第18話 ドライアド
僕は5年間の旅で鍛えられた気配を察知する能力で誰かが近づいてくるのに気づき目を覚ました。だけどその存在を僕の頭は否定していた。ここは世界樹の森の中であり、普通の人間は入る事は出来ず、勇者や聖女のような加護を受けた存在しか無条件で入ることは出来ない。僕は『始祖返り』の力で入ることは出来たが結界に閉じ込められてしまったのだ。だからこの結界に入ってこれるのは『始祖返り』等の特殊な存在しか入ってこれない筈だったが、僕はとある存在を忘れていた。
「結界に捕らえられた人間がいるからと見に来てみれば、まさか竜の『始祖返り』とは。」
僕の前に出てきたのは木と一体化したような外見と、少し透けて向こうを見ることが出来る半透明な体を持った精霊種の中でも森にしかいないというドライアドであり、精霊種の『使徒』であった。僕が忘れていた、結界に出入り出来る存在である術者でもある。
「そう言う貴方は精霊種の『使徒』なのにどうしてこんなところに?」
僕が最悪の想定をしながらも臆せず質問をすると、ドライアドの『使徒』は何かが可笑しく感じたのか、微笑しながらも振り向き手をかざすと結界が一部解け、向こうが見えるようになった。
「心配せずとも貴方と戦う気はありません。貴方からは勇者様の気配も感じますので私がじきじきに出迎えに来たのです。」
『使徒』はそう言いながら僕についてくるよう促し結界の先へと歩いていく。僕は置いていかれないようにすぐにその後を歩いていき結界を越えた瞬間空気が変わったのが分かった。今までは狙われているような視線を感じていたが、結界を越えると世界樹に近づいたからか辺りに神聖な気配が漂っている。
「貴方はどうして人間である僕を森の中に迎え入れたのですか?」
あまりにも簡単に入れすぎて胡散臭く感じてきて、聞いてみると『使徒』は無言のまま歩き続け、会話をする気がないのか、それとも切羽詰まった事情があるのか今までよりも速度をあげ、僕はそれについていきながらも幾度となく質問をしていく。だが、どのような質問をしても『使徒』は何も喋らずにただただ歩いていくだけ。僕がそれを不審に思い離れようとすると、急に口を開いた。
「貴方と戦う気はありません。何せ戦いはもう終わっているのですから。」
僕はそれを聞きながらすぐさま離れても、もう遅かったようで、僕を捕まえるように地面から根が伸びてきて僕を縛り、僕は身動きを取ることが出来なくなり、かろうじて喋ることが出来る程度であり、抵抗することも出来なくなった。




