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68話:長旅①

「ここどこ?」


「山奥ですよ。アフト様は足に気を付けてください。シャルロット様を背負っているのですから」


一面緑。あと茶色い幹があるくらい。歩いていたらいつの間にか山の中にいたし、シャルロットを背負っていた。俺たちの服装は長袖に長ズボンと、山の環境に適したものとなっている。そのせいで恐ろしく熱い。しかもシャルロットを背負ってるから尚更。


「相変わらず体力があるんだな」


「まあ、そういう風に訓練してきましたから」


「そうか……なあ、休憩しないのか?」


「したいですか?」


「いや、俺じゃなくてシャルロットだ」


後ろから一定のテンポで呼吸する音が聞こえる。熱っぽい息が首に当たる。もしかしたら寝てるのかもしれない。それとも風邪か。前者はともかく、後者はやばいな。


「てか、あっつ……」


無意識に着ている服の首回りをパタパタとやってしまう。片手でしかできないのが難点だ。勿論これが一時の快楽なのは分かっている。むしろ汗すら搔くだろう。


「きちんと水は飲んでくださいよ。倒れられたりしたら困りますから」


「ああ、分かってる。けどシャルロットはどうするんだ?」


「口移しならどうでしょう。前似たようなことしてたでしょう?」


「見てたのかよ」


なんで見てたんだ。……やばい、反論する気も失せてきた。ていうかシャルロットが熱すぎる。むしろ不味いんじゃないだろうか。


「なあ、やっぱり休まないか?」


「きついですか」


「ああ、きついけど、そっちよりもシャルロットが心配。多分限界だと思う」


コルは悩む様子を見せる。多分これからのことを考えているのだろう。


「コル。確かに早く着くのは大事だ。けどそれは二番目でいい。一番目は俺たちのことだろ?」


「……そうですね。一度シャルロット様に水を飲ませてください。私はコーパスを呼んできます」


「分かった」


適当な場所を作るために、剣でそこらへんにある木をなぎ倒す。地面にはシートを。シャルロットをそこに寝かせ、額に手を当てる。


「熱いし、汗も酷いが……多分気温のせいだろう。仮に熱なら夜に分かるはずだ」


水はこのバックの中に……あ、今コルが俺の分まで持ってるんだった。水筒はあるけど、間接キスになるか……悩んでる場合じゃないか。


「シャルロット。口開けれる?」


「あ……」


飲ませろという事だろうか。仕方ない。口を少し手で押さえて、そこに水を流す。喉の動きから嚥下は出来ているようだ。良かった。


「寝る?」


「ううん。もう少し起きてる。今寝ると大変なことになりそうだし」


理性はあるが、それでもその場しのぎな感じがするな。唇の乾燥、反応が少しだが弱い……水はまだ備蓄があるし、問題はない。全部飲ませるか。


「シャルロット。もう一回口開けて」


「うん」


全部の水を飲ませる。途中から嚥下が間に合ってなかったような気がしたが、命の方が大事だ。無理やりでも飲ませよう。


少しこぼれてしまったが、飲ませることには成功した。少し木陰の近くで休ませておこう。


「すいません、遅れました。シャルロット様は大丈夫でしょうか」


コルが帰ってきた。それとコーパスも。どうやらこの双子は、コルが地図で安全なルートを決め、それにそってコーパスが安全な道かを自分の足で確かめてるらしい。コーパスも戻ってきたが、服装の汚れ具合も俺たちとは比べ物にならないし、服に染み付いている真新しい血も、魔獣でも殺したんだろう。全くあの口調からは想像がつかない。もちろん良い意味で。


「限界かも。今って何時?」


コルが腕に着けている時計で確認する。


「昼の3時です……コーパス。今ってどこ?」


コーパスがコルに近づいて指を指す。


「う~ん?ここだと思うよ」


二人でしばらく地図を確認していた。他方は地図を指で指し、他方は身振り手振りで表していた。なんとも微笑ましい光景だ……シャルロットが無事ならば。けど、二人以外の専門家もいないので、睨むだけにする。


会話が終わったのか、コルがこっちに話しかけてきた。コーパスはもう移動している。


「この近くに川があります。そんなに遠くはありません。そこまで行ったら就寝を兼ねて休憩しましょうか」


「分かった。シャルロットはこのまま俺が背負っていく」


「ありがとうございます。荷物はお任せください……水は大丈夫ですか?」


「貰っていいか?」


「どうぞ」


コルから水を貰う。まあ俺が飲むというか、シャルロットが飲むんだが。


そのまま俺たちは移動し続けた。特に問題は無かった……というより、コーパスがすでに切り拓いていた。コーパスは一人のほうが何倍も行動しやすいんだろうか。二人とも頼り甲斐があるから、依存は避けないと。それと感謝もしないとな。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「着きましたよ」


「ほんとか。良かった」


綺麗な水が流れている。時折魚の姿も見えるのから透明度も分かるだろう。ただ飲むためには煮沸しないとな。


時間はすでに夕暮れに差し掛かっていた。多分5時ぐらいだと思う。時間的にも休憩に丁度いいだろう。シートを用意して、シャルロットを寝かせる。少しだけ目が開いているから、起きてはいたんだろう。寝られた方が不味いからよかった。


「コル。シャルロットは寝かせていいのか?」


「だめです。シャルロット様が辛いのは分かりますが、きちんと無理をしてでも食べていただかないと」


「そう言うと思った。俺はどうすればいい?」


「シャルロット様の汗を拭かないといけませんね」


「俺がやる」


「……え?」


コルが初めて戸惑った気がする。そんな変なことを言っただろうか?


「……何故?」


「シャルロットには助けられた。少しでも恩返しをと思ってな」


そう言うとコルは少し顎に手を当て考え始めた。何をしてるんだろうか。


「……それでは、アフト様がシャルロット様の服を脱がせ、汗を拭くという事ですか?」


「……あ」


急に恥ずかしくなった。そうか、服を脱がさないといけないのか。完全に失念していた。


「……ムッツリ」


「……」


その一言が俺の心を抉ったのは言うまでもないだろう。しばらく放心状態になった。


「あれ~?アフト様、どうしたんですか?」


「コーパス。これからはムッツリと呼んだ方がいい」


「え?」

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