会談
数年前・・
「報告します・・西地区の戦闘部隊が全滅寸前。その上、支援部隊の3割が捕らえられたもよう。北区は未だ戦闘が続いています」
男が膝をついて、説明をする。
「状況は把握した」
冷静な低い声で返事が男に返される。
「あの・・これから、私達はどうすれば。全メンバーの半数以上が負傷もしくは戦死。食料と武器の残数もギリギリです」
「分かっている。(北区が落ちれば、もう勝てる可能性はゼロに近く・・いや、勝てないだろう。クソッ、あのバケモン剣士め!)もう、僕が行くしかないみたいだ」
「リーダーが来てくれれば、心強いでしょうが。ですが!・・」
男が声を荒げようとしたのを、
「もう僕が出ないと、後がないのは分かるだろう?」と冷静に止める。
「確かにそうかもしれません。(それでも・・)」
「なら、僕はいち早く向かうとする。お前達は妹を見ていてくれ」
そう言い終えると、
現代、カイン家屋敷・・。
「それで、この件についてだが・・カイン殿、聞いているのか!ボーッとしているが」
トライアと離れた後、カインは王と会議を行っていた。
「はっ!す、すみません」
「しっかりしてくれ。もう一度、聞くが。あれらの場所の管理はどうだ?我の方でも、定期的に見させに行かせてはいるが」
王は荘厳な空気を身にまといながら、淡々と話す。
「それが今、少し問題が発生しまして。僕の権限を用いて、山の封鎖をしました。一応、新聞社にも連絡を取り、封鎖の事情の拡散は完了しています」
「メイドや執事から、そんな話を聞いた覚えはある。たしか・・スルヴァが理由と聞いたが。何か問題が発生したのか?そうだと、我は予想するが」
「はい、王の予想通りですが。実験は順調に進んでいます。そして、あと少しで一段落つきそうだった為、封鎖を予定していたのですが」
「・・・」
王は黙って、カインの説明を聞き続ける。
「新聞の記載通り、失敗作のスルヴァが2体脱走したとの報告があったため、封鎖を早めました。・・」
「そうか、対処はできるのか?」
王は全く焦る様子を見せることなく、冷静にカインに返事を返した。
「はい。いくつか手立ては立っています。こちらで何とか出来ます」
「なら、我の援助は不要だな」
フゥと軽く息を付き、出されていた紅茶を飲み干した。
「怒ってないのですか?脱走事件を起こしてしまったのに」
カインが丁寧に尋ねる。
「研究が順調という吉報があるからだ。それだけで、大抵のことは許せる」
「ありがとうございます」
「フッ。それでは、これで。我は失礼する」
そう言うと、振り返ることなく。そのまま部屋を出ていった。
3分後・・
「はぁ〜、もう入っていいぞ。マドレーヌ、ミーナ」
「大丈夫ですか?カイン様・・」
疲れ切った表情をしているカインを2人は精一杯気遣う。
「ああ!それで、話が変わるが。準備は終わったのか、もう少しで夕食の時間だが」
「はい!もうほとんど終わりました。フフッ、懐かしいですね。私もあの時はかなりたのしかったですもの」
ミーナは手を重ね、ニコッと微笑む。
「だな・・」
「カイン様はお先に席について、お待ち下さい。ノエル様とトライアも呼んできますので」
「そうさせてもらおう。よろしく頼んだ」
部屋を離れたマドレーヌとミーナは、会話をしながら2人の場所へと向かう
「カイン様。王と会うときだけ、何だか・・怖いと言うか。少し、負のオーラが出ていると言うか」
ミーナが、たどたどしくも話し始める。
「そのことね。ミーナも端的な情報はカイン様自身から聞いたはずでしょ」
「うん」
ミーナはボソッとそう呟き、軽く頷いた。
「でも、詳しい事は知らないよね?」
「えっ、知ってるの?」
はっ、と大きな口を開けて、俯いていた顔をマドレーヌに向ける。
「まあね、当事者だから。ミーナになら、言ってもいいけど。今日だけじゃ話しきれないかも」
「当事者・・そうだったの!?うん、話して」
「落ち着いて、ちゃんと話すから」




