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カインとトライア−2

「十分、カイン様はお強いと思いますがニャ・・」

「まだ全然だ。このくらいでは・・いや、今はいい。で、それでだ。君、なぜ、スリなんかを?服装からして、食うには困っては無さそうだが」

カインが少年を掴んでいる手をパッと離す。

「うわっ!痛てっ!」

トライアから見ても、別に普通の服装をしているのが分かる。服のどこも破けてないし、体に傷があるわけではない。

「お前らみたいな。上の人間に言うつもりはない!」

少年が尻餅をつきながら、二人のことを睨みつけている。

「はぁ〜。ほら、手を貸すから、まずは、起き上・・」

「フンッ」

カインが差し伸ばした手を振り払うと、立ち上がりそのまま走り去ってしまった。

「待てっ!」

「追いかけましょうか?」

トライアが再び、スタートダッシュの構えを取るが。

「いや、いい。財布は手元にある。それに、中身も確認したが、流石にあの短時間では取られてはなかったようだ。・・貴族という立場に立っている以上、慈悲をかけ、理解への努力をし続けることが重要だ」

「なら、良かったですが・・こういう事って、よく起こるんですかニャ?」

「頻繁に・・ではないが。たまに噂が耳に入って来る程度だな。だが、話によれば、加害者は全員。貧相な見た目をしていると聞く」

「ですが、さっきの少年は・・」

トライアは顎に手を当て、冷静に話し始めようとしたが。

「今、この話はやめておこう。屋敷に戻ったら、必ず話す!とりあえず、買い物を始めようか」

「はい!(僕もこれ以上、暗い話はしたくないです。明るい話に持っていかなければ・・)」


同時刻。

コスモスとキラナは・・。

「とりあえず、麓には着いたね!」

ここが登山口であってるよね?封鎖って言う割には見張りが一人も居ない。金属バリケードは設置されてるけど。

「普通にスルヴァが凶暴だからじゃない?見張りが死んじゃう可能性だってあるしね」

「なるほど。でも、こんなバリケードだけで防げるの?」

それも、設置されてるのは、人間用の登山口だけ。

山の斜面を滑り降りてきたら・・なんて可能性は考慮してないのかな?

「そこまでは、私には分からないな〜。でも、私達でやっつけてさえしまえば、問題ないでしょ」

キラナが胸を張り、自信ありげにそう言う。

「ま!早く行こう。こんな壁くらい、飛び超えられるじ!」

足に力を入れ、思いっ切り、ジャンプ!

バリケードには触れないように、体を回転させて・・

よっ!着地!

「こんなもんかな?キラナは・・あ〜。『浮遊』が使えるんだっけ?」

「まぁね。『浮遊』!」

キラナが中に浮かび上がり、スカートをゆらゆらさせながら、ゆっくり壁を超えてきている。

「私も早く使えるようになりたいな」

「コスモスのセンスなら、全然使いこなせるようになると思うよ!」

私の肩をつつきながら、励ましてくれている。

まぁ、何でも練習あるのみか・・


「そういえば、キラナも空間魔法の使い手に出会ったんだよね?もしかして、そんなに空間魔法って、希少じゃない?」

他にもヴァイスも出会ってるらしいし、少なくとも3人・・いや、今は2人だけど

「そうじゃないみたいだよ。私も詳しく知らないけど。本の内容的には・・大昔、空間魔法を得意とする一族が宇宙に幅を利かせていたみたい。そして、その一族の子供たちを宇宙中に戦争の兵士や移動手段などの利用目的で売り飛ばされていた・・って、書いてあったよ」

じゃあ、その子孫が今でも生き残っていて・・って認識であってるかな?

「それもあるかもしてないけど。そんなケースは極稀だと思うよ」

「じゃあ、他にどんな理由が・・!」

「簡単な話、機械を利用してるだけって話。私が腕輪を使って、宇宙船にワープで戻ってるのを見れば分かるでしょ〜?」

確かに!

マリアナも翔も、空間魔法が使えないのに、ワープだけは出来てるし。いつでも、どこへでも・・って言うわけではないけど

「んっ?そういえば、さっき。その一族の子孫の可能性は低いって言ってたけど、何で?」

私の頭脳で考えられるとすれば、9割以上が滅んだからかな?

「正しい情報は今でも分かってないけど。世間ではそうだと、認識されてるよ」

「分かってない?文献とかも一切無いの?・・いや、見つかってないから、そう判断されてるんだよね」

「確かに見つかってないね。真相を知りたいけど、無理だろうね。あっ!」

キラナが大きな声を上げ、上を指差している。

私も上を見上げてみると・・黒い何かが浮遊して、移動していた。

「あれが、スルヴァ?」

「うん。こっちには気づいてないみた・・ちょっと待っ!」

「『開口(オープン)』!まずは、この剣で」

まずは、スルヴァの真後ろまでワープして。

例の紅い剣を取り出し・・思いっ切り振る!


剣がスルヴァの体を切り裂いた瞬間、その傷口から突如、炎が燃え盛り出した。

「わっ!」

咄嗟にバリアを発動させた。

危ない、少しでも遅れてたら、私も火傷してた

「言い忘れていたけど、その剣。近距離で使うときは要注意ね」

「早く言ってよ」

「ごめ〜ん。でも、コスモスなら、空間魔法でどうにかなるかな?って思ったから」

キラナが頭に手を当て、テヘへと照れ笑いしている。

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