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43話:初めてのお使い(護衛)

アフトはあの後すぐに教室に戻り、シャルロットの隣に座った。


「・・・さっきまで何の話してたっけ?」


「・・・え?」


シャルロットの疑問には二つの意味が込められていた。一つ目は文字通り話の内容をアフトが忘れていること。二つ目は何事もなくアフトがシャルロットに話しかけてきたことである。


「ん?どうした?」


「・・・アフト。あなた・・・。」


シャルロットはあまりの驚きに言葉も出ないようだった。アフトはそれに気づくと微笑んで、


「大丈夫だよ。今の俺が見てもシャルロットが優しい人間なのは分かる。シャルロットが優しくて、いい人な限り、俺はシャルロットのそばにいるよ。」


「・・・ホントに?」


「ああ。約束するよ。」


アフトは自身の温かい手でシャルロットの冷たく、白い手を握った。


「・・・。」


シャルロットは何も言わなかった。いや、きっと言えなかったんだろう。その少し涙の潤んだ目を、アフトはしっかりと自身の目で見ていたのだ。アフトはシャルロットのその手が、強く自分の手を握るのを暫く優しく眺めていた。


{・・・なんか人が口説くのを見るのは何とも言えない気持ちになるな。}


{口説いてるつもりはないんだがな、ユピテル。}


{う~ん。相手が孤立してなければそう言えたんだけどさ。シャルロットは残念ながらいじめにあってるからね。・・・依存されないように気を付けるんだよ。それにアフトはクアラルに思い人を残してるんだから。アフトの立ち回り次第では大変なことになるからね。}


{・・・それもそうだな。・・・もし最悪の場合は俺が何とかするよ。}


{当たり前だ!それをしない選択肢なんてないぞ!}


{分かった、分かったから。そんなに怒るなよ。}


アフトは珍しくユピテルの起こる様子を見て戸惑った。


「・・・!ごめんなさい。握りすぎたわね。」


シャルロットは慌てて手を離す。しかし少し名残惜しそうだ。


「・・・もう少し握る?」


「!え、え、ええ!?・・・えっと~。」


アフトはシャルロットの赤面しながらもわたわたする様子を優しい目で見ていた。


「・・・じゃ、じゃあ、もう一回。」


シャルロットはゆっくりとアフトの手に近づける。その様子が少しもどかしかったアフトは、心に邪な考えが走り、


「こういうのはどう?」


アフトはシャルロットの手を捕食した。要するに恋人つなぎをしたのである。


「・・・へ?・・・~~~~~っ!///」


{あ、案外初心なんだな。}


{・・・はぁ~~~。もういいや。}


ユピテルは諦めた。そしてシャルロットの顔は発熱した。その後アフトはどうやらシャルロットのお世話に時間がかかったらしい。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

時は夕焼けと夜の中間 つまり学校が終わったころ アフトはシャルロットのそばに・・・居なかった。アフトは、護衛二人をつけて帰るシャルロットを監視していた。


{こんな風にストーカーみたいになるなんてね。犯罪者じゃん、アフト。}


{気にしてるから言わないでくれ。まさか校長の護衛の話が独断で、しかも総主の連絡も明日に来るとかふざけてるだろ。}


{まあそういうこともあるよね。・・・でもアフトは星術が使えないとはいえ、あの二人の護衛ぐらいならすぐに殺せるだろう?}


{まあ・・・な。}


{なら護衛になるのは確実なんだから、今のうちに帰る道とかを覚えておくべきだ。周りの風景も。実際アフトがシャルロットの家のことについて聞いたのはそのためなんでしょ?}


{・・・ばれたか。}


{ほかにないしね。それに聞くにしては時期的に早すぎるし。もう少し交渉はうまくならないとね。さっきのはたまたま運がよかっただけだよ。}


{分かった。}


{ほら。シャルロットが動き始めたぞ。ばれないように、けど見逃さないように見るんだ。ここあたりは森が多いから、星眼をつかってもいいかも。}


{なんでだ?}


{星眼はマナが見えるんだ。隠れててもマナを完全に隠せる人間はいない。しかも星眼は魔眼よりも精度がいいから、闇夜でもマナは分かるんだ。}


{へ~。星眼って便利だな。}


アフトは眼帯を外し、星眼を使用する。すると森の中に数人の盗賊のようなものが視界で、さらに数人が星眼で見える。


{多いな。・・・なんでこの数に対して二人しか用意してないんだ?}


{資金不足か野党からの嫌がらせで雇えない、もしくはその護衛二人が精鋭。この二択だね。}


{前者だろうな。護衛も特別マナが多いとは思えないし、かといって亜人にも見えない。ましてやエルフなんて。}


そんなことを考えてると盗賊たちが動き出した。


{アフト。動けるよね?}


{もちろん。}


盗賊の動きに気づいた護衛は同時に戦いだす。練度では護衛が勝るようだが、それでも10人程度の盗賊をシャルロットを守りながら倒せるほど強くはないらしい。護衛は二人とも倒れ、五人の盗賊が残った。シャルロットは尻もちをついて動けないようだ。震えて声も出せないらしい。


