カイン
タイトルからお察しのように。今回もカインパートです!
「待て、それ以上は言わないでくれ。はぁ〜、少し気分を変える。少し出かけよう、マドレーヌ」
「は、はい。承知しました」
「あと、トライアも呼んできてくれ。今回は3人で出よう」
そして、街の中・・
「トライア、働き始めてまだ2日目だが。皆の反応を見ていると、仲良くは出来ているようで良かった」
「は、はい!皆、優しくて助かってますニャ!」
トライアが笑顔で返事をする反面、心では(よ、よかったー。昨日、忍び込んだことがバレてて、呼び出されたのかと思いました〜)とホッと胸を撫で下ろしていた。
「フッ、そりゃあ・・皆、優秀だからな。トライアも初日の調子で行けば、半年もしない内に同等になれるだろう」
「あ、ありがとうございますニャ」
今まで一度も翔とコスモス以外の人に褒められても、見向きもしなかったトライアが少しだけ、ほほ笑みを浮かべた。
そして、トライアが顔を背けている間に・・
「あの・・カイン様。気のせいかもしれませんが、誰かにつけられてませんか?」
「んっ?言われてみればそうだな」
2人は一切振り返ることなく、気配だけで察し。会話を続ける。
「それも2・・4人くらいの気配だ。そのうちの3人は足音やらを隠しているみたいだが。一人だけ、気配の隠し方も雑なのがいるようだ」
「流石ですね、カイン様。それで、いかが致しますか?しばらく歩いても続けるようなら、対処を」
「いや、いい。町中で騒動を起こすわけにはいかない」
相手の強さが不確定な分、3人でやり合えば被害が出ることは確実だ。
「・・昨日、トライアからスリに出くわしたと聞いたのですが」
「そのことについては別に気にしてはいない。僕の力があれば、撃退くらいなら!」
カインの能力は前にも披露したが、能力は引力。そして、斥力も合わせ持っている。
「そうですよね。私達から仕掛けるのはやめておきましょうか」
「ああ。とりあえず、店にでも入ろう。せっかくの息抜きだ!お茶とケーキでも嗜んで、やり過ごすとするか」
そして、引き続き店まで歩いている時だった。
「カイン様!」
突然、後ろから走り出してきた存在の目の前にマドレーヌが立ちふさがる。
「ちっ!鋭いな」
「って、子供?」
子供はマドレーヌのことをジッと睨みつけている。
「この子・・昨日もカイン様の取ろうとした子と同じです」
「何回取ろうとしても、別に怒ったりはしない。一応、想像はついているが、理由を聞かせてくれ」
カインはしゃがみ込み、少年と同じ目線に合わせた。
「お前がカインだろ。俺の父さんと一緒に反乱を起こしたの・・そして、失敗した。でも、何でお前だけ、貴族になっているんだ!」
「・・返す言葉もないな。全て言われて当然のことだ」
カイン自身も全て分かっていた。
仲間を裏切って、王の側についてしまったことも。
「ですが、カイン様は精一杯!」
「マドレーヌ、いい。失敗したことに変わりはない」
「フンッ、そんな善人ぶったって、関係・・・もういい!」
子供は、背中を向け、一切振り返る素振りを見せることなく、走り去って行ってしまった。
それから、3分くらい歩き、喫茶店の目の前にたどり着いた。
「着いたはいいが。まだ誰かがついてきているな。それも今も、そこの路地から気配を感じる」
「とりあえず、入っちゃいましょうか。そこで、どうするか考えましょう」
マドレーヌがそう提案する。
「ああ!そうしようか」
喫茶店の中は、大通り側がガラス張りで海が見えるようになっている。景観も抜群の、この星の人気店の一つ。
席はもうすぐ昼になるからか、2組分くらいしか空いていないくらい人でいっぱいだ。
「はぁ、どうしましょうか」
「許可さえいただければ、僕が対処してもいいですニャ!」
トライアはやる気満々の表情を見せるが・・
「駄目だ。そんな危険な目に合わせるわけにはいかない」
「は,はい。分かりましたニャ。う〜ん、他になにか案は・・」
「なら、このまま歩き、人気のないところまで誘導。そして、僕たち3人で相手をするってのはどうだ!」




