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6話:世界の常識・国と星術

「さあ、今日は星術と国、両方について話すよ」


「はい!」


やっとだよ。やっと。ここまで焦らされる理由はあったのだろうか。


「国と星術は密接な関係がある。だから、1つの国を説明すると同時にその国の星術も説明するからね」


「は~い」


「まず”アルケナ”。この国は金属で有名だ。この世界の半分はアルケナが輸出しているだろう。銅、鉄、金などの日常にありふれている金属だけでなく、エメラルド、ルビー、ダイヤモンドなどの宝石類、ミスリルやアダマンタイトなど星術と親和性が高いものまで。地形的にはそれ故山が多くて、暮らしにはあんまり向いてないけど。星術は”ハマル”。金属を操る能力。シンプルだけどその汎用性は目を見張るものがある」


「それって金とか無限に増やせるってことですか?あと星術の親和性って何ですか?」


「いや、増やせるは増やせるけど、星術で作られた金属は一切加工はできない。だから見かけだけ。けど、現実に元からある金属は星術で加工したり、普通に冶金とかもできる。それに距離が離れれば離れるほどマナの消費も激しいしね。星術で金属を作ってそれを売るのは非現実的かな。すぐ分かるし。星術の親和性っていうのは、金属によって自分の星術の効果をのせれるものがあるんだ。その分値が張るけどね」


「へぇ~」


「次に”バステフ”。バステフの地形はまあ、特にこれといったものはない。産業もね。器用になんでもやってるんじゃないかな?星術は”アルデバラン”。マナを介して身体能力を極限まで引き上げることができる。それだけじゃなく、体内の傷、病気の治りもかなり早い。まあ、マナを使えば身体強化は誰でもできるんだけど、全然等価交換じゃないからね。マナもすごい消費するし」


「そういえばマナってそうやって増えるんですか?あと身体能力ってどれぐらいのマナがあればできるんですか?」


「マナの大きさは二つの要素で決まる。1、密度。密度はできるだけ少ないマナで、できるだけ星術を使えるか。伸ばすにはマナを制限して星術をできるだけ使う。これを繰り返せば密度は伸びる。2、量。量はそのままだね、量は長き生きれば生きるほど増える。マナの大きさは密度×量で決まるんだ。マナの大きさ関係なく身体強化はできるけど、すごい効率が悪いんだよね。金を投げてパンを得るみたいなもの、ってよく例えられるけど。まあ、無駄ではないから人次第なんだろうけど」


「へぇ~」


「因みに私はアルデバランだよ」


「え!驚きなんですけど。なんかもっとこう……なんか、もっと特殊なやつだと思ってました」


「ああ~。なんかよく言われるんだよね、それ。そんな見た目してる?私」


「なんか長身で痩せてる感じがするんですよ。見たことないから分かんないですけど」


「そう?筋肉見てみる?」


そして俺はジークさんの腕を見た。


「うわ///……。おっきい///……」


「ちょっと待って。なんか言い方変じゃない?」


「気のせいじゃないですか?」


「気のせい?ならいいけど……ゴホン。次は”ダース”。ダースは森が多くみられるね。珍しい食べ物や動物で有名だね。地形もそこまで複雑じゃないしね。景色とかも綺麗って言われてる。行ったことないけど。星術は”アウストラリス”。これはマナそのものを使って攻撃するみたいな感じ。自分のマナを丸くして攻撃したり、マナを広げて相手の攻撃や星術を防ぐみたいな使い方ができる。複雑な形になればなるほど、マナの消費は激しいらしい」


「へえー。自然豊かなんですね」


「次は”エレーラ”。アルケナと隣だから若干起伏がある。どんな国より医学、科学が進歩していて、病気をすぐに治せる”ポーション”はアルケナの発明だね。星術は”アンタレス”。毒や薬、総じて目に見えないものを扱える。ほかの星術と比べれば、遠距離が得意なのは珍しいね」


遠距離ってあんまないんだろうか。あと毒と薬ってあんまり想像つかないんだけど。


「次は”フーラル”。この世界で最も自然豊かな国。ここは珍しく人じゃなくてエルフがいる。ただ、排他的過ぎて地理的特徴が全く分からない。星術は”デネブ”。自然や天候を操る」


「エルフって何ですか?」


「この世界には大まかに4つの種族がいる。1、人族。私たちだね。2、亜人族。動物の特徴を有している。尻尾や耳があることが多い。街に出れば結構見かけるかもね。3、エルフ。長い耳や長身が特徴。力仕事は苦手だけど、その代わり星術を扱う力は一流だと言われてる。他種族を嫌っていてね。あまり交流がないんだ。最後に魔人。魔人はリーゼンにいて、唯一星術が使えない。素の身体能力は高いらしいけど。魔人はめったに見かけない。というかここ最近聞いたこともない。記録に残ってるだけ。ただ、古代文明時代のことや、星術が使えないことも相まってか、なにかと標的にされることが多い。別に魔人は悪くないんだけどね。やっと最近改善されてきたかなって感じ。……皮肉にも魔人がこのあたりにいないことは彼らにとって幸せなんだけどね。」


確かに魔人は聞いた話だと差別されるべきではない。一体昔に何があったんだろうか?


