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第1話 崩壊

遙か大昔に、始祖竜と呼ばれる神様のような存在がいた。竜神は自身の8柱の始祖と言われる配下とともに大陸を治め、人間、エルフ、ドワーフなどの種族とともに穏やかなに過ごしていた。だが、そんな平和もたった一つの出来事により、大きく崩れ去ることになる。そう、竜神の消滅である。始祖は嘆き、哀しみ、そして激怒した。始祖が始祖を襲い、それに呼応するかのように他の種族も戦争を始めた。平和そのものであった地は見る影もなく、そこにあるのは戦争により流れる血と滅びた廃墟のみであった。大陸全土を巻き込み戦火を広げた戦争はおよそ数百年続き、最後に残った2柱の始祖が相討ちし戦争は終結した。そうして竜神を含めた9始祖は滅び、自らの血筋と始祖の力が封じられた武具、『竜器』をこの世に残した。

そんな世界に僕、ナイダンは生まれた。だけど、僕はあろうことか『始祖返り』してしまったのだ。力も魔力もあった。いや、ありすぎてしまった。だからか、僕は『異質』として村では嫌われていた。森に囲まれ、近くには小さな川が流れている自然豊かな村だったけど僕にはそれが僕を逃さないようにする檻に見えた。村の人たちは僕をいないように扱い、僕を穢らわしい存在として、僕と家族が暮らす家にも近寄らなくなった。それだけならばまだ良かった。いくら村の人たちに酷い扱いをされようと家族がいれば良かった。けれど、世界は非情で残酷だと思い知った。僕が産まれてすぐはとても優しかった。いくら家ごと嫌われていようと僕に寄り添ってくれた。でも、弟が産まれてからは違った。両親は弟ばかりを溺愛し、僕には目もくれなくなった。それでも僕は我慢した。だって僕の居場所はここしかないのだから。この家以外には僕を置いてくれる家はないのだから。僕はずっとそう思っていた。そんな境遇のまま数年が過ぎ、オーガが来た。かつて、始祖の一柱鬼人の配下であり、人間とはかけ離れた膂力を持ち、その力から放たれる攻撃は人の身体なんて簡単に破壊する。僕達が気づいたのはほとんど村が壊滅してからだった。僕は必死になって家を守った。家がなくなってしまえば、僕はもう生きていけないから。家族の前に立ち、『始祖返り』の力を使い、村を襲った数体のオーガを全滅させた。家を守れて喜んでいた僕に生き残った村の人は「もっと早くにその力を使っていれば」や「化け物め!」と罵声をかけた。そんな空気に僕は耐えられなかった。僕が守ったはずなのに。僕がいたおかげで助かったはずなのに。そんな言葉が僕の頭にぐるぐると渦巻き、感情がごちゃ混ぜになり、爆発した。僕は残った力を暴走させてしまい、一夜にして村は崩壊した。僕は村の残骸をあとに歩き出した。何の目的もなく、行くあてもなく彷徨い続けた。何日歩き続けただろうか。そんなのも分からなくなり、僕は森の中で倒れた。

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