第9話 それぞれの担当
「それで、修行って言っても俺達は何をすればいいんだ?」
俺がようやく協力すると言ったからか勇者は機嫌よく聞いてくる。俺は小さくため息をつきながら、
「まず、先ほども言ったが、俺は具現と停滞を教える。他の五大技術の凝固を戦士、治療を聖女、感知を弓使いが教えてくれ。」
俺がそれぞれ教えて欲しい技術を言っていくと、弓使いが大きくため息をついた。その意味がわかったのか、戦士と聖女が俺の方を見てくる。俺は何故見てくるのか気になっていると、弓使いが呆れたように、
「あのねえ、私達の名前覚えてないの?ちゃんと自己紹介したはずなんだけど?」
そう言われてようやく俺は何故ため息をついたのかわかった。が、分からないものは分からない。なにせ自己紹介された初めて会った時には、勇者達に興味は無かったから名前ではなく役職で覚えていたのだ。それに、俺自身もう何十年も名前を名乗っていないから忘れていたのだ。
「すまんな。俺は名前などに興味がないから覚えるのが苦手なのだ。だからもう一度自己紹介してくれるか?」
弓使いはもう一度呆れたようにに首を振り、聖女と戦士は苦笑しており、勇者はまだ自分の役割が言われていないのに困惑している。
「もうこれっきりしか言わないからしっかり覚えて。私は弓使いのアナクリスト。皆はアナって呼んでる。」
「俺は戦士のフラノス。何でも自由に呼んでくれ。」
「私は僧侶のソフィアです。『称号持ち』だからか、皆さんは聖女と呼んで下さりますが、ソフィアと呼んでくれた方が嬉しいです。」
アナからフラノス、ソフィアの順に自己紹介をしてくれ、残り一人の勇者に視線を向けるといくら待っても自分の役割が言われないからか少し怒っているように見える。まあ、そんなことを無視してずっと見ていると諦めたように口を開いた。
「はぁ。もう知ってるだろうが勇者のソロモンだ。勇者でもソロモンでも好きに呼べ。」
勇者達全員の自己紹介が終わり、俺が頑張って名前を覚えようとしていると、アナが、
「それで?あんたの名前は?」
その言葉に俺は少し呆気に取られていたが当たり前かと思って、
「俺は賢者で良い。何百年も生きてる内に名前は忘れたからな。」
俺がそう言うとアナ達は呆れていたが、勇者はもう待ち切れないとばかりに身を乗り出して、
「で、俺が担当するのは何なんだ?五大技術はもう既に担当者が出ているが。」
勇者は俺にそう聞いてきて、俺は少し溜めてから、ようやく口を開いた。
「お前に担当してもらうのは基礎魔力技術と………『竜器』の扱いだ。」
勇者達は呆気にとられて呆然としていた。