「ま、アフトも外に出ればいろいろな人と出会うと思うけど、みんなと仲良くしてね」


「はい!」


「よろしい。次は”ガラルド”。水の国とも揶揄されることがあるくらい、水に関する技術は最強。造船技術を主に、貿易などにも手を出してる。あと海の景色がめっちゃ綺麗だった。魚もおいしかった。星術は”サダルスード”。水を操る。シンプルだけど普通に便利そうだったね」


「行ったことあるんですか?」


「うん。一回ね。遠かったけど、いい場所だったよ」


「そうですか。いつか行ってみたいです」


「カーラ様とかと行ってみたら?結構二人相性よさそうだけど」


「あはは。冗談厳しいですよ」


「あら、そう。結構合うと思ったんだけど。まあいいや。次は”ハミルト”。地形がかなり複雑でね。崖とか谷があるらしい。星術は”アルフェルグ”。動物や物などに変身できて、その能力を使える。ダース、フーラル、ハミルトは自然が豊かな国として有名だね」


アルフェルグ……名前かっこいいな。


「次はイゼルー。人口が一番多い。あと、双子しか生まれない」


「双子しか生まれないんですか!?それって生活様式とか結構変わったりしません?」


「そうなんだよね。何回か行ったことあるけど、歩くたびに見たことある人がいるから結構面白いんだよね。あ、そうそう。人口が多いから、商業がかなり盛んだよ」


「まあ、そうですよね」


「星術は”ボルックス”。双子の距離が近ければ近いほどマナと身体能力が上がる。あと、二人同時に殺さないと死なない。あ、老いはあるよ。双子の王以外はね」


「双子の王ってあれですか。リーゼンの統治をしてるんですよね」


「そう。神器”絶視の鏡(ぜっしのかがみ)”を持ってて、”覚星(かくせい)”で不老だから600年生きてる。到底勝てないね」


「ちょ、ちょっと待ってください。神器って何ですか?あと覚星って?」


「神器って600年前になかったっけ?神話時代からある名のある武器さ。3つあるらしいんだけど、絶視の鏡は双子の王が、”空帝の外套(くうていのがいとう)”はフーラルにあって、”輪廻の剣(りんねのつるぎ)”は見つかってすらいない。神器は使用者を選ぶっていう最大の特徴がある」


「名前だけ聞くとすごい仰々しいんですけど」


「だろうね。でも、仰々しいぐらいでいいと思う。絶視の鏡は視界内の攻撃をすべて防ぎ、空帝の外套は空を飛べ、輪廻の剣は……なんだっけ?」


「覚えてないんですか。覚醒は?」


「覚醒は星術の延長線上にあって、星術が人の個性に反応して起こる現象のこと。サダルスードが氷を使えるようになったり、アルフェルグが現象まで変身できたりね。まあ、2人に1人はできるから、そこまで珍しいものでもないんだけどね」


「へぇ~」


「実は私も覚星してて、めっちゃケガとか治るの早いんだけどね」


「え。すごいですね。それ」


「でしょ。……話を戻すね。次は”ゼスト”。超が付くほどの法治国家。あらゆるものが綺麗に法律で規制される。星術は”エスカマリ”。自分と相手の絶対値の差を自分にのっけて、身体能力、マナを増やすか、相手にのっけて、身体能力、マナを減らすか。まさに天秤そのものだね」


「法治国家ですか」


「うん。めっちゃ治安はいいんだけど、自由があんまりないね」


「私はあんまり好きじゃないかもしれないです」


「だろうね。私もだよ。次に”クアラル”。私たちが住んでる国。芸術の国、美の国とも言われる。芸術作品が主な輸出品だね。星術は”スピカ”。相手を魅惑することができる。単に魅惑といっても、言うことを聞かせたりするだけじゃなく、腕や目、足みたいな体の一部を制御することもできる」


「カーラ様もスピカでしたね」


「うん。まあ、よく似合ってるんじゃないかな?」


「ええ。私もそう思います」


「最後に”ユーシャル”。動物が人と同じぐらいいる。ちなみに亜人が一番多い。星術は”レグルス”。動物の力を借りたり、動物の力を最大限引き出したりできる。無条件ではなく、きちんと友情を築かないとだめらしいけどね。あと、アルケナ、エレーラ、ユーシャルは合わせて”トリニティ”と呼ばれる。特に仲がいいからね」


「リーゼンは紹介しないんですか?せめて地形とか特徴は?」


「う~ん。昨日も言ったけど、ほんとに分からないんだよね。魔人っていう存在もほんとに最近分かったことだし」


「そうですか……ちょっと残念です」


「さて、星術と国はこれですべてだね。あとは”魔獣”と”星獣”ぐらいかな?」


「なんですか?それ」


「魔獣は普通の動物みたいに中立的じゃなくて、常に人や動物に攻撃的な動物さ。普通の動物が変異したものもあれば、魔獣の種類しかないものもある。星獣は各々の国にしか現れない特別な魔獣さ。星獣は私たちの星術に近しいものを使う。時々ここあたりに出て困ってるんだよねぇ。ここあたりといっても開拓地の最前線だけど」


「ふむふむ」


「さて、大体これで話すことは終わりました。あとはその都度話していくとしよう。明日から現代語の授業だ」


「うわ。苦手な予感しかしないです」


「まあまあ、すぐできるようになるよ。……そういえばアフトって学校って知ってたんだっけ?」


「ええ、なんとなくは」


「そう、じゃあいい、学校の分からないことは学校で学べばいい。それも勉強だろう。さあ、今日はこれでおしまい。またね」


「はーい!」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「あ、思いだした。輪廻の剣はどんな武器にでもなれる……って、アフトいないじゃん。まあ、言わなくてもいっか」

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