10話:調査を終えて
現在添削中です。ここからの話は文体に違和感があるかもしれません。お気を付けて。
俺は今、ヴァイツ様の部屋にいる。なんか用があるらしい。
「今回は助かった、二人とも。よくやってくれた。おかげで死んだ者も少数で済んだ。・・・むしろ何人か死んだことが不幸というべきか。」
「ホグさんはどうなったんですか?」
「重傷だが、生きてはいる。アフトが金属を壊したおかげだ。」
「いえ、ヴァイツ様が来なければどうなっていたことか。それに、ほかの調査隊のみんなも頑張ってくれてましたから。」
「アフトが居なければ私は守ることで精一杯だっただろう。・・・カーラもよくやってくれた。あの状況で混乱を起こさせなかったのは素晴らしいことだ。」
「当然のことよ!・・・アフトもありがとね。」
「どういたしまして。」
「・・・ははっ。二人を見てると居たまれなくなるな。・・・二人とも、よく聞け。君たちはもうすぐ学校に行かなければならない。今が二月だから、あと二か月後になるな。これから話すことは二人の学校生活にかかわるから、注意して聞きなさい。」
「「はい!」」
「さっきの戦いで嬉しくない情報が得られた。どうやら7月の祝期ーアフトは知らないだろうが、クアラルの誕生を祝う祭りがあるんだーにとんでもないことを仕掛ける者がいるらしい。」
ヴァイツはそういうと、二人のほうに鍵を渡した。
「・・・これは?プレゼントか何かですか?」
「プレゼントとしたら回りくどすぎるでしょ。」
回りくどい・・・確かに回りくどいか。いや、そもそも鍵を渡されたからってなんだって感じ。・・・何言ってんだ俺?
「はは。もしそうならよかったんだが。残念なことにこれはその敵から奪い取ったものだ。おそらく・・・いや、少し遠回りだな。単刀直入に言おう。二人とも、学校では常に臨戦態勢でいてくれ。」
「単刀直入すぎて話が見えません。」
「・・・これに関してはアフトの言うとおりね。」
「ああ。すまない。・・・7月、君たちが行く首都”スピカ”で、裏工作か、表立ってかは分からないが、確実に何か騒動が起こる。そして二人の貴族が内通者だということも分かった。騒動の内容までは分からないが、少なくとも二人ともまともな学校生活は遅れないだろう。特に内通者の貴族は変な動きをしてくる可能性は高いからな。」
・・・首都もスピカって名前なの?もしかしてほかの国の首都も星術の名前だったりするの?あと、貴族が内通者って、この国大丈夫なの?いくら博愛の国とは言え。
「はぁ。・・・それで、この鍵と何の関係があるんですか?」
「この鍵は敵が情報を得るための道具だ。敵はどうやら情報を得るためにこの鍵が必要らしい。残念なことに私たちはここから動けない。そこで私は考えた。二人の内一人がこの鍵を持ち、敵の目標を妨害、もしくは奪取してほしい。」
「え?二人でですか?」
「そうよ、父様。いくら何でも二人だけじゃ。」
「なにも二人だけとは言ってない。このことはもう王には報告してある。知るまで何日かはかかるだろうが。おそらく女王様が、もしかしたら王女様がかかわるかもしれないが、何か手助けをしてくれるだろう。それに、すでに”ユーゲント大公”の協力は取り付けた。」
え?王女様?ユーゲント大公?何言ってんの?・・・カーラも少し驚いてるし。
「ええと・・・。なるほど?」
「アフト、よく聞いてね。私たちが学校に入学する年に、王女様が入学なさるの。だから父様は女王様には会えなくても王女様とかかわるかもしれないの。そしてユーゲント大公はクアラルで最も偉い貴族よ。クアラルに五人しかいない大公。クアラル五大公とも言われるわね。その中でもユーゲント大公は最も古参でクアラルの発展に欠かせなかったとも言われるわ。」
「必要なことはカーラが全部言ってくれたな。つまり二人はこのクアラルという国の中で最も権力と威厳のある仲間を得たと思ってもらって構わない。・・・逆に言えばこの二人以外はあまり信用できない。本当なら二人にも真っ当な人間関係を築いてもらいたかったが。・・・致し方ない。」
「ヴァイツ様!そう気を落とさないでください!カーラは分かりますが、私は構いません。まだまだヴァイツ様には御恩がありますから!」
「アフト・・・。感謝する。」
