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27話:リヴァイアサン戦①

「・・・ここは?」


「アフト!起きたか!・・・死んだかと思ったぞ。」


「オレアか。ここまで持って来てくれたのか?」


「ああ。感謝しろよ?」


「ああ。ありがとう。それで?ここは・・・ユーゲント家か?」


「ああ。そうだ。」


「どれくらい経った?」


「一日だ。」


これにはアフトも驚きを隠せない。


「・・・そうか。カーラは?」


「こっちにいるわよ。」


「うおっ・・・びっくりした。なんで二人とも真反対にいるんだよ。」


「さぁ・・・。アフト、体調は大丈夫?」


「・・・分かんない。ところどころ痛むけど、問題はない程度?」


「・・・凄いわね。・・・私、今からメシエ様を呼びに行くわ。二人はここにいて。」


「「分かった。」」


カーラは部屋を去っていく。


「・・・オレア。俺が眠ってる間どうなった?」


「ややこしいことになった。まず貴族が二派に分断した。今までの体制を維持しようとする"守護派”とクアラルという国を新しくしようとする”革命派”に分かれた。このことに関して王家は非常事態宣言をだした。あまり状況はよくない。実際、貴族も段々革命派に寝返ってる。幸いなことに上位の貴族は守護派が多いから兵の数を考えれば同じぐらいかも。」


「首都は?」


「包囲されてる。首都の周りの貴族がアネモス家を除いて首都を包囲してる。それに首都の中にはリヴァイアサンがいるから、変に攻勢を仕掛けれない。・・・正直リヴァイアサンがここに来てないのは首都の面積が莫大なのと、運のおかげとしか言いようがない。」


「・・・そうか。」


その時、アフトのいる部屋の扉が開く。


「・・・アフト。無事か?」


「ええ。なんとか。」


「そうか。ならよかった。」


「メシエ様。これからどうするんですか?」


「その前に一つ聞きたい。」


「何でしょうか?」


「リヴァイアサンの体がだんだんと大きくなっている。何故だ?」


その一言はアフトの部屋にいる者全てを絶望させた。


「・・・あのリヴァイアサンはまだ幼虫です。時間が経てば経つほど体、耐久、回復量は大きくなります。」


「・・・それは・・・。」


「ええ。ここで、最低でも首都内で殺さなければリヴァイアサンは文字通り手を付けられなくなります。」


「・・・だからアフトはあの時真っ先に殺そうとしてたのか。」


「うん。・・・けど。まだ時間はあるはず。・・・メシエ様。何か策はありますか?」


「一つだけ。非常に言いにくいものがある。」


メシエはアフトの神器を凝視する。


「・・・神器は確証が得られてないと思うのですが。」


「いや。アフト。お前リヴァイアサンの攻撃を受けるときに神器で受けただろう。その時の鱗を何枚かオレアが持ってきていた。つまり神器ではリヴァイアサンに攻撃できるということだ。」


「・・・ほかには何か策はあるのですか?」


「残念ながら。攻撃が可能なものに、もちろん芸術家にも攻撃をさせた。しかし鱗が削れるどころか、衝撃で狼狽える様子すら見せない。」


「・・・分かりました。つまりメシエ様は・・・。」


「ああ。アフト。頼みがある。その神器を以ってリヴァイアサンを殺せ。・・・やれるか?」


「・・・分かりました!」


その時のアフトは、少し笑いながら、少なくとも負の感情を見せず、そうはっきりと宣言した。


「・・・ははは!まったく元気のいいことだな。ついて来い。作戦会議だ。」


「はい!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

アフトはメシエの部屋に来た。そこにはカーラ、オレア、そして4人の芸術家、そしてーー


「・・・ヴァイツ様?なんでここに?」


「アフトか。呼ばれたんだよ。メシエ様に、増援としてな。」


「なるほど。ヴァイツ様なら心強いですね。」


「・・・残念ながらアフトとは行動できなさそうだがな。」


「え。何でですか?」


「メシエ様の言う通り、リヴァイアサンに攻撃を通せるのはアフトの神器だけだ。それだけなんだ。つまりリヴァイアサンと戦うならアフトを支援できる支援系の星術が必要なんだ。私は生憎攻撃系だからな。」


「ならヴァイツ様はどこに?」


「それも込みで話をしようか、アフト。」


「・・・おっと。すいません。メシエ様。」


「・・・それでは話をしようか。まずこれでは二つの班に分かれてもらう。1、アフトが主体な班。2、アフトがリヴァイアサンを倒す時間を稼ぐ班。1はアフトがリーダーで、2はヴァイツがリーダーだ。アフトには二人の芸術家を宛がう。ザニアと”ムジカ”。ムジカは初めてだったな。別名音楽家だ。」


ムジカ。白色の髪の毛と手にはタクトを持っている。ムジカの目は常に閉じていた。


「・・・ムジカさん。よろしくお願いします。」


「ええ。よろしくお願いします。」


しかし、ムジカは全く見当違いの方向へ挨拶する。


「・・・ええと?ムジカさん?こっちですよ?」


「ああ、すいません。目が見えないもので。・・・足音を立てていただいても?」


「分かりました。」


アフトは少し足踏みをする。


「ああ!こちらの方向ですね。ありがとうございます。」


そういうとムジカは一寸の狂いもなくしっかりとアフトの手を握った。


「うおぉ。すご。・・・大変じゃないですか?」


「あはは。よく言われます。しかし、僕はこれを後悔したことはありません。なぜなら音というものを認識できますからね。人によって、その経験によって色々な音が奏でられます。それを芸術と言わずして何と言いましょうか!・・・失礼。とにかくアフトさん。これからよろしくお願いしますよ。」


