盤面
「ヴァイスも見たか?この段ボールの中身のことだが・・」
「ああ!今見ているところだが。その半分くらいが我らでも持ってて良いのかわからないくらいの危険物だな」
ヴァイスが黒い手袋ごしで持ち、一つ一つラベルを確認していく。
「だろうな。ファイルを見る限り、実際に人体実験は行われていることは判明している。それに、キラナからも聞いたが、ノルデイア・・か」
「どうした?そこも元々行く予定だっただろ」
「そうだが・・それにだ・・!」
マリアナはファイルをじっと見つめながら、何かを言おうとしたが。
「それなら、問題ないだろう。早めにノエルとやらの依頼を解決して、向かった方が得策いいと、我は考ているが」
「それで問題ないだろう!それと、話が変わるが。証拠が出揃ってきたのはいいが、そこからどうするべきか悩んでいるのだが。何か、案はあるか?ヴァイス」
マリアナがそう尋ねると、ほんの5秒くらい考え込み・・
「確実に成功するわけではないが、言わせてもらおう。まずは、カインが行ったように、今度は我ら名義で反乱を起こすのはどうだ?」
「う〜む、なるほど・・それは確かにありだな。その上、ノエルの話とファイルの情報通りなら。カイン自身もこの期に乗じて反乱に参加してくる可能性が高いだろうな」
「よし、意見が合致したなら。準備を急ぐとしようか」
1時間後、カインの屋敷では。
パーティが行われたテーブルの上には、空になったワイン瓶が十数本置かれていた。
「カイン様?」
ミーナがカインの肩を揺さぶる。
「う〜ん?何だ?」
眠た目な瞳を見せ、スースーと鼻息を漏らすだけだ。
「もう飲み過ぎですよ。それに、今回は6本も!」
「カイン様って、意外と酒豪なんですかニャ?」
少しだけ頬を赤らめたトライアが尋ねる。
「フフッ、まぁ酒豪かもしれませんね。トライアの方は、ほんのグラス3杯飲んだだけで、そんなに赤くしちゃって!」
「あんまり飲んだことがなくて、ニャ!そ、それで。カイン様は・・・」
「このまま私が。部屋まで持ち上げて、そのまま休んでもらおうと思ってる。トライアも今日は休んで。パーティーの主役に片付けをお願いするのは・・ね!」と言い、笑顔でウィンクを見せる。
「でも・・」
「いいから!ほら、今日は休んで」
「わ、分かったニャ!ありがとうございますニャ」
トライアはミーナに深く礼をすると、部屋に戻ることにした。
バサッとベッドに寝転がる。
「もう少ししたら、翔様に電話しましょうか(は〜、早く翔様の声が聞きたい。あっ、そういえば、お風呂には入らなくて良いのでしょうか?)」
毛布から顔を上げ、部屋をキョロキョロと見渡す。
「あっ!」
部屋の右隅にシャワールーム、と扉にアルファベットで書かれている。
「まぁ、今の内に入っちゃいましょうか!」
トライアがメイド服を脱ごうと、手を伸ばしたときだった・・
「ねぇ、トライア・・いる?入るよ!」
扉の向こうから、ノエルの声が聞こえてきた。
「は、はい・・ニャ!」
咄嗟に服を脱ぐ手を止め、ベッドに腰掛ける。
「もう兄様は眠っちゃったし。他の皆もあと1時間くらいしたら、作業も終わるはずです。なので、今日の行動について、話しておこうと思って」
そう言いながら、ノエルは部屋にある椅子に座った。
「何か、心当たりはあるのですかニャ?僕なら、猫の姿になることで、見つからないように移動はできますが」
「兄様の仕事部屋に・・う〜ん、意外と兄様の寝室に何かがある可能性はあるかもしれませんが。寝ている兄様の横で捜索は無謀。どうしよう」
ノエルが頭を抱え、一生懸命に頭を働かす。
「それなら、今から翔様達に連絡をしようと思いますニャ。 そこで話し合いましょうニャ」
トライアはそう提案すると、腕輪を操作し、目の前に映像を映し出した。
「聞こえるか。そっちで何か、分かったことはあるか?私達の方は報告すべきことが山程あるが。全て言う時間はないな。後で重要な部分のデータを送ろう」
「はい。僕達の方は今から捜索をするところですニャ(翔様は?翔様、早く来てください!)」
トライアは顔を平然を装う。
が、足と尻尾は激しく動いている。
「その捜索で。仕事部屋や資料庫、兄様の寝室など。色々と案はあるのですが・・はあるのですが・・どう動けばいいか分からなくて。少し知恵を貸してもらいたくて・・」
「それは構わない・・その前にだ。資料庫は、誰でも入れるのか?」
「い、いえ。兄様とメイド長のマドレーヌ。そして、一応私もです」
「それなら・・そこに革新をつける書物がある可能性が高いだろう。そこに行ってくれ。他のメイドが寝静まった後、部屋に入れば問題ないはずだ。セキュリティでも仕掛けられてない限りだが」
モニターの先でマリアナが最後の部分を強調して、そう言った。
「セキュリティですか?機械は何も仕掛けられてないですよ。ただ、特徴的な作りとして、窓は一切配置されておりません。あと、換気のための通気口が2箇所です。もちろん、人は通ることはできません」
「なら、問題ない。気をつけて行ってきてくれ」