「父様!私だってかまわないわ!・・・それに、アフトが一人で行動するのも少し不安だもの。」
「うっ・・・。」
それに関しては何も言えねぇ。・・・正直表立ちすぎて迷惑とかかけそうだもん。
「あはは。そうか。二人ともいいか。・・・分かった。それならどっちが鍵を持つか選んでくれ。」
「カーラが持ったら?」
俺すぐ無くしそうだし。
「いや、多分アフトのほうがいいわ。私より強いじゃない。」
「・・・そう?分かった。」
戦ったことないから分かんないけど。
「よし、ならアフト。この鍵はアフトが持て。この鍵はアーティファクトだ。今はマナを込めてるから鍵のままだが、マナがなくなると立方体になる。そして、マナを込めた状態で”自由の名のもとに”と言ってみろ。」
「分かりました。・・・自由の名のもとに。」
アーティファクトって声でも変わるの?ん?うわほんとだ。
「へぇ~。声で判断するのも”こええ”ですね。」
・・・・・・・・10秒ほどの沈黙。
「すいませんでした。」
「・・・まあ、アフトが持っていなさい。」
「分かりました。」
「それで?学校に行くまでは何かするんでしょう?こんな危険な任務に行くんだから。」
「ああ。アフトは私に、カーラはジークに鍛えてもらう。ただ、学校に行く一か月前にユーゲント大公に会いに行ってもらうから、実質的な鍛錬は一か月だな。」
「分かったわ。」
「そうか。アフトはどうだ。今のうちに聞いておきたいことは?」
「・・・ヴァイツ様。私たちが襲われるの知ってましたよね?」
「・・・ほう?その理由は?」
理由?理由なんて決まってる。
「勘です。あと、竜殺しって何ですか?」
「アフト。竜殺しっていうのはーー
「カーラ、大丈夫だ。・・・そうだな。鍛錬の中で私に一回でも勝ったら教えてやろう。」
「ええ!?絶対勝てないじゃないですか!」
「さあ、案外分からんぞ?戦ってみないと。・・・ほかにはないか?」
「もうないです。」
「そうか。分かった。わざわざ夕食の前にすまないな。食べに行っていいぞ。」
「わあ~い!行ってきます!」
アフトは気分があからさまに良さそうに部屋を出て行った。だが、カーラはまだ残っていた。
「・・・カーラは行かないのか?」
「・・・ほんとに言うの?私も竜殺しについては話しても父様については避ける気だったけど。」
「ああ。いずれ言わないといけないだろう。アフトは案外鋭いことに気づくからな。・・・それに、恩と言っても、もう返す分はないだろうに。むしろこちらが返してもいいぐらいだ。」
「・・・アフトは、父様にはどう見える?」
「・・・正直分からない。・・・だが、アフトにはみんな夢中じゃないだろうか?私もおそらくそうだ。アフトがここに来たことは、ここだけでなく、ほかの場所、世界へも影響を及ぼすのかとも考えた。・・・結局分からないのだがな。」
「珍しいわね。父様がそこまで言うなんて。」
「カーラだってそうだろ?アフトと出かけに行くときは誰よりもウキウキしてるぞ。」
「・・・ばれてた?」
「当たり前だ。何年育ててきたと思ってる。」
「そう。・・・父様、アフトの武器については考えたことある?」
「ああ。ジークから聞いてな。ジークが持ち上げられない武器とはどんなもの何だとな。・・・どうしてだ?」
「・・・ホントにそれだけ?」
「・・・可能性は浮かんださ。しかし、それはあまりにも現実離れしてるとーー。待て、まさか。」
「もしそうだと言ったら?」
「・・・見たのか?」
「ええ。間違いない、あれは神器よ。輪廻の剣はアフトが持ってる。だから、持てないんじゃなくて、私たちには持つ資格がないのよ。アフトは何かを持っているわ。秘密か、それとも世界を動かす歯車か。」
「・・・はぁ。考えることが増えるばかりだな。」
「でも、今一番楽しそうな表情してるわよ?」
「・・・当たり前だろ。こんな気分になったのは竜を殺した瞬間以来だ。・・・やることができた。カーラ、他に用はあるか?」
「いいえ。もうないわ。失礼するわね。」
カーラもいなくなり、残ったのはヴァイツだけ。
「アフト。君はどんな景色を私たちに見せてくれるのだ?・・・きっと妻が居たら、興奮して私に話しかけるだろうな。・・・竜が私に残したのは、妻が私に託した不朽の好奇心と、妻の記憶だけらしい。」