「ええ。こちらこそ。」


両者しっかりと手を握る。


「一班はアフト、ザニア、ムジカ、そしてカーラの四人。二班はそれ以外だ。二班は攻撃が特に厳しく、かつこの近くにある門からの侵入を防げ。アフトがリヴァイアサンを倒す時間を稼ぐ。なにか異議のあるやつはいるか?」


「二班はどれくらい時間を稼げますか?」


アフトが言う。


「ヴァイツ。どうだ?」


「ここから一日は持たせます。・・・敵が何の攻勢もしてこなければですが。」


「だそうだ。」


「分かりました。」


「ほかには?」


誰も何も言わない。


「・・・よし!作戦はただいまを以って始めとする!全員散会し、それぞれの持ち場へ行け!」


その威厳ある号令に、皆すぐに行動に移った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

一班


「うお・・・かなりでかくなってる。うねりもやばいな。」


「ええ。これまでに乱雑で芸のない音は初めて聞きました。」


「あはは・・・。そういえばザニアちゃんはどうするの?」


「なにも無策でここに来たわけではありません!これを見てください!」


「これは・・・羽?」


「はい!アフトに着けてほしいんです!」


「へぇ~・・・じゃあ遠慮なく。」


その羽はアフトの背中にしっかりとついた。


「・・・どう?似合う?」


「ええ!黒に染めた甲斐がありました!」


「そう・・・よかった。・・・カーラは?」


「え?アフトが倒れた時の救助よ。」


「え。戦わないの?」


「当たり前でしょ!触った瞬間死ぬわよ!・・・まぁ、本音はアフトには死んでほしくないから、心配で来ちゃった。」


「・・・ありがとう。」


アフトとカーラは両方とも何とも言えない空気になる。


「三人とも。もうリヴァイアサンが近いです。ザニア、カーラ、アフト、準備を。」


「「「はい!」」」


リヴァイアサンが四人の方へとその強大な口を向ける。その口の周りにはまだ建物の破片と思われるものが刺さっていた。しかし、とうの本人はそれを気にする気持ちなど微塵もないようだ。


「アフト。僕が指揮を執ります。僕の指揮に合わせて動いてください。そうすれば以前より動きやすくなるはずです。」


「分かりました!」


「カーラとザニアはアフトの支援を臨機応変に頼みます。」


「分かりました。」 「はい!」


リヴァイアサンは四人に向けて咆哮する。それと同時にムジカはタクトを構える。


「・・・con anima(生き生きと)。」


そうムジカが呟くと、ムジカの周りに五線譜が現れる。それとともに元気な音楽が流れ、音符が現れる。音符は全て色が暖色系であった。


「アフトさん!僕の音に合わせて動いてください!」


「分かりました!」


アフトは羽で飛ぼうとする。が、案外動くのが難しく、リヴァイアサンの突進を辛うじて避けれた。


「うぉ・・・これ案外使うの難しいな。・・・けど。次は行ける。」


リヴァイアサンはまた体をひっくり返しアフトの方へと向かう。アフトは剣を構える。


「・・・そうだ。そのまま・・・来た!」


アフトは羽を使ってリヴァイアサンの背中へと飛び移る。そしてそこに神器を刺す。たしかに鱗や皮膚は削れたが、それでも傷は浅く、治癒がもう始まってる。


だめだな。やはり星術を使わなければ。それに傷が浅い。・・・ただ、格段に動きやすい。というか身体能力が上がった気がする。多分ムジカさんのおかげだろうけど。


「攻撃のタイミングは次はこっちが合わせます!曲調を変えます!」


「分かりました!」


sciolto(自由に)!」


ムジカの周りに今度は色とりどりのすべての色が音符に混じる。しかしリヴァイアサンもバカではない。一目散に邪魔なムジカへと向かう。


「させません!いでよ!巨大な鏡!」


ザニアは巨大な鏡を出し、日の光を利用して強大な光をリヴァイアサンへと当てる。目をふさがれたリヴァイアサンは狼狽し狙いがそれる。


「今です!アフト!」


「任せろ!」


そのまま建物にぶつかり身動きが取れないリヴァイアサンをアフトはそのリヴァイアサンの体にそって尻尾まで大太刀で切っていく。ムジカとのシナジーでそのリヴァイアサンの固い皮膚を貫通する分のマナの消費が何倍も軽く済んだ。


「アフト!攻勢に出ます!fervente(熱狂的に)!」


「はい!」


その時だった。リヴァイアサンは始めの時とはくらべものにもならないけたたましい音を叫ぶ。誰もが耳を塞いだ。


「これは・・・音が・・・。」


カーラはつぶやく。


「きゃぁ~~!!!?」


ザニアはその小さな体躯では咆哮の音に耳を塞ぐどころか、吹き飛ばされるほかになかった。


ムジカの音はリヴァイアサンの強大な音でかき消される。これはムジカの星術の弱点だった。うざったらしい音を消したリヴァイアサンはもっとも警戒すべきアフトへと向かっていく。アフトはこれに気づき、リヴァイアサンの皮膚をはぎ取ろうとする。


「・・・くそ。やられた。マナが・・・。」


アフトはリヴァイアサンの皮膚を確かに切った。しかし、今ムジカの支援はなく、皮膚を貫通する分のマナを遠慮なく使ってしまったアフトは、もともとマナの量が少なかったのもあって、マナはもうなくなりかけていた。もちろん、翼はアフトのマナで動く。リヴァイアサンはまた振り返りアフトを追撃する。が、そこにアフトはいなかった。カーラがかろうじてアフトを建物の物陰へ連れて行っていた。しかし、どうあがこうとも戦況は絶望的だった。アフトはマナが無く、ムジカは今まで聴覚のみで暮らしていたので聴覚が異常を起こし動けず、ザニアは吹っ飛び、カーラは何もできない・・・

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