カインー4
その後、すぐに翔を部屋まで呼び戻し、最終的な結論を出すことにした。
「翔様、状況報告を頼む」
って、マリアナが聞いているけど、翔に答えることができるのかな?
翔って、私以上に作戦を立てることに向いているとは思わないし。
「状況報告か・・(ねぇ、コスモス。何を言えばいいんだ?)」
翔は私にこっそり小声で聞いてきた。
やっぱり、分かってなかった。
「(兵士の人数とか・・装備とか。構成とかも)」
「(なるほど!)まず、人数は約15人」
15人、だとしたら少ないほうだよね。
「意外と少ないな」
マリアナもそう感じたようだ。
「装備は・・多分、普通の甲冑だと思うけど」
「見た目は普通でも魔法防具の可能性もあるが・・見た目に違いがないってことは、そこまで大した防具ではないな」
なるほど。
強い防具は見た目に分かりやすい変化があるってことね。
「それと、構成は・・兵士が村を囲んでいた。人数が少ない分、隙間は生まれていたけど」
「やはり、そう来るか!」
包囲は無難な策だと、私自身でも思う。
でも、こんなに少ない人数でしてくるなんて・・リヴィアを倒した私達に対する策とは思えない。
やっぱり、私の案は外れだったのかな?
「どうした?コスモス様」
「えっ!えっと・・」
外れかもしれないけど、言ってみることにした。
「もしかしたら。敵の狙いは私達だと思ってたんだけど」
「何っ!」
マリアナが驚いた表情をしている。
かなりの見当違いなことだったかな?
「多分、違うと思うけど」
「いや・・その可能性は全然ありえる。マズイな。これを見落としていたとは・・」
えっ!当たってた?
「でも、私達が狙いなら、あまりにも手薄すぎない?」
キラナの考えも十分に理解できる。
なんなら、私も最初はそう思ってた。
「そう思われても仕方がありませんね」
えっ?
後ろの扉から一度どこかで聞いたような声がした。
その声のする方向に恐る恐る振り向いてみる。
「ノエル?何でここに?」
最初に問いかけたのはキラナだった。
「誰だ?キラナ、知り合いか?」
そうか、マリアナは会ってないもんね。
「まぁね。歴史館に行った時にたまたま会ったんだよね」
「あの時は、かなり楽しかったですよ」
ノエルがニコリと微笑む。
何か企んでいるような笑みではない・・のが私にも分かる。
キラナもあんまり疑っていないようだし
「ノエルさん。それで、何でここに?」
話を進めないと、昔話(とは言っても、ほんの数日前の事だけど)をしている場合じゃない
「少しコスモスさん達に話があってきました。コスモスさんとキラナさんにだけ話をするはずだったのですが」
「私が邪魔なら一旦出ていくが。別に後で話を報告してもらえば済むからな」
「いえ、別に大丈夫ですよ。一緒に話を聞いて下さい」
ノエルが落ち着いた口調でそう言っている。
普段の私なら疑い続けているけど。今の私はノエルに対して、一切の疑いが持てない。
さっきも思ったけど、嘘を付いている目をしていない。
「分かった、とりあえず座って話そう。いいですよね、ルーシーのお父さん」
「わ、分かった。どうぞ、ノエル様!」
「んっ?どこかで見たような顔を・・あっ!」
ノエルは貴族の一人。王宮の騎士くらい会っていてもおかしくはないけど・・って。
バレたらマズイかな?盗んだ相手が眼の前にいるわけだし
「んっ?どうしたの?」
「いえ・・何でも」
んっ?バレてない?
まぁ、兵士なんて山ほどいるわけだし、一人ひとりの顔なんて覚えていないよね
「それで、話って?」
「その前に、兵士さんと・・申し訳ないのですが、この家の住民の3人も外してくれませんか?」
「はっ!それでは、失礼します」
兵士が礼をし、颯爽と部屋を離れていった。
「わ、分かりました。では、2階にでも行っておきます」
「では、早速本題に入ります。私に協力してください!」
「協力?何に?」
「こう言えば、早いでしょう。私の名前は、ノエル・ナイツフォード。そして、お兄様の名前がカインです。」
えっ!
確かにノエルも貴族の服を着ているけど・・
「そうか・・だが。自ら、来たってことは、よほど重大なことなのだろう」
「はい・・単刀直入に言います。お兄様を助けてください」
助ける?どういうこと?
マリアナの話から考えたら、カインはかなりの犯罪者っていう認識しかないけど。
「詳しく説明してくれ!」
「はい、実は、お兄様はこの国の王に操られています」
「操られている?『操作』の魔法でか?」
『操作』・・魅了魔法みたいな精神に干渉できる魔法かな?
なんて考えていたら、キラナが私の服の裾を引っ張り、頷いている。
あっ!合ってるんだ。
「いえ、そういうわけではありません」
「じゃあ、何だ・・」
マリアナの声量がかなり高くなってきている。
止めないと・・
「私の考えを話すと、カイン・・ノエルのお兄さんは王に弱みを握られているとか?」
まぁ、多分、違うでしょ。もっと奥深い何かがあるはず・・
「はい、おそらく・・いえ、確実にそうです」
「確かにその可能性もあったか。流石の考察力だな、コスモス様」
また当たってた?
別に大体こうだろうな、っていう事を言っただけなんだけど。
「コスモスの推察力は、昔から変わってないよな。ゲーム・・」
翔がゲームの話を持ち出そうとしている。
話を逸らさないと・・ゲームの知識だけで考えたことがバレる。
「まぁね。一つの可能性を言ってみたら、たまたま当たってただけだよ」
そう言いはぐらかすことに成功した・・よね。
まぁ、嘘はついてないし。
「3人は、この国で昔反乱が起こったのは知って・・いますよね」
「歴史館で一緒に見たからね。覚えているよ。民衆が起こしたけど、結局敗北に終わってしまった。って、言ってたやつだよね?」
それ以外に知っているのは無いし。
「私もコスモス様から聞いた上・・いや、何でもない。とりあえず、反乱の詳しい説明は不要だ」
「分かりました。詳しい説明に入りますが、その反乱のリーダーを努めていたのが、お兄様でした」
一応、予想通りの始まり方ではある。
あとは、 今の現状・・助けるにしても。
作戦を立てるには、さらに詳しい情報が必要。




