21話:ギルド
タイトル変えました。
「アフト。お前ギルドに行かないか?」
「え?・・・随分急ですね。どうしました?メシエ様。」
「・・・そうだな。アフト、ギルドは知ってるだろう?」
「ええ。あれですよね。国が管理できない小さなことから重要な任務や護衛まで扱う場所ですよね。行ったことはないですけど。」
「大まかあってるな。ギルドはいろいろな任務を扱う仲介業みたいなものだ。任務自体も金になるし、その道中得たものを売ってもいいから、それで生計を立てる人だっている。ま、そこはどうでもよくてだな。ギルドの任務を調べていたんだが、ちょっと面白そうな任務を見つけたんだ。」
嫌な予感しかしないな。
「・・・どんな内容でしょうか。」
「スピカから近くがあまり発展してないのは知ってるか?」
「そうなんですか?むしろ発展しそうですけど。」
「残念ながらそうではないんだ。そもそもスピカがクアラルの一大都市だからスピカを広げていけばいい、という案と単純に費用が足りない、という事情が重なって現状のようになっている。そういうわけでスピカの周りはいい意味でも悪い意味でも自然に囲まれてる。」
「悪い意味・・・ああ、魔獣とか星獣のことですね。」
「そうだ。だが、ギルドや王家との協力もあってそこまで問題にはならなかったんだ。実際、貴族との話ではギルドに一任するという案も出てきたからな。だが、最近魔獣の動きが活発してるという報告を聞いたんだ。それに魔獣の強さも段違いで、死傷者も出ているとな。たしかアネモス領で戦いがあったときに、レグルスを使うものがいたというのを思い出してな。」
「・・・確かにいました。サクサリという名前だったと。」
「サクサリは覚星していたか?」
「・・・おそらく。ユーシャルの星獣と数多の魔獣を連れてきていましたから。海を渡ってきたとしてもかなりの量の魔獣を持っていくのは厳しいです。おそらく動物を意のままに持っていけるとか、その類でしょう。」
「・・・他に知っている者はいるか?」
「あと二人です。シュタールとアールーです。ですが、それぞれ星術が違います。ハマルとアンタレスです。覚星しているかはわかりませんでした。戦ったのがヴァイツ様でしたから。」
「・・・なるほど。正直サクサリがこの元凶だと思うのだが、魔獣の数はどのくらいだったか?」
「かなりの数です。具体的な数はあまりはっきりとは言えませんが、50は超えるかと。」
「持っていくにしても多いな。よく集めれたものだな。・・・となるとサクサリは外してもよさそうだな。在庫切れだろうし。」
「つまり私がやることはその魔獣の調査ですね?」
「ああ。これはユーゲント家公式の調査として行う。だから邪魔するものはユーゲント家に楯突くものだと思ってくれて構わない。まあ、そんな馬鹿な奴はいないと思うが。そして依然として神器の使用は禁止だ。代わりにこの剣と鞘をやる。ミスリルだからアフトの星術にも耐えれるだろう。」
「ありがとうございます。・・・人員は私だけですか?」
「ああ。今回はザニアも用があるからな。もちろん何かあればすぐに帰ってきてくれ。」
「了解しました。ただ、一日で終わるか不安なんですが。」
「だろうな。だからもう学校には連絡をしてある。この場合は事由がつくから心配はいらない。仮に一日で終わっても休養に充てる予定だったしな。・・・二日経てば何が何でも帰ってこいよ。」
「分かりました。」
「よし。ならこの紋章をつけてさっそくギルドに行け。もう連絡は前に入れてある。」
「この紋章は?」
「ユーゲント家を示す紋章だ。この紋章は服を離れたら自然解体するから、盗難の心配はいらない。」
へぇ~。便利だな。
「それと名前はアフトと名乗れ。名字はいらない。お金も忘れるなよ。持って行って損はない。」
「分かりました。それじゃあ、行ってきますね。」
「ああ。情報をよろしく。・・・はぁ。今頃なんだが、アネモス家にでも手紙を出しとくべきだろうか。二人の状況とか。・・・そうだ。バルカンのことも聞いてみるとするか。国が違うから、案外情報が得られたりな。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ここ?ギルドって。」
やっぱスピカってとかなんだなぁ。まあ、首都なんだから仕方ないんだけど。
「失礼します・・・。」
にぎやかだなぁ。あんまりうるさいのは好きじゃないんだよね。・・・でも、みんな楽しそうだ。
「新しく来た人ですか?それなら登録をしますのでこちらへお越しください。」
案内係の人か?別にギルドに入るわけじゃないんだけどな。
「はい。」
「冒険者を始めなさるのであれば10級からとなります。カードを用意しますので少々お待ちを。」
「いえ。冒険者をするためにここに来たのではありません。」
「冷やかしですか?」
「いいえ、そんなまさか。きちんとした事情があってきました。」
