第20話 脱獄
ドライアドの『使徒』に捕らえられてから数日が経過した。食事は出されたが毒が入っている可能性を考えて一切手をつけなかった。それに、僕には気になることがあった。エルフの里に蔓延している嫌な気が日が立つごとに『始祖返り』に巻き付いてきている。まるで僕等の力を求めているように。牢に入れられている僕はそこまでではないけれど、地上にいる『始祖返り』を中心に渦巻いているからかなり不快感があるはずなのに、微動だにしていない。そんな事を考えられる状態なのか、それとも何か特殊な事情があるのか。どんな状態なのか僕には分からないが何かに巻き込まれているなら僕は必ず助け出す。といっても牢屋から出なければ僕は何も出来ないし何も分からない。
「感知されるかもしれないけどやるしかないか。」
僕は見張りがいなくなったのを確認してから具現で僕と同じぐらいの大きさの人形をつくり、身代わりとしておく。暗い場所では見分け辛いだろうし、この時のために僕は見張りと一切話してこなかった。その次に僕が考案し、お師匠様と一緒に完成させた新しい魔力操作技術の一つ、『霧散』を使い建物をすり抜け誰にも見つからないように魔力を極力対外へ出さぬよう制限し、エルフの里から少し離れた場所に大きな木があるのを見つけ、その上で潜伏することにし、『始祖返り』と接触する機会を探っていた。
魔力による身体強化で聴力を強化し、数日間エルフと精霊種達の会話を聞いていた所、何やら三日後に特別な儀式があり、そこで『始祖』が直々に儀式をするということと、その儀式に『始祖返り』が利用されるのだろうということまでは情報が集まった。僕はその三日後についてお師匠様から聞いていた。その日は竜神様が消滅した日であり、戦争が終結し、最後の『始祖』が消滅した日であるらしい。それに合わせてする儀式に嫌な気をまとい続け既に器となっている『始祖返り』。僕は途轍もなく嫌な予感がしたが一先ずは儀式まで待っておくことにした。ほとんど確定で僕は『始祖返り』の子を助けにいくが、下手な行動をすればお師匠様や勇者さんにまで悪評が広まる可能性がある。僕はそれを考えなければならない。
どうやって『始祖返り』の子を助け出し、お師匠様達に悪評が広まらないように考え続けようやく纏まってきたと思えばついに明日にまで迫っていた。僕は明日の為に今出来る最大限の準備をしつつ、どのように儀式をぶち壊すかを考えながら寝た。




