1話:最初の光
どうも!初めましてです。シグと申します。初めてなので、温かい目で見てもらえると幸いです。
――ゆっくりと目を開ける。さっきまでの水中のような感覚ではない、鮮烈で、輪郭がこれ以上ないくらいはっきりしている。
「……こゴホッ、ガハッ、ハッ」
とりあえず声を出してみたかったが、上手くいかなかった。それもそうだ。さっき目覚めたのだから。
「すぅ……はぁ……」
喉を刺激しないように、ゆっくりと、しかし確かに息を吸う。
「ここは……どこだ?」
初めて……というか久しぶりに言葉を発した。このままじっとしていたいが、さすがにずっとというわけにはいかない。俺は立ち上がろうとしたが
「ふっ!っと。おっとっ」
体は言う事を聞かない。まあそうだろう。今起きたのだから。座ったままで上半身を動かす。最初は痛かったが、しばらくすると鉄の錆が落ちたように動きやすくなった。
「まあ、こんなもんか。よし、とりあえず周りを見てみよう。むやみやたらに動き回るのはまだきついしな」
体を軸に一回転する。後ろには特に何もない。拘束具とかもないし、拘束とかではなかったようだ。単純に眠ってただけ?とも思ったが、それにしては長すぎる。改めて俺の来ている服を見ると、ボロボロになった外套が一枚。めくってみても、そこにあるのはやせこけた体だけ。外套のポケットを探ってみる。
「ん?これは……手紙?と鍵かな?」
手紙はかなり風化してるみたいだけど、中身までは問題ないと思いたい。そこで開いてみると
CANCER
俺にとってはこれが何を意味するのかも分からなかった。でも、どこかでこれを
「キャンサー……」
そう俺はつぶやいた。どうやらこの言葉を知っていたらしい。そんなことを考えていると、俺の記憶が思い出せないことに気づいた。アフト。その自分の名前以外は。
「アフト・キャンサー……」
その言葉はアフトにとって不思議としっくりと来た。……ただ、何かが欠けているような違和感はあるが、名前が無いのは困る。だからアフト・キャンサーと名乗ることにしよう、そう決めた。手紙をポケットに入れ、今度は鍵の方を考える。
「この鍵はかなりさび付いてるな。少なくともこんな鍵を見たことはないが……出口の鍵だろう。それ以外に思いつかない」
そう思ってひとまず歩くことにした。前には道……とは言えないが、少なくとも続いてはいる。そう思って進んでみる。
「……お?あれは」
目の前にあるのは剣だった。他に何も言いようがない剣。それが洞窟の壁にもたれかかっていた。とりあえず握ってみる。
「おおー」
不思議と俺の手にフィットする。まるで前にも握ったことがあるかのように違和感がない。
「……ほかに何もないのか?」
俺の直観はこの剣が特別だと言っている。思いつく特殊な能力を考えてみる。炎、氷のようなものは出ない。剣の形も……
「おっ?」
今の剣の形はただの剣だ。どこにでもある剣。だけど、違う剣の形―例えばダガー―を思い浮かべてみると、その剣の形になる。何と面白い武器だろう。少しこの剣に興奮を覚えていたが、一人で、しかも洞窟でやるのは虚しいことに他ならない。剣を手に取り、また歩き始める。
暫く歩くと、光が差し込んでいるのが見えた。ただ、光は細々としていて、さらに進んでみると、そこには扉があった。ポケットに鍵があったことを思い出し、それを手に取る。その鍵を扉にある鍵穴に入れると、ぴったりとはまった。そのまま鍵を回す。重く、さび付いた扉を回すと、軋む音が聞こえる。
「うお!眩し!」
思わず目を閉じてしまった。久しぶりの光は容赦なく目を焼いた。 時間が経ち、光に慣れてやっと目を開ける。
「ここは……ほんとにどこなんだ?」
思わずそう言ってしまった。周りには鮮やかな緑。空は青と白のコントラスト。その美しい景色を、俺の心は拒んでいた。
「うっ!おぇえ、ぇえ!」
おぞましいほどの違和感。口を手でふさぐ。幸い中身は出ていなかった。
「はぁ……」
目覚めた時のような感覚とは違い、単なる吐き気が俺を襲う。思わず体を動かそうとするが
「っ!ああくそ!いってぇ!」
体は思ったように動かない。考えれば当たり前だった。さっきまではゆっくり動いていたからよかったんだ。このままではおそらく死ぬ。そう思った時、視界の端に誰かが映った。
「=っと・・・。だい=ょ=ぶ?」
どうやら誰かいたらしい。でも、もう限界だ。 そのまま、俺の視界は真っ黒に染まった。
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