し上げて制止した。


「すまないね。私の兵士が」


「構わないよ。むしろ主人を守ろうとする行いは褒められるべきだ」


「そう言ってくれると助かるよ。……それで――」


ダースは少し後ろに目を遣る。そこにはメリーディが居た。鎖で囚われている。


「交渉と行こうか」


ダースはカウスの星眼を覗くように見る。だがカウスの視線は常にメリーディに注がれていた。


「カウス。気持ちは分かるが、先にこっちの話を聞いてくれないか」


「……そうだった。けど、約束通り野党はやめてきた。まさか他に要求があるとは言わないよな」


「まさか。確かに”一回目”の約束通りメリーディは返そう」


ドロスは兵士に指示を出してメリーディを糾っている鎖を外す。そして兵士に丁重にメリーディをカウスの方へ持っていくように指示した。


「くれ」


「持つのかい?」


「ああ」


「分かった」


メリーディは気を失っているようだ。そのままカウスの方にもたれ掛かる。カウスは何とか無理にならないような姿勢で抱き寄せる。


「それで?一回目って言うのは何なんだい?」


「だから交渉だ。別に、聞いたら強制参加なんて言う条件もない」


「つまり一旦聞けと?」


「ああ。そういうことさ」


「では、もし僕がそれを受けたとして、何の利益が?」


「アストラム家に政治に介入する権利を与えよう」


「!?……正気か?」


今まで動揺したことの無いようなカウスが初めて動揺した。それぐらいこの言葉はインパクトがあった。少なくとも彼にとっては。


「ああ。つまり君たちがしているような工作はしなくて済む。勿論それ以上の物も与えよう。……どうだ?」


「……聞かせろ」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「ここは……谷?」


「谷というか、正確に言えば峡谷ですね」


今俺たちが進んでいるのは峡谷の谷底だった。狭さを感じざるを得ないが、それでもある程度横に余白はある。気を付けるべきなのは上から来る落石とかか。


「何が違うんだ?」


「違うと言うか、もっと詳しく言ったら、っていう事ですね」


「なるほどね」


「ア、アフト……もう少し待って」


シャルロットは昨日寝たおかげか知らないが復活した。が、持ち前の運動神経の無さというか、日ごろの運動不足のせいか知らないが、ずっとゼーハー言ってる。


「シャルロット。大丈夫か?」


「ちょっと……待って」


だめだ。返答もできないぐらい疲れてる。歩幅を合わせるべきか。というかそもそも恐ろしいぐらい遠いのに、何故こんなにも急ぐべきなのか。まあ早い方がいいのは確かなんだが。……さてはあの双子、互いに相性が良くて自分たち以外と組むのは苦手か?後で聞いてみるか。


「あ、ありがとう……」


「シャルロット。無理はしなくていいぞ。自分のペースに合わせればいい。俺たちもシャルロットに着いていくから」


「そう言ってくれると助かるわ」


本当にきつそうなんだよな。コルたちに言った方がいいよな、これ。


「シャルロット。ちょっと待っててくれ。コルたちにもう少しペースを落とすよう言ってくる」


「うん。ありが――」


その時に、シャルロットの上から石が落ちてきているのを見た。


「シャルロット!」


「?」


だが肝心のシャルロットは気づいていない。仕方なしにシャルロットに向かって突進する。するとその後にすぐ石が落ちてきた。後ろを見る暇はなかったが音は結構大きかったと思うから、もしかしたら死んでいたんじゃないかと思うとぞっとする。


「ア、アフト……///」


「ん?……あ///」


今の体勢は控えめに言っても不味かった。俺がシャルロットを襲っているような姿勢なのだ。顔がすごく近いし、シャルロットの生暖かい吐息が頬に響く。シャルロットの顔には俺のせいで影があるが、そんなの関係ないとでも言うように、真っ赤な頬が見える。


「シャルロット――」


「ムッツリ様~。ムッツリスケベ様はどこにいますか~」


「っ!?」


やばい。急いで後ろを向く。するとコルと目が合う。さてはこいつ、あえてコーパスみたいな口調にしたな。コーパスならまだ何とかなったかもしれないのに。


「……」


その目が痛い。痛すぎる。しかもこの後にどんな会話が続くのか分かる。まだ「最悪」とか絶望感満載に言った方が助かったのに。このあとネチネチ言ってくる方が厄介なんだよな。助けてくれシャルロット。


「あの……」


即座に土下座の姿勢をとる。


「どうもすいませんでした」


「なにやってるのアフト!?」


後ろからシャルロットの声が聞こえた。谷底なこともあってよく耳に響いた。……勿論心にも。


因みにこの後コルとコーパスを説得して、少しペースは落ちた。

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