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その鳥は存在するのか ~スマホに映る鳥たちは本物なのか? そして、どこへ導くのか~

作者: konoha

季節はまだ冬。



 部屋の中はまだエアコンが効いてなく、少しひんやりとしている。温かくなるまでもう少しかかるようだ。


 その中で私はくつろぎながら、かじかむ手でスマホをいじっていた。


 アプリストアを何気なく見ていたら、かわいい鳥のイラストのアイコンが目に入った。



 私はさっそくそのアプリの説明を読む。


 『これはARアプリです。スマホのカメラを外に向けると、画面に鳥が表示されます。そして、この鳥たちは生きているように動きます』


 と言うわけで、画面をタッチしてダウンロードした。



 ダウンロードの進捗バーが伸びている間、私は下のほうにある補足の説明を見ていた。


 『ARとは仮想現実の情報を現実世界に重ね合わせて表示して、現実を拡張する技術の事である』




 ダウンロードが終わり、アプリを起動させる。スマホを持ちあげて、窓から外へ向けると画面内に鳥がいた。もちろん、現実の外には鳥はいない。


 頭部が白色で、目の後ろに黒い斑点がある。数は10羽ほどいるだろうか。画面に映っていると言えばいいのか。



 私は外に出て、スマホを空にかざしてみたが、さっきの鳥たちはいなかった。どこにいったのだろうと、あちこちの方向へスマホをかざした。


 どうやら、反対側にいたようだ。鳥たちは上昇気流に乗って、ふわ~っと飛んでいる。


 しばらく見ていると、どこかへ去っていった。ねぐらへ帰ったのだろうか。




 翌日、登校中にスマホを外にかざしてみたが、とくに鳥は映っていなかった。


 お昼休み、友達とお弁当を食べているときに、何気にスマホを外へ向けてかざしてみたら、鳥たちが映っていた。


「えっ、どこいくの? 食べている途中よ」


 私は友達の言葉など、気にせず外へ向かった。


 どうやら、鳥たちは校庭まで降りてきたようだ。


 私はしゃがんで、スマホを地面に向けた。それに気づいたのか、鳥たちもこちらへ寄ってきた。



 キーンコーンカーンコーン



 午後の授業が始まってしまう。私は鳥たちとの別れを惜しみながら、教室へ戻った。


 授業中、私は鳥たちのことが気になって、そわそわしていた。


 そうこうしているうちに授業が終わって、私は下駄箱へ向かった。



「一緒に帰ろう」


「いや。今日は一人で帰る」


 私は友達との誘いにのらずに、スマホをかざしながら、鳥たちを探した。

 

 しばらくアプリを使っていると、鳥たちもだいぶ私に慣れたのか、ついてこいとばかりに鳥たちが時々後ろを見ながら、私をどこかへ案内した。


 私が今まで行ったことのない公園や河川に鳥たちは連れて行ってくれた。



 今日も私は、友達をそっちのけで鳥たちと遊んだ。



 しかし、しばらく経ったある日、ぱたりと鳥たちは来なくなった。


 私ががっかりしていると、友達は言った。


「あれは渡り鳥だったんだよ。子育てをするために外国へ行ったんだよ」


「スマホばかり見てないで、私たちと遊ぼうよ」



 鳥たちは本当に子育てのために飛び去ったんだろうか。それとも、いつまでも鳥とばかり遊んでいてはいけないと思い去っていったのだろうか。


 いずれにしても、私は鳥たちだけではなく、人との交流も大事にしないといけないと、窓の外を見ながら思った。




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