32話:港までの道のり
「いやぁ。オレアが馬を使えるとか驚いたわ。」
現在、アフトたち三人はプロセラ家へ向かっていた。
「まぁ。ある程度はできるからな。・・・てか、行くの三人だけなのに、誰が運転する気だったんだよ。」
「まぁ・・・。そういうこともあるよね。」
「おい。話を逸らすな。」
オレアがアフトの方を向くと、オレアが馬の御し方を誤って少し馬車が揺れる。
「ちょっと!オレア!ちゃんと前向きなさいよ!」
「・・・すまん。」
「あはは。カーラに言われてる。」
「・・・アフト。お前覚えとけよ。」
「すまんすまん。・・・なぁ。これ道あってるの?」
「カーラ。この道で合ってるんだよな?」
「ええ。地図がこっちを示してるから。」
「だそうだ。」
「じゃあ大丈夫か。・・・てかさ。今俺たち革命派の領内を行ってるんだろ?これ見つかんないの?」
「まぁそこは・・・。オレアがなんとかしてくれるでしょ。」
「おいおい。アフトはともかく、カーラがそこまで言ったらもうどうすることもできないぞ。・・・できても森とか、目立たない場所を選ぶくらいだ。もし襲撃とか来たらなんとか対処するしかないな。」
「だよなぁ~。・・・カーラ。このままのペースで行ったらどのくらいでつきそう?」
「う~ん。分かんない。私あんまり地図得意じゃないかも。」
「貸してくれ。・・・まぁ今日を含めて二日か?最低でも三日までにはつきそうだな。」
「あら。オレアって意外と何でもできるのね。」
「いや。割と地図ぐらいは誰でも見れると思うんだが。・・・ちょっと道を変えるぞ。てか、地図は俺が持っちゃだめなのか?」
「全然いいんだけど、オレアの両手手綱で埋まってるわよ。そんな器用なことできるの?」
「・・・そういえばそうだったな。いいや、カーラがそのまま持っててくれ。さっきも言ったが、道を変えるから、ちょっと道が悪くなるぞ。気をつけろ。」
「「分かった。」」
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夜 三人は一緒に森の中で焚火を囲んでいた。
「結局何も起こらなかったな。」
「な。・・・どうする?さすがに全員が寝るのは危険だから交代で寝るか?」
「じゃあ私が先に起きてるから、そのあと誰がやるか決めて。」
「分かった。もし何かあったら遠慮なく起こしてくれよ。」
「分かってるわよ。それで?二人はどうするの?」
「じゃあ俺最後にやるわ。」
「分かった。じゃあアフトが最後で俺が真ん中。それで行こう。火はどうする?消すか?」
「カーラが好きなようにしていいよ。」
「じゃあそのままにしときましょう。もし起きなかったらその火になかに頭突っ込むから。」
「・・・アフト。カーラってこんな感じの時もあるのか?」
「時々あるんだよね。なんでだろ?」
「はい、二人とも。さっさと寝て。」
「は~い。」 「分かった。」
こうして、アフトとオレアは眠りにつき、カーラはメシエ様からもらった時計を見て、時間が来るまで警戒しておくことにした
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「・・・アフト。」
「・・・どうしたの、父さん。」
「いい加減外に出たらどうだ?」
「・・・だって、友達もみんな僕のこといじめるんだもん。」
「・・・確かにアフトは人と違うな。アフトはどんな人とも違う。」
「なんで、僕だけ違うんだろう。ねぇ。父さん。もし僕がみんなと一緒だったら、友達になれたのかな。」
「アフトには友達がいないのか?」
「・・・うん。」
「いや、それは違う。さっきも一人だけアフトのそばにいたじゃないか。」
「でも、守ってくれなかった。」
「・・・アフト。それは違う。彼は大人に助けを求めていたよ。アフトを助けてくれって。」
「違う!僕が言いたいのはーー」
アフトの頬を一人の大人の手が叩く。
「・・・な、なんで叩いたの?」
