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34話:オオカミの亜人

「ここあたりで待っとけ、って言われけど。誰が来るんだろ?」


「さぁ?とりあえずしばらく待ちましょう。」


アフトたち三人はアモルの言ったように広場の近くで待っていた。


「・・・屋台に行っていい?」


「・・・アフト。お前さすがにそれは失礼だろ?」


「だよな・・・。はぁ、待っとくか。」


数分後


「おい!お前たちだよな!アモル様が言ってた人って!」


アフトは大きな声がした方を見る。その声の主は頭に灰色の耳があった。身長は高く、体格もいい。また、頭にある灰色の大きな耳と、走ってくるときに足の間から見える灰色の尻尾が、彼女を亜人だと示していた。


「えっと・・・。」


「”ルプ”だ!これからよろしく頼む!」


アフトが三人の中で誰よりも距離がルプに近かったので、無理やり握手をルプにさせられることになってしまった。・・・アフトはまんざらではなさそうだ。


「ルプか。自己紹介はした方がいいか?」


「あ~。・・・近くに屋台があるから、食べるついでに自己紹介していこうぜ!堅苦しいのは嫌だからな!どうだ?」


その言葉にアフトが目を輝かせる。


「!行きます!行きましょう!」


「残りの二人は、どうだ?」


「・・・どうせアフトに今から何言っても意味ないだろうな。」


「ええ。間違いなく。」


「じゃあ決定だな!行くぞ!」


「はい!」


アフトとルプは元気に返事をしたが、カーラとオレアはため息をつくばかりだった

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「もぐもぐ・・・これ美味しいですね!」


「だろ!俺の周りの奴等はだれも食べないんだ。分かってくれる奴がいてよかったよ!」


「・・・カーラ、これどう思う?」


「う~ん。よく言えば前衛的、悪く言えばおいしくない。」


「だよな。あの二人の舌がおかしいだけだよな。」


「うん。・・・そうだと思いたいわね。」


現在アフトたちが食べているのはヴェネットでもいい意味でも悪い意味でも評判のある店であった。その店は噂では美食家たちがこぞって食べに来るらしい。・・・要するによほどの刺激を求める者か、よほどの貧乏舌の者以外食べに来ないのである。