「どうだか・・・。それで、その事情とは?」
「そちらのギルドにユーゲント家から連絡が来ていませんか?」
「ええ。来ていますけど。」
「よかった。その調査に来ました。アフトと申します。」
周りの人の声が静かになる。
「・・・はぁ?何を言って・・・。」
その案内係は服の胸についた紋章を見る。
「・・・少々お待ちを。」
「?はい。」
一気に慌ただしくなったな。さっきは静かだったのに。
「坊主、ユーゲント家の人かい?」
「ええ。そうですけど。」
誰この男の人。しかしガタイがいいね。俺もこれぐらいの身長は将来欲しいものだね。
「調査に行くのかい?」
「ええ。そう言われましたので。」
「・・・気をつけろ。最近はみんな誰も首都の周りにはいかなくなってる。行ったとしても10人とか大人数でだ。」
「そこまでひどい状況なんですか?」
「ああ。魔獣の強さが段違いだ。国が何も対処しないから、若者がだんだんと上がる金に釣られて死んでいく。俺の仲間だってそうだ。」
「それは・・・。ご愁傷様です。」
「ああ、別に慰めの言葉をかけろとか言ってるわけじゃない。坊主、かなり若いだろ。」
「ええ。ほんの少し前に学校に入学しましたから。」
「・・・こんなところで命を無駄にするんじゃない。」
「・・・心配してくれるのはありがたいですが、行かなければならないので。」
「それならばせめて俺を倒してから行け。」
「・・・ここでですか?あまり目立つようなことはしたくないのですが。」
「ここででいい。簡単だ。星術も武器も使っていい。ただし殺しはなし。ある程度のケガなら受け入れよう。どうだ?」
「・・・あなたがそれを善意で言っているのがわかりますから、今回はやりましょう。ただ、一回だけですよ。」
「ああ。それでいい。・・・お前ら離れろ!」
まさに鶴の一声だな。案外慕われてるのかもな。この性格だし納得はできるけど。・・・外ではやらなかったか。スピカか?なんか久しぶりな感じがするな。
「準備はいいか?」
「ええ。どうぞ。」
「剣も構えずにか?・・・まあいい、行くぞ。」
男は剣をアフトに真正面に切りかかる。その剣からはマナの気配が、星術の気配がする。
「坊主、避けないのかよ!」
「ええ。」
アフトはその剣を掴む。その時、掴んだ右手に違和感が生じ、右手の操作の感覚が真逆になった。そして、アフトの星術を放とうとしていた右手は星術を発動できず、右の掌が切れた。
「・・・なるほど。」
スピカは触れたら終わりなのか。感覚が今でも変だ。正直言うことを聞かないとかのほうが変に右手のことを考えなくていいのに。
「覚星はしているんですか?」
「・・・よくその状態で聞けるな。してる。が、覚星が遠距離だからちょっと卑怯だと思ってな。それに魔獣で遠距離を使うやつはあんま居ないからな。」
相変わらず分別のつく理性だな。ま、ここでは要するに触れなければいいのか。・・・てか、スピカの星術が遠距離に対応できたらかなり強いし面倒くさいんだが。まだザニアちゃんのほうが・・・。いや、あれはあれで面倒くさいな。
「もう一回行きましょうか。」
「・・・いいんだな。」
「ええ。どうぞ。」
また男はさっきと同じようにアフトに切りかかる。アフトはまた左手で捕まえる。が壊れたのは剣だった。
「・・・これは。」
やっぱり星術の対決だったらマナをより多く込めたほうが勝つ。このまま行くか。
アフトは左手にマナを込め、男の右ひじを掴み、それを引っ張る。男の右手は文字通り赤子の手を捻るように簡単にちぎれた。
「・・・どうです?俺の勝ちでいいですか?」
「・・・はは。まさか新星だったとはな。あまり話題になってないのも目立ちなくないからか?」
「はい。でも、明日あたりには広まってると思いますよ。」
「そうか。・・・邪魔して悪かったな。」
「ちょっと待ってください。」
「ん?どうした?」
「これを受け取ってください。」
「・・・かなりの額だな。ポーションを買っても全然余るが。」
「あなたが誰だかは分かりませんでしたが、そこには間違いなく善意がありました。善意の分、上乗せです。」
「・・・そうか。ありがとうな。」
「いえ。こちらこそ。」
「あ、そうだ。坊主の怪我の程度だったら、このギルドでも売ってるポーションでいいはずだ。金はありそうだしな。俺は無理だが。」
「最後までありがとうございます。」
「おう。そっちもな。」
男は去っていく。その肘にはすでに包帯が巻かれていたから、慣れているのだろう。
「すいません。おそくなりーー。・・・何があったんですか?」
「はは。ちょっといろいろと。」
「はぁ~。・・・ポーション用意しますね。」
「ありがとうございます。」
アフトの怪我はポーションで治った。ちなみに値段は自分の管轄の冒険者が引き起こした問題だからとタダにしてくれた。
もし面白いと思ったら、評価お願いします。




