新たな方針−2
「心配しなくて良い、翔様。トライアなら、大丈夫だ。強さに関しても、申し分ない」
「一応、トライアの意見も聞こう!」
まぁ・・本人の意見ってやつか。
大事だよね。
「分かった、翔様。繋ぐとしよう」
腕輪をポンポンっと、慣れた手つきで操作している。
「はい、何でしょう?マリアナさん」
トライアがひょこっと、モニターに映り込んできた。
直接、宇宙船に繋いだのかな?
「トライア、提案がある」
「何でしょう?」
不思議そうな顔で首をかしげている。
「カインのメイドとして、潜入できるか?」
「えっ?せ、説明をお願いします」
そりゃそうか。
まだ、説明してないもんね
「なるほど。状況は分かりましたが・・私としては、翔様以外の人に仕えるのは嫌なんですが・・う〜ん」
トライアが腕を組んで、悩みに悩んでいる。
「仕方が無い・・トライア」
「な、何でしょうか?翔様?」
「頼む!やってくれ!」
翔もとうとう認めることにしたみたい。
「翔様がそう言うなら・・分かりました。詳しい説明をお願いします」
「説明だが。今から、詳細は考えるところだ」
そうか。まだ、考えていないもんね。
「まずは、ノエル。どうやって、メイドとして連れて行くかだが・・」
「私が他の貴族から貰ったっていう話にするのはどうでしょうか」
ノエルはかなり有名な貴族だし・・そういうこともあり得なくはないか
「いいかもね」
私は賛成。
「よし、それでいこう」
あれ、もういいの?
絶対、私がオッケーしたからだよね?
「あとは、一応。屋敷内での話とか必要じゃない?」
「そうだな。ノエル頼んだ!」
はい!と言い、ノエルが淡々と重要なことを並べていく。
「まずは、私の屋敷にはあと、メイドが4人います。一応・・来た時にはメイド長の指示に従ってください」
メイド長ね。なんか・・いろんな意味で力、持ってそう。
「メイド長か・・どんな人物だ?」
「彼女は、とっても優しくて、仕事も完璧にこなす優秀な人ですよ。まぁ、戦闘だけは本人としては苦手なようです。私は・・見た限り、そうは思いませんけど」
強さは未知数。
強いのか弱いのかも分からない・・
「一応、警戒しといた方がいいかも」
「そうだな。次だが、何かルール的なものはあるか?」
「特に無いです。メイド長の指示に従っていれば、問題ないですよ」
「分かりました。それと、何かキャラ作りはしたほうがいいでしょうか?」
モニター先のトライアが質問をする。
キャラ作りね。
そのままで行ったら、ボロが出る可能性もあるからだろう
「う〜ん。でしたら、猫族なので、語尾にニャンをつけて欲しいです。私、猫を飼いたかったんです」
「「「えっ!」」」
私も翔もトライアも同時に声をあげてしまった。
かなりの注文だから仕方がなくはあるけど。
「えっと・・本当にやらなくちゃ駄目ですか?」
絶対にやりたくないのも十分に理解できるし。共感もできる。
「お願い・・します」
ノエルが少しうつむき、トライアの方をじっと見つめている。
「はぁ〜。分かりました。(本当は翔様にやりたかったのに)」
「やった。ありがとうございます」
ノエルがニコニコの笑顔で喜んでいる。
相当、嬉しそうだ。
「それでだ。いつ、トライアを向かわせればいい?」
「今から私の館に荷物をまとめて、来てもらう。っていうのはどうですか?」
「えっ!今すぐですか?」
トライアが驚き、大きな声を出してしまっている。
それは、私も急すぎると思う。
「その方が、今私が出かけてることの理由付けにもなると思いまして」
「確かにそうだが・・大丈夫か?トライア、行けるか?」
「わ、分かりました。すぐに荷物をまとめます!」
トライアが慌てながら、モニター前から消えていった。
「なぁ、一応、時間がある時。夜とか、俺と繋ぐことはできるかな?ノエル・・さん」
「多分、出来ますよ。私達の屋敷はメイドはそれぞれ広くはないですが、部屋を与えられるので」
ノエルとカインって、やっぱりかなり上のレベルの貴族なんだろう
普通、部屋があるのはメイド長くらいで、他は共用部屋みたいなイメージが強いからな〜。
「なら、いいか。絶対に、さみしいと思うから。ちゃんと、毎日会話できるのはうれしい」
「んっ?トライアさんの飼い主って、まさか・・」
「そうだ!」
「ほ、本当に申し訳ございません。無茶な要求してしまって」
ノエルが机にスレスレまで頭を下げている。
まぁ、飼い主の目の前で、ニャンをつけてくれってお願いをしたと思うと・・そうなるよね。
「そこまで謝らなくてもいいんだけど。とりあえず、顔をあげてくれ」
「は、はい」
申し訳無さそうな表情で翔のことを見つめている。
「とりあえず、潜入期間中、大事に見てくれ」
「もちろんです!」
そう言い、精一杯の笑顔でうなづいている。
「ちゃんと、キャットフードも・・って、人型だから関係ないか。それと、睡眠も・・屋敷って、何時に睡眠時間なんだ!」
「大体10時くらいですね。メイド長は11時、12時まで動いているようですが」
「う〜ん。だとしたら、絶対に何時間かは昼寝するな」
猫の本性がそのまま残ってるとしたら、睡眠時間は12時間は必要だもんね。
「それは・・まぁ、お兄様に説明すれば、大丈夫でしょう」
他に話すべきことってあるかな・・あっ!
「そういえば、トライアが潜入している間、私達は何をしようか?」
「いつでも、行けるように魔法を極めるのはどうだ?まだまだ、本は残ってるんだろ」
そういえば、そうだった。
あそこにある本のうち、基礎はマスターしないといけないんだった。
「まっ!強くなれる分には問題ないよね」
とりあえず、身につけたいのは。
浮遊と、回復系かな。
怪我しても、すぐに癒やすことでいくらでも戦闘し続けられるし。
あとは飛べたほうが戦いも有利に進められるし。




