24話:王女
学校 朝 アフトが来てから教室は少し騒がしくなった。何人かもアフトを見ている。
「ん? お、アフトじゃん。なんで休んだん?」
「オレアか。いやぁ。いろいろあったんだよ。」
「さすがにもう休むとは思わなかったわ。ほら、プリント。前の授業のやつ。先生が俺に預けてさ。」
「おお、まじか。ありがと。・・・なんか見られてない?気のせい?」
「多分気のせいじゃないぞ。アフトが新星だって噂・・・というか事実が原因だな。アフトが俺と戦ってるときにある程度新星なのは疑われてたし。ミロディアがアフトが新星だって言ってたからな。ただ、おアフトが休んだおかげか結構落ち着いたぞ。どっかで聞かれるぐらいじゃないか?」
「ふ~ん。なるほどね。」
ヴァイツ様の言ったとおりになったな。
「・・・なぁ。王女ってどのクラスにいるか分かるか?」
「王女?随分急だな。・・・多分一組じゃないか?」
「まじ?ありがと。」
「なんか用があるのか?」
「ああ。そうだけど。なんで?」
「王女は入学した時からたくさんの人に囲まれてる。行けるのは行けるけど、人が多くて話しかけられるかは分からんな。」
「・・・多分何とかなるよ。」
「どこからその自信が出てくるんだ。・・・まあいいさ。行くだけ行ってみよう。いつ行く?」
「オレアも行くの?」
「まあどうせなら。今まで会ったこともないし。」
「そう・・・。昼休みはどう?」
「むしろ人が多そうだな。なんなら今から行くか?」
「今!?そんな時間ある?」
「あれ、ただ会うだけじゃないの?」
「だから事情があるんだって。」
「・・・なら昼休みでいっか。アフトはなんか策がありそうだし。」
「り。」
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昼休み
「クラスってさ。なんか法則があって決まってんのかな?」
「う~ん。分からん。けど学校って二年から分野別で変わるんじゃなかったっけ?」
「あれ、そうなの?」
「うん。政治、産業、軍事。この三つの分野でどれを選ぶかでクラスが変わると思うぞ。」
「へぇ~。」
「ほら。そんなこと言ってたら一組についたぞ。」
「うわ。人多すぎだろ。いくら何でもあそこまでとは・・・。」
「だから言っただろ。何か策があるんだろ。」
「まあな。・・・とりあえず入るぞ。」
「へいへい。・・・どうした、急に止まって。」
「めちゃくちゃ今頃なんだけどさ。王女の名前って何?」
「・・・は?マジで言ってる?」
「うん。」
「名前知らなくて用事があってきたの?」
「うん。」
「・・・呆れて言葉も出ないわ。名前は”グラティア・スピカ”。」
「へぇ~。・・・そのスピカってさ。星術の名前でもあるし首都の名前でもあるし王家の名字でもあるの?」
「ああ。まあ、覚えやすくていいでしょ。さ、行くぞ。」
「は~い。」
アフトとオレアは人ごみの中を通りぬけていく。
「・・・これ、グラティアさん本人も大変だろ。」
「それな。・・・てかアフト。様つけろよ。」
「あ、やっぱ様っすか。」
「当たり前だろ。・・・ほらついたぞ。アフトから言えよ。」
「はいはい。・・・グラティア様。少々お時間をいただいてもよろしいでしょうか?」
アフトがそういうと、周りの目が少し厳しくなった。
うえ。やっぱ人が多いところはあんま好きじゃないや。
「・・・あなたのお名前は?」
「アフト・アネモスです。」
「・・・なるほど。そういうことですか。学校の者に許可を取って、どこかの空き教室で話し合いましょう。」
「感謝いたします。」
アフトとグラティアは二人で職員室へと向かった。周りの人は少し呆気にとられている。
「・・・え?俺ただついて来ただけ?」
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「ここは誰も来ないでしょう。それに警備の方にもここの周りは許可を出しましたが、ここには誰もいませんので。」
「感謝いたします。」
「・・・アフト殿、と呼べばよろしいでしょうか?」
「ええ。そう呼んでいただいて結構です。」
「分かりました。ではアフト殿、と。アフト殿。まずは先に感謝を。未だに王家が情報を捜索していながら首都周辺の地域の治安悪化の原因を突き止め、かつ消去していただいて。ギルドからの悲鳴もおかげで止まりましたから。」
「身に余る光栄です。」
そういえばあの後何とかなったんだっけ。芸術家を二人送ったって言ってたな。・・・ま、何とかなったのならいいけどね。
「ご謙遜を。・・・それで、本題に入りましょうか。いったい何があったんですか。ユーゲント家から手紙はある程度はもらっておりますが、アフト殿が急に来たということは、何かあったのでしょう?」
「ええ。手紙は便利ですが、誰かに検閲されては今回ばかりは困りますので。」
「・・・説明を。」
「ええ。王家の方もクアラルの貴族間で何らかの不和が起きているのはご存じでしょう?」
「ええ。内通者は二人。グランドール家が確定で、ウートガルザ家が怪しいと。」
「ええ。しかしこの二家だけでは政戦というところで終わりでしょう。しかし、もし内通者が仲間を作っていたら?」
「・・・続きを。」
「このギルドの問題は以前から問題視されていたようです。実際メシエ様がこの問題に関してほかの貴族と会談をしていたようです。そこにはグランドール家がいました。その会談ではメシエ様が会談に参加された貴族がギルドを助けるということで決まったそうです。なので実際私がギルドへ調査に送られたのは遅れてしまいました。」
「・・・その貴族たちは助けを出さなかったのですか?」
「ええ。ですから私が言ったころにはギルドは逼迫していましたよ。」
「・・・なるほど。それで仲間の存在を疑ったわけですね。」
「ええ。・・・正直に言うのであれば、ウートガルザ家が裏切るのには納得がいきます。しかし、私はグランドール家が裏切った理由が納得いかないのです。ウートガルザ家は移民でエレーラから来た貴族でした。内部工作も国のためと考えれば・・・正直何故クアラルと仲が悪いのかはわかりませんが。しかしグランドール家はクアラルで新興した歴史のある家です。・・・失礼。話がそれてしまいましたね。ええ、それがメシエ様が仲間の存在を疑った理由です。」
「・・・なるほど。妥当な理由ですね。」
「ええ。ですからこれはただの政戦では終わりません。私たちと・・・そうですね、私たちを”守護派”というならば、相手を”革命派”と呼称しましょう。守護派と革命派との血で血を洗う戦いになります。もしかしたら首都だけでなく、国全体を巻き込むものになりますよ。」
「守護派、そして革命派ですか・・・。いいですね。そうこれからはそう呼びましょう。・・・つまりユーゲント家は王家に助力を、正確に言えばもっと大きい援助を求めているのですね。」
「ええ。お願いできますでしょうか?」
「もちろんです。そもそも王家はこの件に関して積極的に動く予定ですから、大丈夫でしょうが、私の方から念を込めて言っておきましょう。」
「ご協力、痛み入ります。」
「・・・最後に。アフト殿が言ったグランドール家のことですが。・・・正直王家も何故こうなったのか理解ができておりません。現在王家もグランドール家に何があったのか調査中です。もし何か分かればこちらから手紙を出すと思います。」
「・・・感謝いたします。」
「それと・・・。もし暇な時があればいつでも会いに来ていいですからね。」
「・・・ええ。またいつか。」
こうしてアフトとグラティアとの会談は終わった。そしてアフトは思い出す。
「あ。オレアのこと忘れてた。」




