19話:学校での日常①
「やっと昼休みになった~。正直学校いきたくねぇ~。・・・けど、社会に出て生きていく以上、必要なことなんだろうな。図書館に行くか。」
書庫見たんだけど結局何もなかったんだよね。あったのは字の通りユーゲント家の歴史だけ。まあ、あと少しのクアラルでの騒動。ただ、昔のクアラルで移民を許可した時期があったのは気になるな。内通者が来るならそこしかない。たしか、ウートガルザ家だったよな。移民の中で今有名なのは。どうせメシエ様も知ってるんだろうけどさ。・・・もう一人は誰なんだ?グランドール家じゃなければいいんだけど。
「・・・ええと。前どこまで調べたっけ?・・・ああ、そうだ。ここだ。」
いつもの席で見るか。あそこ窓から景色が見えて好きなんだよね。・・・ん?
「ミロディアさん?」
「・・・ちっ。」
え?今舌打ちしたよね?・・・もはや慣れた方がいいのかもしれない。
「ねえ、相席していい?」
「・・・好きにしたら?」
「ありがと。・・・聞きたいことあるんだけどさ、聞いてもいい?」
「・・・なに?」
「本読むの好きなの?」
「・・・別に。ほかにやることないから。委員会もそう。」
「ふ~ん。じゃあさ、ミロディアさんってさ。ここから遠いよね?なんでこの学校選んだの?」
「父さんがここに行けって言ったからここに来た。」
「ミロディアさんの父さんってさ。どんな人?」
「・・・気持ち悪い。もうこれ以上聞かないで?」
「・・・え?」
「あなたさ、際どい質問してるって分からないの?」
「・・・ごめん。気を悪くさせたのなら謝る。」
「それが普通ならなおさらたちが悪い。話しかけないで。」
・・・行っちゃった。そんな悪い質問したか?俺。いやまあ、俺みたいに親がいないとか、なんか事情がある可能性は否めないけどさ。正直そういうのって聞いてみないと分かんないよね。なにがだめで、なにがいいのか。・・・まあ、今は、歴史の本でも読み漁るか。
「ここにいた。お~い、アフト!」
「あ?・・・ああ、”オレア”か。」
オレア。髪の色も目の色も緑の男。アフトがこの学校で唯一帯刀を認められてるという理由で話しかけてきた男の子。喋ってみると気さくで優しく、あんまりクラスに馴染めることができないアフトを気にかけている優しい子。
「探したぞ。次星術の実技だぞ。いかないのか?」
「え!マジで?ちょっと待ってて、今行くわ。」
マジか、実技かよ。絶対行かないと。俺の中のまだ行ったことないけど絶対楽しいランキング一位だから。
「アフト、ミロディアのことは気にしなくていいと思うぞ。アフトは何も間違ったことはしてないと思う。」
「ああ、見てたの?」
「ああ。別にのぞき見する気も盗み聞きする気もなかったんだがな。もし嫌に思ったのならすまん。」
「まさか。呼びに来てくれたんだろ?そんな人を邪険に扱うことなんてあるわけなんだろ。」
「そういってもらえると助かる。・・・ところでさ、アフトの星術って何なの?ほら、次実技だろ?」
「・・・俺の言うこと信じてくれる?」
「え。なんか星術で事情ある理由が見つからないんだが。・・・もちろん信じるけど。」
「俺さ。新星なんだよね。」
「・・・まじ?」
「うん。」
「・・・なんで言わないの?それ。結構面白い話のタネになるだろ?」
「いやぁ~。正直あんま目立ちたくないんだよね。だからオレアも黙ってくれると助かる。」
「いやまあいいけど。じゃあどうすんの?実技の時。絶対どこかで誰かと組まないといけないだろ。」
「・・・オレア。頼む。」
「・・・今はいいが、いずれ誰か探せよ。さすがにずっとおんなじ相手は嫌だぞ。」
「全然助かる!まじ感謝。」
「はぁ~。・・・早くいくぞ。」
「は~い。」
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「二人組になったけど、何すんの、これ。」
「いやぁ~。あなたの友達に聞いたらどうですかね。」
「・・・アフトも友達作れよ。」
「俺あんま会話得意じゃないんだわ。」
「ああそう。・・・あれ、このクラスって奇数だっけ?」
「いや、偶数じゃないっけ?なんで?」
「いや、余ってる人いるから・・・ってあれミロディアじゃね?」
「え、まじ?これって評価入るよね?不味くないの?あれ。」
「評価には入るはず。・・・どうする、誘うか?」
「いいんじゃない?俺はうまく話せる気はしないけど。」
「その時は俺が何とかするわ。じゃあ誘ってくるわ。」
