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18話:夢

「アフト。委員会は何にするか決めた?」


「・・・図書委員になろうかなって。」


「・・・なんか意外過ぎて言葉が何も思いつかないんだけど。」


「そうだろうな。でも、別に興味本位で選んだわけじゃない。俺が今一番知りたいのは自分の昔だからね。」


「なるほどね。・・・そういえば、アフトってあれから何か思い出したことあるの?」


「・・・一個だけあるよ。前にさ、調査の時に戦った時あったじゃん。あの時に、あの星獣のことについて思い出したんだよ。」


「へぇ。どんなこと?」


「あの星獣の名前と弱点。・・・ただ、それよりも俺が気になるのは、これは誰かから教えてもらってたってこと。そしてその誰かが俺の父さんだったってこと。」


「・・・それだけ?」


「うん。それだけ。」


「・・・ま、頑張ってね。」


「ああ。そっちもね。」


・・・学校の方はあんまりいいとは言えないんだけど。・・・帰るか。

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・・・懐かしい気配だ。俺はさっき眠ったはずだから、多分昔の記憶のはずなんだけど。・・・夢だからと言ってできることはないか。しかたない。時の流れに任せよう。・・・すごい本の数だ。図書館なのか?学校にもあるけど、比較にならない量の本だな。


「===様。この本はどこに整理しますか?」


「ああ、そうだな。あそこあたりで頼むよ。」


「承知いたしました。」


あの指示を出してるのが多分俺の父さんかな。多分偉いんだろうけど、俺も偉かったんだろうか?


「おっ、アフト。来たのか。」


「だめだった?」


「いいや、全然。お前も手伝うか?」


「うん。暇だし。」


「分かった。ならこの本をあっちまでもっていってくれ。」


「うん!」

結構あるな、これ。・・・やべっ。

「いてて・・・。」


「アフトにはまだ早かったか?」


「大丈夫!自分でも持っていけるから!」


「そうか。でも父さんも一緒に拾うの手伝うよ。いいかい?」


「うん。でも持っていくのは僕だからね。」


「ああ。分かってる。」


そうか。昔の俺だもんな。体も、本を持つ感覚も違うわな。・・・持ち上げるか。・・・この本、ちょっと変だよな。表紙がないし、伝記か?これ。これ誰かの物語?


「気になるか?」


「うん。この”バルカン”っていう人。この人はどんな人なの?」


「バルカンっていう人は、父さんの父さんの父さんの父さんの父さんの親戚なんだ。」


「父さんはこの人について知らないの?」


「ああ。残念ながら。でも、その本を読んだら分かるぞ。」


「本の整理が終わったらあとで見てもいい?」


「ああ、いいぞ。」


「やったー!」

”バルカン”。聞いたことないな。けど、もしかしたら俺の歴史を導く手掛かりになるかもしれない。学校の図書館とか、友達に聞いてみてもいいかも。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「はぁっ!・・・ああ、そうだよな。夢だから、目覚めるよな。・・・気持ち悪。汗でべたべただ。・・・ちょっと外にでも出るか。・・・ああ、外に出なくてもベランダでもいいのか。そっちにしよ。あんまり動きたくない。」


アフトはベランダに出る。月がちょうど雲で隠れていた。


「・・・夜風が気持ちいいな。」


「何してるの?」


「うあっ!・・・びっくりした。いるなら言ってくれよ、カーラ。心臓に悪いわ。」


「ほかになんていえばいいのよ?その言い方だと話しかけたらどんな言葉でも変わらない気がするんだけど。」


「・・・確かに。」


「で?どうしたの?なんかすごい声聞こえたから部屋に行こうかなって思ったけど、ベランダに行く音が聞こえたからね。」


「・・・カーラさ、バルカンっていう人知ってる?」


「バルカン?聞いたこともないわね?どうして?」


「夢の中で出てきた。正確に言えば、夢の中に出てきた本の中に書いてあった。もしかしたら俺の過去の手掛かりになるかも。」


「・・・そういうこと。だからなんか変な声聞こえたのね。」


「すまん。」


「いいわよ。・・・メシエ様に聞いてみたら?ユーゲント家なら歴史も古いし、昔の本も残ってるかもよ?」


「そう・・・だな。聞いてみようか。」


「ええ。それがいいわ。・・・今日の学校はどうだった?」


「特に問題はなかった。けど・・・。しいて言うなら隣の人とちょっと喋りずらいかも。」


「なにかやらかした?」


「いやいや、そういうことじゃない。挨拶したんだけど、無視されてね。三回ぐらいしたら話しかけるなって言われた。」


「・・・名前は?」


「ミロディア・グランドール。聞いたことある?」


「グランドール家のこと?ユーゲント家ほどではないけど、結構昔からあるんじゃなかったかしら?階級は確か、伯爵だったと思うわよ。」


「へぇ~。」


「でも珍しいわね。多分他の学校のほうが近いと思うんだけど。」


「なんか事情とかあるのかな?」


「そこまでは分からないけど、結構兄弟姉妹がいるらしいわよ。世継ぎ争いとかも大変なんじゃないかしら?」


「そっか。世継ぎ争いか。・・・ユーゲント家ってヘゼ様以外見ないんだけど。」


「ユーゲント家って子供は一人って決めてるらしいわよ。前までは何人でもよかったらしいんだけど、争いがいくところまでいっちゃって大変なことになったんだって。」


「そうだよな。大公の子供とか大変なことになりそう。」


「ね。・・・アフト、明日は学校休みなのは知ってる?」


「え。俺明日図書館でバルカンのことについて調べようとしてたんだけど。」


「学校は週に五回よ。陽曜日から一日ずつ開けてあるの。だから明メシエ様に聞いてみたら?あと、なんでグランドール家がここの学校にいるのかも。裏切者の件とかあるしね。」


「・・・そうだな。そうしてみるよ。今日はありがとう。」


「分かったわ。じゃあ、また明日ね。」


「ああ。また明日。」

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「バルカン?聞いたことないな、すまんが。」


「いえ。構わないです。」


「必要なら書庫を使うといい。あそこは今までのユーゲント家の記録や国の出来事などが載っている。これが鍵だ。使え。」


「あ、ありがとうございます!」


「構わん。それよりもグランドール家のほうが気になる。名前は確かミロディアといったな。グランドール家はここから結構遠いぞ。カーラの言った通り、ここの学校よりもほかの選択肢のほうが明らかに近い。・・・そうだな。何人か監視に向かわせよう。報告感謝する。」


「いえ。これも義務ですから。では私は書庫に向かおうと思います。何かあればいつでも。」


「ああ。頼りにしてる。」


「・・・あ。そういえば、なんか見ちゃいけないものとかありますか?」


「いや、特にない。好きに見てもらって構わない。」


「ありがとうございます。ではまた。」


「ああ。」


アフトは部屋を去る。


「・・・グランドール家か・・・。これはまた懐かしい家だな。・・・むしろここが裏切者であると祈りたい。また振出しに戻るからな。」

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