未知の世界
いつも通りの時間に目を覚まし、学校まで向かう。
本当に、夢で言われた事が起こるのかな?
学校に到着し、いつも通りの講座を受ける。
今日は講義中、眠くもならなかったな。
そして、午後12時過ぎ。
私達は、すぐに学生会室に向かうことにした。
「本当に、誰か来るのか?」
翔がそんなことをボヤきながら、ソファーに寝転がった、その時だった。
「ねぇ、翔。外から物音しなかった?」
「したか?」
「したよ・・多分!」
それに、物音は窓の外から聞こえた気がするし・・
「ニャ!」
「誰・・・!んっ?猫?」
窓の方を見ると、白黒の猫が窓を必死に叩いている。
「開けてあげた方がいいよね?」
「そうだな!」
窓のロックを素早く解除し、ガラガラと開け、風が入り込んでくると。
猫がヒョイッと部屋の中に入ってきた。
「ニャ〜!」
近くでよく見ると、ミニカバンを背負っている。いかにも、猫用くらいの小さなバックだ。
「ニャ〜ニャ〜!」
開けろって、言ってるのかな?
「なんか背負ってるな・・開けてみるか?」
「待って!まだ、少し・・」
翔にそう言い始めた頃には、とうに翔は開封してしまっていた。
「中には、これが入ってた」
「んっ?これって・・」
電子レコーダーだ。
映像付きで、メッセージを残せる機械。
2年前に開発されたやつだけど、少し見た目が違う?聞いたことがないけど、こっそり新型が出されたのかな?
「押すよ、はい、ポチッ!」
また、勝手に翔が押してしまった。
全くもう!爆弾だったら、どうするの?可能性はゼロじゃないんだし。
ボタンを押すと、見覚えのある人物が映し出された。
「私の名前は、マリアナという」
あっ!夢に出てくるあの黒髪の女性だ。
「この通信で、メッセージを残しても良かったが・・とりあえず、詳しいことは、私達の方に来てもらってからということでだ!今から5秒後に自動転送システムが起動する。さらに、このプログラムの解除は不可能だ」
「えっ!ま、待って!」
何言ってるの?
「ちょっと待っ!」
二人が唖然としている間に、目の前が真っ白に光りだしたが。
その直後には、視界は真っ黒・・。
意識はある。隣で翔の声もはっきり聞こえる。
けど、何も見えない。
1分くらい経ったのかな、徐々に視界に光が戻ってきた。
でも、そこは学生会室ではなくなっていた。
真っ白な天井に壁・・ここはどこ?
私と翔がボーとしていると・・
「後ろだ」
何度も聞いたあの声だ。
振り返ると、軍服を着た人物が堂々と立っている。
髪、耳、尻尾・・同一人物。
本当に、こんなファンタジー本やアニメでしか見たことないような人?がいるんだ。
正直、かなりかっこいい。
「マリアナさん?」
「私にさん付けは不要だ。逆に私が敬意を払わなければいけない、コスモス様」
「えっ?」
どういうこと?
「訳が分からないのは、分かっている。ちゃんと説明はさせてもらう。その前に・・出てきてくれ」
横の白い建物から、一人の人?が出てきた。
んっ?誰?
「僕のことが分かりますか?翔様!」
見たことあるようなないような。でも、はっきり知らないとは言えない。
「えっ!」
真っ先に声を上げたのは、翔。
一瞬分からなかった。でも、私にも、ようやく分かった。
「トライア!」
赤と青のオッドアイ、白色の耳。トライアだ、多分。
「流石ですね!翔様にコスモス様」
トライアがフフッと笑って微笑んでいる。
「色々気になることがあると思うが、まず、話を聞いてくれ。コスモス様、翔様」
そう言い、マリアナが話し始めた。
「まず、この場所は、地球から遠く離れた星、ルーミエル。まぁ、この星に住民はいない、ただの衛星みたいなものだ。そして、その星に着陸した宇宙船の中だ!」
聞いたことはない星だ
おそらく、ここはもう天の川銀河ではない。それだけは分かる。
まるで、ファンタジーの世界に来たみたいだ・・いや、来たのかもしれない!
それに今、私達は宇宙船の中にいる!