「なあ、黒髪。お前名前なんて言うんだ?」


「アフトです!アフト・アネモス!これからよろしくお願いします。」


「・・・あ?お前、ひょっとして神獣殺しか?」


「・・・世間ではそう呼ばれてるみたいです。」


「見た目はこんなに弱そうなのにか?」


「ええ。残念ながら。でも、いずれ・・・いや、今からでも強くなりますよ。」


「へぇ~。・・・もしやれるなら、俺を超えてみるんだな。」


「はい!・・・そういえばルプさんって、こういう言い方するのもなんですが、何者なんですか?」


「俺?1級冒険者だ。」


「・・・えぇえええええ!?」


「うるさ。そんな驚くことかよ。」


「ええ!だって竜を殺せるんですよね!しかも一人で!」


「ま、まぁな。」


ルプが少し照れくさそうに言う。ちなみにちゃっかりカーラとオレアも聞いてたりする。


「てか、お前んとこの貴族もすごいだろ。」


「ヴァイツ様のことですか?ええ。あの人もすごいです!」


そうアフトが言うとルプはニヒッ、っと笑い、


「なら、どっちが強そうだ?」


「え。・・・そうですね。・・・分かんないです。なんせルプさんとは戦ったこともないので。」


「ちぇ。・・・ま、そうだよな。・・・おい!そこの二人も盗み聞きじゃなく、堂々と聞け!恥ずかしいぞ!」


「今の会話のどこに俺たちが入る隙間があったんだよ。・・・俺の名前はオレアだ。これからよろしく頼む。」


「オレアね。・・・そっちは?」


「カーラよ。カーラ・アネモス。よろしく頼むわ。」


「?両方ともアネモスなのか?・・・さては結婚とかしてるのか?」


「べべべべべ、別に、結婚なんてーー」


カーラが慌てすぎて何を言っているか分からないが、アフトはこんなことに気を取られる性格ではなく、


「いえ。ただ俺が事情があって養子になっただけです。」


この言葉にカーラは興ざめもいいところである。


「なんだ。つまんねえの。」


ルプはそういったが、どうも内心知っていたようだ。


「・・・なんなのよ。アフトの奴。」


カーラが小言を言う。


「まぁまぁ。アフトはそんな奴だから。」

・・・後でアフトになんかおごってもらおうか。そうしよう。こっちの気苦労も知らないで。


内心、オレアは大変なのであった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ちょ、ちょっと待ってください。」


「おい、お前ら。遅すぎるぞ。」


現在アフトたち三人はルプに頑張って追いついている最中であった。


「な、なんでそんな早いんですか。」


「・・・まぁ。亜人だからじゃないか?」


「亜人ってそんな特殊能力あるんですか?」


「俺はオオカミだからな。人よりも力や速さはあるはずだぞ。あと持久力も。」


「なるほどですね。」


「・・・残り二人もついて来たな。確かここが偵察する一つ目の場所だったはずだ。」


「・・・遠すぎて何も見えませんけど。」


「・・・オレア。お前の星術は確かサダルスードだったな?」


「ああ。そうだが。なんでだ?」


「水面を使って遠くを見ることはできるか?」


「・・・やったことないが、やってみる。」


「ああ。頼む。」


オレアは空中に水鏡を作り、それを調整してルプに見せる。


「どうだ?」


「・・・下手だな。」


「おい。これでも頑張ってるんだが。」


「俺の仲間は簡単にできていたんだがな。ならオレアはもっと器用に、繊細に星術を使えるようにしないとな。」


「・・・よくわかるな。」


「はっ。当たり前だろ。これでも一級だぞ。・・・ちょうどいい。俺がいいと言うまで水鏡を調整しろ。」


「嘘だろ。」


「いいからやれ。」


「はぁ・・・。」


オレアは水鏡を作る。が、オレアの表情を見たら分かるが、案外きついらしくオレアは汗をかいていた。


「オレア。」


「な、なんだよ。早くしてくれ。結構きついんだから。」


ルプはオレアの肩を握る。


「お、おい!急になんだ!」


「力を抜け。」


「え?」


「力を抜け。ゆっくりと息を吸え。そして吐け。」


「・・・分かった。」


そうするとオレアの水鏡の中の波紋が少し静かになる。


「水は感情だ。オレアの感情が変になれば水もそれを映す。オレアはマナが多いだろうから、いつも必要以上のマナを使って強引に治してきたんだろう。」


「・・・分かるのか?」


「ああ。まだ若いが、これでも経験は積んできた方だ。・・・そうだ。そうしたら、オレアが楽に感じる場所を探すんだ。」


オレアはルプの言うとおりにする。実際、オレアの表情を見れば楽になったのが分かる。


「水は必ず低いところに落ちる。案外サダルスードの使い手は負担をかけるよりも楽な方を使ったやつの方が強かった。」


「戦ったことがあるのか?」


「ああ。変にきつそうに戦うやつはすぐに足をすくわれ、飄々と戦ってるやつの方が何倍も手ごわかった。」


「そうか。・・・ここだ。ここが一番楽だ。」


「分かった。ならあとはオレア次第だ。その楽な姿勢を維持したまま、より遠くが見える場所を探せ。」


「分かった。」


数分経つと、オレアはルプを呼んだ。


「ここだ。」


「見せてみろ。・・・さっきの何倍もいいな。」


「ああ。しかもさっきより楽だ。・・・ありがとう。」


「ま、これも仕事だからな。・・・よし、次の場所に行くぞ。」


「ええ。また走るんですか?」


アフトが嫌そうに言う。


「当たり前だろ?体力をつけることは重要だからな。さ!行くぞ!付いて来い!」


「は~い。」


アフトたち三人は、またルプは走っていくところへ必死に食らいつくのであった。



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