アフトの頬は赤く腫れ、今にも泣きだしそうであった。
「ならどう守ってほしかったんだ?彼がアフトの前で手を広げればよかったのか?それとも手を繋げばよかったのか?違うだろ。彼は彼なりに自分のできる最大限のことをやったんだ。だがアフトは彼に自己犠牲を求めたんだろ?そんな馬鹿なことをするやつがあるか!」
「・・・でも、誰かを守るのは大事なんでしょ?」
「当たり前だ!でも、自分を守ることの方が何倍も大事だ!守っても、自分がいなければ結局悲しませるだけじゃないか!よく聞け!確かに誰かを守ることは大事だ。誰かを信頼することも。でもな。自分を大切にできないやつが、信頼すらできないやつが誰かを守るわけないだろ!・・・彼はそのことをよく分かっていた。」
「・・・ごめんなさい。」
「謝るのは父さんじゃないな。彼のところに行って、謝ってくるんだ。」
「・・・分かった。」
「・・・アフト。」
「なに?父さん。」
「前に『自分の立場は誰かのおかげで成り立ってる』といったな。」
「・・・うん。」
「あれには続きがあってな。『しかし、自我は誰からも強制されず自分で見つけなければならない』ってな。」
「・・・へぇ。そんな続きがあるんだ。・・・なんで今?」
「なんでだろうな。ただ、言っておきたかったんだ。きっとこの言葉はアフトの助けになると思ってな。」
「そう。・・・僕行ってくるよ。」
「ああ。行ってこい。」
アフトは部屋を出ていく。しかし、アフトは静かにアフトの父と、父の近くにいた使用人の会話を聞いていた。
「・・・不躾ながら言わせてください。」
「なんだ。」
「アフト様は、あなた様の子供でございます。」
「そうだな。」
「・・・何故、本当のことをお伝えなさらないのですか。」
「・・・なんのことだ。」
「分かっていらっしゃるでしょう。アフト様の名前は======だと。」
「・・・分かっている。だがな、この咎は、業は私一人で償わねばならない。」
「・・・しかし、いったい何故そこまで。あれではアフト様が可哀そうでございます。」
「アフトには自由が似合う。・・・昔流行った病気のことを知っているか?」
「?何のことでしょうか。」
「作られたばかりのポーションは酷いものだった。治せるのは確かだが、半分の者は細胞が破壊されていった。何という名前か覚えているか?」
「ああ。あの病気のことでございますね。たしか・・・まさか。」
「アフトは魁になる。いずれその病気のように世界を変えていくだろう。そういう意味も込められている。そう読めるからな。・・・皮肉だが。」
「・・・私からはこれ以上は何も言いません。しかし忠告はしておきます。アフト様は今はああではありますが、いずれアフト様ご自身と、そして人と協力して成長しますよ。」
その使用人は去っていった。アフトは聞くのをやめ、急いで外へ出て行った。
「・・・そんなのは分かっている。なぜならアフトは俺の子供だからな。」
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「・・・=フト。アフト!」
「・・・ん?・・・ああ、オレアか。もう俺の番?」
「ああ。・・・しかし大丈夫か?」
「なんで?」
「だいぶうなされてたぞ。」
「大丈夫。・・・時々昔のことを夢で思い出すんだ。今日もそうだった。・・・ま、特に体調が悪いとかじゃないから。大丈夫だよ。」
「・・・分かった。ただ、何かあればすぐ言えよ。」
「ああ。ありがとう。」
「見張り、頼むぞ。」
「分かってる。」
オレアはそのまま眠りについた。まだ夜は明けていない。
あの言葉の続きは分かった。けど、こんどは俺の名前か。・・・だが、確かに紙にはキャンサーと書かれていたしな。仮に違う言葉ならほかの読み方をするはずだし。どうせなにか重要なことを忘れてるんだろう。いつものことだ。・・・今はこっちに集中しよう。きっといずれ分かることだ。
アフトは警戒をすることにした。