「それで、なぜ私達が?」
「それは・・答える前に、一つ質問をさせてもらう。コスモス様は、宇宙には他にも人がいるということを信じるか?」
「えっ?宇宙人?いや、信じるしかない・・よね。今、目の前にいるんだし」
それだな、と言っているかのように、翔もうなづいている。
「信じてくれるなら、話は早い。今・・いや、少し先に未来に地球を含めた星々に危機が訪れる。私の師匠の予言によればだけどな。私自身も半信半疑ではあるが、可能性がある以上は行動するしかない」
「その告げた人物はどこにいるんだ?」
確かにそれは気になる。
「ミラグリッドという名前の星にいる。いつか会う機会は来るはずだ。詳しくはその時に紹介させてもらう。まぁ、近くを通ったら、寄る予定ではあるが」
なるほど、すこ〜しだけ胡散臭さはあるけど・・
今は信用するしかない。
嘘をついている顔はしていないし。
「話の大半は終了だが、質問はあるか?コスモス様、翔様」
聞きたいことは山程だ。
何から聞こうか?
というより、質問が出てこない。
「トライアに聞きたいんだけど。そもそも、なぜ人型に?前々から、その姿になれたのか?あと、その・・なんだ・・その敬語は慣れないな」
翔が先に質問をした。
「フフッ!飼い主である翔様に敬意を払うのは、飼われてる身としては当たり前ですよ。・・さて、質問の答を申し上げますと、今、この力を得たばかりですよ。ですが、前々から、マリアナさんとは交流はありました。それに、いつでも、猫型に戻ることも可能ですよ」
便利な能力だ。
「いつの間に?」
「翔様が学校に行かれてる間にです。話をしているときは、お互い猫の姿ですけど」
なるほどね。
周囲に聞かれたとしても、ニャーニャーと猫が会話しているようにしか聞こえない。だから、なんの違和感もない光景ってことか。
「大体の話はわかったけど、私達はどうすれば?」
私達に戦う力は・・ないわけではない。地球人の中では、強いほうだと思うけど。
それが地球外でも通用するのかどうか?99%・・いや、絶対に通用しないと断言できる。
それを分かったうえで頼んできてるはず・・マリアナには何か考えがあるんだろう
「あれを持ってきてくれ、トライア!」
あれって、何だろう?
数分後
トライアが、奥から2つの腕輪?みたいなものを取ってきた。
「これで合ってるでしょうか?」
「ああ!この2つの腕輪をそれぞれ1つずつはめてくれ!これには、それぞれ能力が秘められている。それぞれ・・」
1つ目の腕輪は、空間を操る力が込められている。
なんか、とても強そうな能力・・でも、扱うのが難しそう
2つ目は、全部の属性を操れる能力が込められている。
火、水、雷、風、土、氷の6属性らしい。
これも、かなり強そう。どんな相手にでも対抗手段が見出せそうだし
「コスモス様には、空間を操る方をつけてもらいます」
トライアがそう言うと、腕輪をこっちに渡してきた。
これって腕輪というより、バンドに近いよね。大きさを調節できる部分があるし・・って。
「えっ、私がこっち?」
「コスモス様は、記憶力がいい上に、素質もある・・こっちの方がいいと思っただけだ。こっちは覚えることが多いからな」
確かに昔から記憶力には自信あるけど・・何で、良い方だって、知ってるんだろう。
翔がトライアにその事について話しかけたりしてたのかな?
それとも、彼女の言う預言者から聞いたのかも!預言者って言うくらいだから、大抵のことは知りつくしてそう!
「つけてみてください。ですが、その前に一つ。この腕輪の力は強力のため、最低でも3時間は眠ってしまうかもしれません。と、マリアナさんが」
えっ?
でも、たしかに能力から考えてみるに、その代償?は妥当ではある。
だとしても、大丈夫だろうか
「大丈夫・・(だよね)」
断る理由はないし、やるしかない。
「じゃあ、こっちに来てください」
マリアナが後ろを振り向いて、来い、って言っている。
奥でするって、大層な儀式でもするのだろうか?
「翔様は、こちらを。こちらの方は代償みたいなのはありません。ただ、慣れが必要なだけです。翔様なら、すぐに使いこなせると思いますよ!」
「あ、あと。やっぱり、様付けはやめてくれないか、トライア。普通に翔でいいよ」
翔はどうも気難しい雰囲気が苦手だ。
馴れ馴れしく接することができる方が良い。
「ですが。翔様は翔様なので。飼い主様に馴れ馴れしく接することなんて、できませんよ」
トライアの意志は強いみたいだ。それが翔にも伝わったのか。
「まぁ、いいか。トライア、それを」
翔も状況を理解しきれてはいない。
でも、受け入れるしかない。
「どうぞ、お好きなところに身に着けてください」
「分かった」
翔は腕輪の大きさを調節し、腕に通した。
約3時間後。
「目を覚ました、大丈夫か。コスモス」
翔がこちらを覗き込んでいる。
その横で、マリアナが私を見下ろしている。
「う、うん。まだ、少し・・頭がぼーっとしているけど」
何だろう・・変な感覚。
頭がぼやぼやする。
宇宙の星々が思い浮かんできた。
これ本当に危ないやつだ。また、寝といたほうがいいのかな?
