任務終了
「大丈夫?!翔」
破壊された壁から、コスモスがヒョイッと姿を表した。
「んっ?もう、ほとんど片付いた?」
研究員1人だけが突っ立って、呆然と私のことを見ている。
そして。下を見ると3人もの研究員が横たわり、機械の部品もバラバラに飛び散っている。
「まぁな、もうすぐ終わるところだったけど。もう、体力が限界だ。正直、来てくれたのは、とても助かる!」
「ふふっ。とりあえず、お疲れ!翔は、休んでて・・とは言っても、もう残ってるのは、一人だけみたい」
もうある程度の情報も集まったし。あとは、倉庫みたいなここを調べるだけかな?
「どういうことだ!20体ものロボを送り込んだはず、それも最新型を!」
「そんなに強くなかったよ。全員、魔法弾を打ってきたり。炎の剣を振り回してるだけだもん」
まぁ、一般の兵士や魔道士からしてみたら、あの量は脅威でしかないと思うけど・・。私も空間バリアがなかったら、即死だったと思う。
「なっ!」
「だって、私。空間魔法の使い手だから。って言えば皆、分かるみたいだけど」
私がそう言った瞬間・・
研究員の顔色が明らかに青ざめた表情になり、「うっ!」と叫び声を我慢したかのような声を出すと、その場に倒れ込んでしまった。
「もう、そこまでビビることないのに」
とりあえず、下まで移動して・・
「翔、大丈夫?もう、ピンチなら呼んでって言ったのに!」
「流石のコスモスも30体を相手は、きつい可能性もあったから。それに、俺もやれるところまでは頑張りたかったしな」
「・・・ありがとう、気づかってくれて。言われて気づいたけど、私も30体はきつい可能性もあるかもしれない。だって、どれだけの量を喰らえば、私の空間バリアが壊されるか分からないもん」
あのリヴィアの攻撃を何分も喰らい続けていたら、おそらく壊されて。急所を貫かれて、死んでいたかもしれない。
「なら、前にも言ったけど。俺のことも、ちゃんと頼ってくれよ!」
「ごめん、翔も強くなったもんね。この散らばった部品を見れば、そうだよね」
私みたいに、攻撃を喰らうわけにはいかないのに、ここまでやり合えてる視点で。もう心配しすぎる必要はないよね。
そのあと、20秒くらい沈黙が続いたが。
「そ、それで、翔の方は何かあった?」
このまま、突っ立っているわけにはいかないし。この気まずい雰囲気をどうにかしないと。
「いや、何も。でも、戦闘が終わり次第、ここの倉庫を調べる予定だった」
私とは違い、戸惑うことなく、翔は普通に返事を返してくれた。
「なら、早いところ調べちゃおう。それと、私の方も物的な情報源は何も見つからなかった。ただ、山のところと同じような薬品とかレポートが転がっていただけ」
まぁ、レポートだけは回収したけど。そんなに進展はない気がする。
「そうだったのか。でも、この部屋には何かある気がする」
「それは私も思った。じゃあ、さっさと調べちゃおう!」
そして、30分後・・宇宙船内、会議室。
「はぁ〜、疲れた!」
荷物もまたできちゃったから、ワープホールを使うことになっちゃったけど。
魔力にまだまだ、余裕はあるし、大丈夫だよね?!
「まだ、マリアナたちは戻ってきてないみたいだな。俺は休もうと思う。コスモスはどうする?」
「う〜ん、私も部屋でゆっくりしようかな。その前に、私達が帰ってきてることを知らせるためにも。荷物はここに置きっぱなしにしておこうよ!」
「それは、いい考えだな」
私が荷物を持ち上げ、デスクにわかりやすく並べようとした時だった。
「あっ、帰ってたんだ。おかえり!どうだった?」
会議室の扉がスーッと開き、いつも通りの元気な声のキラナが入ってきた。
「詳しいことは、マリアナ達が帰ってからにするけど。いい知らせがあるよ!」
「そうなの!良かった〜!・・それと今さらだけど、翔。その腕の傷、大丈夫?塗り薬か何か、持ってきたほうが良いかな?」
キラナが心配そうに、腕を見つめている。
「なら、私が持ってくるよ!翔は待ってて!」
一方で、2時間前のカインの屋敷内・・
「いる?入ってきても、大丈夫だよ」
ノエルがそう言うと。
部屋の通気口から、猫の姿のトライアがヒョイッと飛び降りた。
「広くは・・ないようですね」
資料庫は、背が高めの本棚が12個くらい並んでいるくらいだった。
「私もここに入るのは久しぶりだから、虱潰しに探すしかないね。そこまで、時間はかからないと思うけど」
二手に分かれ、本棚を一つ一つ丁寧に調べていき・・
15分後。
「とりあえず、何かがありそうな本はこのくらいかな?」
「そうですね。それと、一つ気になる本がありまして・・これなのですが」
トライアが持ってきたのは、心理学の本。
2人が本を開き、大まかな目次を確認すると。人の心を読むことではなく、自分自身の心を読まれにくくする方に焦点が当てられていた。
「あっ!よく考えてみれば、確かにお兄様は。王と話している時、表情も声調も変わることはなかった。まるで、ロボットみたいに」
「これは、集めた歴史関係以外にも情報源になりそうな本がありそうですね」
「だね。時間はかかるけど、ちゃんとやらないと・・とりあえず、今回は本の分別だけやっちゃおう」
本自体さえ選んでしまえば、あとは部屋でこっそり読むこともできる。
という判断をノエルはしていた。
「でも、そんなに本数は持っていけませんからね。バレる可能性も高まりますから」
「大丈夫。ちゃんと、分かってるよ」