{行くか。}


{ああ。それがいい。}


盗賊がシャルロットの手を無理やり引こうとすると、その盗賊の腕が吹っ飛んだ。それを見た仲間の盗賊が叫ぶ。


「敵だ!シャルロットを先に持ち出せ!それが依頼だ!あとは死んでもいい!」


{依頼・・・ねぇ。}


{前者は前者でも野党の方だったね。・・・アフト、他の奴もちゃっちゃとやったら?}


{言われなくても。}


その叫んだ者の声を槍で突き、さらに脳天にも刺す。するとアフトに気づいた三人のうち一人がアフトに向けて銃を撃つ。・・・が、すでに銃は見たことがあるうえ、”怯懦”のような威力も速さもないので、すぐに防ぐことができた。なによりアーティファクトだったので、マナの流れも見えるアフトにとってそれはもはや意味をなしてなかった。


「!?ありえねぇだろ!?銃だぞ!」


半狂乱になりながらもアフトに銃を撃つ。


「・・・怒りに身を任せるのは敵の目の前で目を瞑るようなものだぞ。」


アフトはそうつぶやき、さらに槍で肺と脳を突き刺す。肺が傷つき吐血した血がアフトの服に染み付く。しかし残りの盗賊の二人はすでにアフトに肉薄していた。


「今だ!やれ!」


背後をとった盗賊は笑みを浮かべてアフトを殺しにかかったが、それはアフトが槍を持っているという考えのもとであった。しかしアフトが持っているのは刀。それに気づく間もなく盗賊二人は体を上半身と下半身に分けられ、絶命した。


「・・・腕を切った奴はどこに行った?」


アフトがそういうと、シャルロットの方から声が聞こえた。


「おい!動くな!こいつを殺すぞ!」


腕を斬られた盗賊は痛みにこらえながらも、シャルロットの首に刃物を当て、アフトを脅迫した。


「・・・はぁ・・・。」


アフトは星眼を利用し、相手を覇気で威圧する。


「ひっ・・・。」


そのアフトに対する一瞬の隙を見逃さず、アフトは刀でもう一方の腕を切った。すぐと盗賊は倒れ、アフトは倒れた盗賊の二つの脚両方とも切り、盗賊は四肢が完全になくなってしまった。アフトは盗賊の頭の近くに剣を立て、脅す。


「誰の使いだ。答えろ。さもなければ殺す。」


盗賊は答える様子はない。それが恐怖か、依頼主を裏切らないという忠義かは分からないが、アフトはそれを、答える気がない、と捉え、肺の方に剣を突き刺そうとする姿勢を維持する。


「5秒以内に言え。」


アフトが5、4、3、・・・とカウントダウンしていくと、盗賊は口を開きこう言った。


「だれが言うかよ。くそ野郎。」


それをアフトが聞いた瞬間、アフトは二つの肺、心臓に剣を突き刺した。盗賊が悲鳴を叫ぶが、十数秒の間、アフトは盗賊を見つめ、その時間が経った後、さらに脳に剣を突き刺した。


「・・・終わったか。」


{アフト。今回はよかったけど、次からは目標を見失っちゃだめだよ。本来は殺すよりシャルロットの護衛が優先なんだから。}


{ああ。反省すべきだな。}


アフトがユピテルと会話し終わった後、シャルロットの方に顔を向けた。アフトが自分に近づいてることを知ったシャルロットは、ひっ、と声にもならない声を上げた。


「・・・すまん。怖がらせる気は無かったんだ。」


シャルロットはその声を聴くと、声は震えながらも、こう言った。


「・・・も、もしかして。アフト・・・なの?」


シャルロットが俯いていた自分の顔を上げると、そこにはシャルロットの友達がいた。


「ああ。そうだ。アフトだ。」


「な、なんでここに?」


アフトはそれを聞くと、頬を掻いて照れくさそうに言った。


「その・・・。実はな、俺シャルロットの護衛として雇われてたんだ。でも、その知らせがシャルロットの方に行くのが明日になるらしくてさ。だから堂々と、護衛なので参加させてください、って言えなくて。・・・その、怖かったよな。」


シャルロットはその声を聴くと、いままでこらえていた涙があふれてきたらしく、


「・・・そう!そうなの!怖かった!ねぇアフト!こっちにもっと寄ってよ!」


と、涙声で言った。アフトも泣く子には勝てないので、しかたなく近づくと、シャルロットはアフトを抱き寄せた。


「ちょっ!?シャルロット!?」


「・・・。」


シャルロットは何も言わずにただアフトに抱き着いていた。だからアフトは、シャルロットが落ち着くまで、しばらく護衛としてでは無く、友達としてシャルロットに接した。




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