「無理に起き上がらないほうが。座りながら聞いてください。その力のさらなる能力詳細を説明します」
その話、今頭に入ってくるかな?
少し長い話だった。
聞き取れた、覚えている部分をまとめてみると・・
まず、一点と一点を繋げる事ができる。
そして、この腕輪内に空間の座標情報が記録されている。
その一点から、ものを引き寄せることも可能らしい。
さらに、空間を実体化させて、盾にすることもできる。
まさに、ゲームやアニメのチートみたいな能力だ。
「強いな、いいな〜、コスモス」
「それと、その腕輪ですが、3日経てば、基礎が体に染み込み、使いこなせるようになるようにできています」
なるほど、3日間・・
それが終われば、実質、無双状態ってこと。だよね?
「でも、何で3日?それにどういう仕組み?」
「それはですね。マリアナさんの話によれば、前の持ち主の力がそのまま引き継がれる。という感じらしいですよ。自身の力を子孫や後世に残したい者がよく使用するらしいですよ」
前の持ち主ね・・誰だろう?
「でも、3日で基礎部分ってことは・・」
「はい!流石、コスモス様。察しが良いですね。基礎部分をマスターできた後は、その力を使って、徐々に慣らすだけらしいです!」
そんなに甘くはないよね。
とりあえず、使いこなせるように頑張ろう!
「それで、これからどうするの?マリアナ」
「この宇宙船を使って、移動します」
「でも、この私の能力を使えば、宇宙船なんて必要ないんじゃ」
「いや、その空間移動はかなり力を使います。それも、移動距離が多ければ多いほど。星と星の移動となれば、なおさらです。その力は地球に戻るときだけ、使う方が良いでしょう。コスモス様」
その瞬間、ふと、学校のことを思い出したが。
学校の必須授業は受けてきたから、何かあったとしても今日は大丈夫。
このまま、出発しよう。
それに、いつでも帰ることができるし。
ー宇宙船1階ー
宇宙船の廊下に出てみたけど、想像通り、かなり広く、部屋も沢山ある。
「そうだ!紹介すべき仲間が2人いる。ついてきてくれ」
マリアナがそう言うと、長い廊下を歩き出した。
道中、5つくらいの扉を通り過ぎて、ようやくたどり着いた。
「ここだ。おーい、いるか」
マリアナがそう言い、ドアをノックしようとした。
「んっ?何?ふぁ~、眠たい」
目を擦りながら、可愛らしい声の女の子が出てきた。
白が主体で、水、黄、桃色に所々染めたカラフルな髪をして、白いジャケットを着ている。
「ほら!言ってた二人の協力者だ」
ここはまず、自己紹介だよね。
「私の名前は、コスモス」
「俺の名前は、霧嶺 翔」
悪い印象は持たれないはず
「2人がマリアナさんが言ってた人?よろしくね。名前は、キラナって、言うんだよ」
元気がある子だ。
可愛い。翔もそう思っているはず。
「今、少し子供っぽいって、思ったでしょ?」
少しだけ・・いや、思った。
「やっぱり、当たってるみたいね。ちゃんと、地球人も表情と感情は、マッチしているみたいね」
「んっ?心を読めるの?」
ファンタジーみたいな世界に来てるのだから、そんなことがあっても不思議ではない。
「ううん。違うよ。ただ読心術を学んだだけ。学んでいるうちに、相手の思考を読めるようになったの」
凄い才能だ。
「じゃあ、俺が今、考えていることが分かる?」
横で翔がからかうように、キラナにそう言葉を投げかけた。
翔には、こういう少し意地悪なところがある。そこも嫌いにはなれないんだけど。いや、私が慣れているだけかな。
今、翔が何を考えているか・・私には分かる。答えは、何も考えていない・・って、私が考えていることも読まれているんじゃ?
「何も考えていない・・合ってる?」
やっぱり読まれてた?
「当たりだ。凄いな、キラナ・・さん?ちゃん?どう呼べば?」
「それほどでも。それと、呼び捨てでいいよ」
その時・・。
「はぁ〜、なんだ?騒がしいな?キラナ、誰と話しているんだ?」
隣の部屋から、少し身長高めの男が出てきた。
年齢は、25歳くらいだろう。
この人がもう一人の協力者だろう。




