新たな方針−3
「あの・・もう一つ調べてほしい場所があるんです」
「もう一つ?どこだ?」
「それは、この国の廃墟や空き家を手当たり次第、調べてくれませんか?もちろん、あまり目立たないようにですが」
前に攻め入った場所も空き家だったもんね。
調べる価値は全然ある。
「分かった。それも視野に入れておこう。いくつか場所は分かってるのか?」
「心当たりは無いですが。あまりひ人がいない場所など・・地図で示しましょうか?」
「ああ、頼んだ!」
マリアナが頼むと、ノエルは黙って、手荷物の中から地図を取り出した。
ちゃんと用意してるなんて、よほど事態は深刻なんだろう。
「ここと・・ここです」
ノエルは、北東と街から少し距離が離れた場所を指さした。
「確かに、隠れるにはうってつけの立地だが。行ってみるまでは分からないな」
う〜ん、捜索時は私も行った方がいいのかな?
また、強敵がいたら危ないし。
なんて、考えているうちに・・
「準備が整いました」
トライアが画面内に戻ってきた。
「準備が出来たようだ。座標か地図で場所さえ教えてくれれば、ワープを作ることもできるが」
「でしたら、この場所でお願いします」
「分かった・・座標は・・」
前にもワープする時は、座標が必要って言ってた気がする。
私達の学会室や宇宙船にワープする時は、目印が設置されてるから、いらないけど。
「見ただけで分かるの?マリアナ」
「ああ!ワープの座標は、宇宙船が中心となっている。宇宙船の場所はここだからな」
「流石、マリアナ!」
座標まで分かるなんて、私もちゃんと勉強しないと・・
「まぁ、多少の1日2くらいの誤差は生まれるがな」
そう言い、私から目を逸らし、腕を組む。
恥ずかしがってるのかな?猫耳が少しピクピクしてるし。
「分かったぞ!今、トライアに座標を送った。もう切ってもいいぞ」
「はい!」
トライアが笑顔で手を振りながら、そう言った瞬間、プツリとモニターが消え去った。
「すぐに目的地に着くはずだ。ノエルもそろそろ戻ったら、どうだ?」
「そうですね。一応、連絡先は置いていきますので。緊急時はこちらから連絡しますね」
ノエルが椅子から立ち上がり、連作先が書かれたメモを机にポンッと置き、家から去っていった。
「さて・・もう兵士達も去ったはずだ。一度、宇宙船に戻るとしよう」
「もう降りてきてくれていいよ。ありがとう、ルーシー!」
ルーシー達3人がゆっくりと階段を降りてくる。
う〜ん、やっぱり。ノエルと話をするためとはいえ、ルーシー達に上の階に居てもらったのは申し訳なかったよね。
「はぁ〜。バレるかと思った」
ルーシーの父がホッと安心しきった顔をしている。
そういえば、一瞬顔で疑われかけてたよね。
逆にバレてたら・・としても、ノエルなら見逃してくれそう感はあるけど・・
「とりあえず、この本は私達で調べさせてもらう」
「ああ!何なら、もう持っていってくれても良い。もし、家宅捜索されても無いものは無いで済んだほうがいいから」
もう、ヒヤヒヤするのは嫌みたいだ。
確かに、彼の立場からすれば、まだまだ疑われる側だし。
その原因は早めに取り除きたいよね。
「いいんだな?もう、返せと言われても返せないぞ」
マリアナが強く鋭い口調でそう言った。
確かに・・もし、私達がこの星を去った後に返してくれと言われても、返しに行けないもんね。
だからこその最後の確認なんだろう。
「ああ!構わない!」
一秒の間もなく、応えが返ってきた。
上の階に居た時に、もう割り切っていたのだろう。
「分かった!なら、お邪魔した!もう来ることもおそらく無いだろう」
本を返しに来る必要も無くなったんだよね。
もう会えないとなると、少しだけ・・寂しい感じがする。
でも、かなり情報を得れた。予想外の出来事もあったけど。
「じゃあね!ルーシー!」
キラナが満面の笑みで手を振っている。
出会ったのって、ほんの数時間前なのに。もう仲良くなっているのは凄いな〜。
そんな微笑ましい光景を眺めながら、ワープのボタンをタップした。
ワープを使い、宇宙船内部まで数秒足らずで帰還!
空間魔法に適応できたからか分からないけど。
もう、頭がふらつくすることも無くなった!
「ヴァイス!どこだ!」
マリアナが声を張り上げるが・・
「ここにいるぞ!」
と、すぐ後ろから、返事が返ってきた。
「後ろに居たのか。あまり驚かさないでくれ!」
本当にびっくりしたのか。少しだけ、汗を掻いている。
「別に驚かすつもりはない。それより、兵士から聞き出した情報はまとめてある。もちろん、記憶は消した上で、もう街に帰したぞ」
「仕事が早いな、ヴァイス。その資料は後で読ませてもらうとして・・とりあえず、この本を片付けるとする」
まぁ、私は直接関係なさそうだし・・魔法の本を読み進めるよう!
二人が話している隙を見て、急ぎ足で図書室へ向かう。
一方で、トライアは・・
「ここでいいのでしょうか?」
トライアは路地で辺りを見渡しながら、オドオドしているところだったが。
「トライア・・さんですか?」
「はい!あなたがノエルさんですね。えっと・・なんと呼べばいいでしょうか?」
「私のことは、普通にノエルでいいですよ」
「分かりました、ノエル様。これから、数日間よろしくお願いします!」




