20話:学校での日常②
実技の授業が終わって休み時間
「アフト。さすがにやりすぎだろ。」
「え!俺のせい、あれ。絶対オレアが規模間違えただろ。さすがに俺の周り囲ってきたとき死ぬかと思ったぞ。」
「いや、案外アフトが耐えるからな。・・・てか、剣は使わないんだな。」
「ああ。新星は最悪ばれてもいいだけど、この剣がばれるのは不味い。本当に最悪の時じゃないと。」
「へぇ~。・・・剣も気になるけどさ。その鞘もやばくない?」
「ああ、これ?これはね、ヴァイツ様からもらったんだよ。学校に行くから、その記念にだって。」
「太っ腹すぎるだろ。・・・どれくらいの値段なんだ?」
「具体的には聞いてないけど、幸運の髪飾り全部買えるらしい。」
「・・・聞かなかったことにしとくわ。」
「?そう。まあ、オレアに任せるけど。・・・てか、俺も聞きたいんだけど、オレアって覚星してたのね。」
「ああ、そうだよ。でもそんな珍しくないだろ。」
「いやぁ。会ったことあるのはヴァイツ様とその執事長ぐらいだったわ。」
「・・・やっぱ強いのか?」
「・・・ヴァイツ様のこと?」
「ああ。」
「本気のヴァイツ様と戦ったらすぐに死ぬと思うんだけど。冗談じゃなくて。」
「・・・まじ?」
「うん。てか、アウストラリスなのに覚星が爆発なのやばいでしょ。防いだら爆発して防いだ意味なくなるんだけど。」
「そっかー。竜殺しの二つ名は伊達じゃないのか。」
「てかさ、なんでオレアってこの学校にいるの?サダルスードなんでしょ?星術。」
「なんか物心ついた時にはクアラルにいた。というか多分生まれも育ちもクアラルなんだけど、星術だけが違った感じだと思う。」
「そんなことあるの?」
「ああ。アフトの新星ほどじゃないけど、100人・・・いや、1000人に1人ぐらいはなるんじゃない?だから珍しいけどそこまでだな。」
「ふ~ん。」
「ふ~ん、って・・・。まあいいわ。・・・ミロディアさ、なんで一人になってたと思う?」
「え?俺とおんなじで友達がいないからじゃないの?」
「というよりかは、友達っていうのを必要としてない感じだったよな。」
「ああ~。言われれば確かに。それにちょっと意味深なことも言ってたしな。」
「だろ?それにその意味深な言葉もアフトだけを毛嫌いする理由にはなってないんだよな。・・・お前、昔いじめてたりしてないよな。」
「まさか!」
「だよな。俺もアフトがいじめるようなやつとは思えないんだよな。・・・ま、これ以上深入りしても仕方ないか。」
「そうだよ。次の授業のこと考えよう。」
「次は座学だな。」
「・・・寝ていい?」
「だけだ。歴史には興味あるのに、座学に興味ないのも不思議だな。授業形式もほとんど一緒だろ?」
「なんか・・・興味が沸かん。」
「ま、寝たら水かけてやるから、好きに寝たら?」
「いつの日か溺れ死んでそう。」
「ははは!そうならないように気をつけろよ。」
「まあ、検討を検討しとくわ。」
「・・・。」
「うわ!・・・今かけなくたっていいだろ。」
「すまん。手が勝手に。」
「はぁ~。・・・早く行こう。」
「へいへい。」
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夜 ユーゲント家にて
「アフト様。ちょうどよかった。メシエ様がお呼びです。」
「ムーサさん。分かりました。ありがとうございます。」
「いえいえ。これも仕事ですから。・・・アフト様。」
「?なんでしょう。」
「メシエ様はこのことについて話すのを少し躊躇っていらっしゃいました。心を準備していくのがよろしいかと。」
「・・・ありがとうございます。」
なにかよくないことでもあったのか?まだ祝期には程遠い、四月だぞ?・・・でもその情報が知れ渡ってるのは敵も知ってるはず。・・・ひとまずはメシエ様に聞いてからでいいか。
アフトは急ぎ足でメシエの部屋へと向かう。
「アフト。ムーサから聞いたな?」
「ええ。なにかよくないことがあったのですか?」
「・・・まあ、よくないが、ある意味よいともいえるな。」
「?はぁ。」
「そうだな。単刀直入に言えば、グランドール家は黒だった。」
「・・・それのどこに良い要素が?」
「早めに分かったことだ。それと、アフトの馬車も派遣したのはグランドール家だった。」
「証拠があるんですか?」
「観察に行ったものが全員死んだことと、芸術家の情報だ。」
「・・・これからはどうなさるおつもりでしょうか。」
「そうだな。・・・アフトにはできればミロディアと会話をして、情報を引き出せ。だが、深入りはするな。自分の情報は絶対に渡すな。」
「了解しました。」
「それと、アフトのことは学校で広まると思う。神器の件は大丈夫だが、新星の件はばらされそうだな。・・・うまい具合に新星が隠れ蓑になったな。」
「妨害するためでしょうか?」
「だろうな。・・・我々は彼らが動き次第、行動を起こす。防衛側にはなってしまうが、現状何もしてない者を責め立て、罪を擦り付けることもできないからな。」
「なるほど。・・・カーラは何をするんですか?」
「今までと特に変わらないだろう。顔が広いから情報収集ぐらいか。・・・心配か?」
「ええ。今まで支えてきてくれましたから。」
「・・・そうか。・・・それとそろそろ王女から何らかのコンタクトがあるんじゃないだろうか。」
「王女?・・・ああ。会ったことないんですけど、大丈夫ですかね。」
「何とかなるだろう。現状の礼儀でも特に問題はないだろうし。・・・何か質問はあるか?」
「・・・グランドール家は悪いかもしれませんが、もしかしたらミロディアさんはただの被害者かもしれません。」
「・・・なぜそう思う?」
「ミロディアさんは私にだけ、その、冷たいんです。そもそも友達を作るのを無駄だと考えているようですが。そしてグランドール家と私の間にかかわりがあるとするならその馬車だけです。その馬車で攫うのはミロディアさんの発案だったのではないでしょうか。グランドール家は世継ぎ争いがあると聞きます。ミロディアさんが私に冷たいの原因としては合点がいくのではないでしょうか。」
「・・・ミロディアがアフトに冷たい理由にはなるが、被害者の理由にはなっていないな。」
「・・・被害者は勘です。彼女の表情は友達を必要としていないにしては、どこか・・・苦しそうでしたから。」
「・・・凄いな。洞察力が素晴らしい。指揮官の才能がありそうだ。正誤に関してはこちらから調べておこう。もしアフトの意見が正しければ、ミロディアを仲間に引き込めるかもしれない。・・・どこで習ったんだ。一人で身に着けるにはまだ経験が足りないだろう。」
「残念ながら分からないのです。私の過去を知るのは今の人生の目標ですから。」
「そうだったな。・・・今日はゆっくり休め。」
「分かりました。では失礼いたします。」
・・・寝るか。