「は~い。」
その後、アフトが適当に訓練用の剣で素振りしてると、オレアがミロディアを連れてきた。しかし、アフトを見た瞬間不服そうな顔をする。
「・・・。」
「・・・なんでアフトがいるの?」
「そりゃあ、俺の相手だからな。」
「・・・はぁ。この際気にしないわ。二人でやりましょう、オレア。」
「おい。俺忘れんなよ。」
「・・・はぁ。仕方ないわね。」
「ミロディア。ずっと気になってたんだが、なんでアフトをそんな毛嫌いするんだ?別に変な対応もしてないだろう?」
「・・・学校って言っても、どうせ数年でしょ?友達って作るだけ無駄だと思うの。必要な時だけ作ればいいと思うのよ。じゃないと・・・。」
「「じゃないと?」」
「・・・なんでもないわ。さ、やりましょ。戦えばいいんでしょ?」
「・・・まあいいか。どうする、アフト。二人組でやるから、だれか観戦しないといけないが。」
「それなら私がやるわ。どうせなら二人のを見てからやった方がやりやすいもの。」
「そうか。・・・分かった。アフト、やるぞ。」
「は~い。・・・これって星術使ってもいいんだよね。」
「いいが・・・。アフトは大丈夫なのか?使っても。」
「う~ん。一回剣だけでやって、やばいってなったら使うわ。あ、オレアは使っていいよ。」
「・・・その言葉、後悔するなよ?」
「ああ。安心しろ。絶対俺が勝つ。・・・ところで、オレアの星術って何?」
「戦ってから判断しろ。後悔しないんだろ?」
「あー・・・。はいはい。」
さて、オレアはどんな強さなんだろうな?
「じゃあ俺から行くわ。」
「どうぞ~。」
オレアは周りに水球を作り出す。
・・・つくづく思うんだが、俺の周りってスピカ使うやつあんま居ないよな。一人はアルデバラン。一人はアウストラリス。そしてもう一人はサダルスードか。クアラルなんだよね?ここ。
「ま、まずは小手調べだな。」
オレアは水球をアフトに速度をつけて向かわせる。が、アフトはそれを難なくはじく。
ま、これぐらいだったら全然余裕だわな。てか、同時じゃなくてよかったわ。
「水の利点は質量だからな。受けきれるかな?」
オレアは球体から一本の線にし、合計七つほどの水の線をアフトに飛ばす。
あ~。ちょっとだるいかも。てかこれ弾くの無理じゃね?できても防ぐことだけだな。・・・いや、避けたほうがいいな。これ上から来たら結構きついし。・・・ん?影?何の影これ?
「うおっ。あ?・・・氷?」
「氷も使えるからな。覚星だけど。」
「え!覚星してんの!?すご。」
「その話は後でな。」
オレアはアフトの真上に巨大な氷の塊を、周りには水の壁を作り出す。
「な、せいぜい足掻けよ。」
これはちょっと無理だな。・・・仕方ない。
「あ~・・・。すまん。星術使うわ。」
「いいけど、これもう無理だろ。」
ま、確かに普通の星術だったら無理だろうな。水も破壊できることを願おう。
「さあ。この剣には俺の星術に耐えれるかな?」
・・・お?割と行けそう。でもひび入ってるな。時間との勝負か。
「ん?・・・やばっ!全部破壊しまくってる。アフトの野郎、どんな星術持ってんだよ。」
水も破壊できる星術って何だよ。仕方ない。包囲してアフトを氷漬けにするか。
オレアはアフトを水で抑えようとする。が、アフトの視界に入った水は悉く消えていく。
これ氷で行けるのか?多分アフトの意識外は無理だろうから、全方位から氷柱で刺すか。
「・・・受けろよ。」
アフトの周りに何十本もの氷柱が現れる。
ま、そうだよね。死角からの攻撃に頼るだろうね。だけど、それはヴァイツ様から耳に胼胝ができるほど聞かされた。こういう時は、体に星術を付与する。強引でマナの消費も激しいけど、最強の防御手段になる。
「・・・あいつの星術やばいな。物理攻撃全部だめじゃん。・・・いや待てよ。絶対あれマナの消費やばいだろ。仕方ない、持久戦か。あんまり好きじゃーー」
「ちょっと、そこ!いくら実技とは言えやりすぎだ!周りを見てみろ!全員ドン引きしてるぞ。」
急に大声が聞こえたと思えば、それはレテの声だった。アフトとオレアはすぐに星術を使うのをやめる。周りの目は全員二人を見ていた。
「・・・すまん、アフト。やりすぎた。」
「いや、こっちも、すまん。」
周りの目は騒然としていたが、ミロディアだけは、アフトを注意深く見ていた。
「やべ、剣壊れた。」
「何してんだよ。」
「・・・あ、ミロディアさん。この件は内緒にしてもらえる?」
「・・・ええ。」




