第3話 弟子入り
僕は思考能力が止まったまま椅子に座らされ、目の前には大人の人が作ったであろう料理が浮いたまま運ばれてきてどんどん机の上に置かれて行く。
「まだ混乱しているだろうし、とりあえず飯にしよう。」
机の上が料理でいっぱいになると別の部屋から大人の人がでてきて、僕の対面に座ってたくさんある料理を食べ始めた。僕がいつも通りじっと待っていると、大人の人が不思議そうに言ってきた。
「どうした?はやく食べろ。それとも何か苦手なものがあったか?」
僕は目の前に置かれた美味しそうな料理を前に胃がはやく食べろと言っているのを無視して手を付けずにいた。
「だって、僕はこんな料理を食べたらいけないし、これがいつも通りですから。」
大人の人が呆れたように僕を見た。次の瞬間何か思いついたかのような顔をしたあと、食事に使っていた食器を全て置いて食べるのを中断した。
「お前が食わないのなら、俺も食わん。俺を餓死させたくないのならお前も食べろ。」
「え、で、でも…」
僕がどうすれば良いのか迷っていると大人の人がまた食器を持って僕の口にねじ込んできた。僕はびっくりしながらも噛んでいくと久しぶりの食事だからか、もしくはここまで美味しい物を食べたことがないからか、僕はもう何も考えず近くにあった食器をとって一心不乱に食べ始めた。そんな僕を大人の人はまた、呆れたように見ていたけれどその顔には笑みが溢れていた。
僕はもう限界と言えるほど食べて動けなくなっていると、食べ終わったあとの食器を運んでいた大人の人が新しく飲み物が入っているだろうカップを2つ持ってきて1つを僕の目の前に置き、椅子に座ってからもう1つのカップを自分の口に運んだ。
「まず、俺のことは自由に呼べ。世間は俺のことを魔法使いや賢者と呼んでいる。が、俺はあまり好きではない。で、お前の名前は?さすがに名前ぐらいはあるだろう?」
「はい。僕の名前はナイダンです。それで、お、お師匠様、で良いでしょうか?」
僕が、少し恥ずかしながらも意を決して呼ぶと、お師匠様は顔をほころばせながら嬉しそうに
「俺はある程度の魔力操作技術ぐらいしか教えることはできん。が、それでも今よりも数十倍は強くなれるだろう。それと、俺の修行はだいぶきついらしいが、いけるか?」
僕はお師匠様に助けてもらった。倒れているところを救助してもらったし、あんなにも美味しい料理を食べさせてくれた。だから僕は強くなってお師匠様に恩返しをしたい。それに、僕だけの夢を見つけたい。そんな事を思いながら僕は真っ直ぐにお師匠様の目を見て
「はい!」
と返事をした。