星を眺めて
「は〜い、おかわりだよ」
翔から、餌の分量も教えてもらってるから、大丈夫。
「ニャーン!」
新しく入れた餌にまた飛びつき出した。
ホントに可愛い!
私も猫飼おうかな?別に、私、一軒家だし、いいよね。
「ゆっくりでいいんだよ。私達もまだまだ食べるし」
「にゃおーん!」
そして、更に、10分後・・
さてさて・・お待ちかねの星を見る時間が来た!
風はゆるやかに吹いていて、周囲の草花がゆらゆらと、なびいている。
星を見るには最適の環境が整っている。
「じゃあ、私から見るね!」
持ってきた望遠鏡を設置し、レンズをそっと覗きこむと。
澄みきった夜空に、こと座のベガが青白く輝いていた。そのすぐ隣には、わし座のアルタイルが静かに瞬いている。
「次は、俺ね」
翔も見たそうに後ろでウズウズしている。
「分かってるよ〜」
まだまだ見ていたいけど。
あと2分くらいで一旦代わってあげようかな。
「は〜い。翔のばんね!」
そう言い、レンズから目を離した瞬間・・
「ニャーン!」
テントからトライアが歩いてきている。
トライアも星みたいのかな?
「トライアも見る?」
「ニャン!」
表情からして多分、うん!と言っているだろう。
トライアを抱えて、レンズに目を当てるように近づける。
「ニャ〜?ニャーン!」
一瞬、首を傾げたように見えたけど。そのすぐ後に、今まで聞いた中で一番可愛らしい声で鳴いた。
何故かわからないけど、目が星の反射ではないのが分かるくらいキラキラしてるようにも見える。
やっぱり、猫にもこの素晴らしさと綺麗さは伝わるのかな?
「きれい?トライア!」
「・・・」
返事が返ってこない。
それどころか、私が抱えている力を押し切って、さらにレンズに近づこうとしている。
「おーい!トライア!聞いてる?」
「ニャ?ニャン!」
やっと、返事が返ってきた。
「トライア、どう・・わっ!」
とライアが手元からピョンッと飛び降りて、私と翔の周りをクルクル回りだした。
そして、5周ほどした後、テントの中に戻っていってしまった。
また、寝に行ったのかな?まぁ、時間も遅いし仕方がないよね。
「もう飽きたのか?・・まぁ、楽しかったならいいか。じゃあ、俺の番ね」
いつも通り、星を眺め続けて20分後・・。
「もうそろそろ、寝るか、ふぁぁ・・」
翔がそう言いながら、大きなあくびをしている。
「もうそんな時間?明日は休みだし、少しくらい遅くてもいいんじゃ?」
「そうかもしれないけど・・俺も眠い、し」
翔の言葉がたどたどしくなってきている。
まぁ、私はまだ大丈夫・・じゃないかも
「あくびをしているのを見てると、私も眠気が・・」
私も一気に睡魔が襲いかかってきた。
毎回テントは中サイズのドームが一つ。
全然、ギュウギュウって、わけではないけど。
最初だけは、少しだけドキドキしたな〜。懐かしい。
テントに入り込むと・・
端のほうで、毛布にくるまりながら、トライアがスヤスヤと気持ち良さそうに眠っていた。
「はぁ〜俺も!」
翔も倒れ込むように毛布にくるまりだした。
私も疲れた・・
それに続き、私はゆっくりと寝転び、毛布をかぶった。
「はぁ〜」
外の爽やかだが、涼しい風と毛布の生暖かさが丁度マッチしている。かなり気持ちよく眠れ・・そ・・
「見つけました。ご主人・・」
あれ?夢?もう寝ちゃった?
それにしても、またこの夢・・
真っ白な空間の中で、毎度おなじみの人物のシルエットが話しかけてきている。まるで直接、意識に語りかけてくるように。
「私の名前は、マ・・。詳しいことは、そうだな・・学校・・会室に2日後・・う。私が来たら、窓を開・・くれ」
「どうやって、来るの?それとも、私たちの学校の学生?」
「いいえ。ですが、分か・・ず」
「はっ!」
私は毛布を投げ出す勢いで飛び起きた。
あれ・・
耳を澄ますと外からは、小鳥のさえずりが聴こえ、テントの隙間からは陽光がかすかに入り込んでいる。
そして、横を見ると、翔が気持ち良さそうにスースーと寝ている。
もう、朝のようだ。
「ん〜、どうしたんだ?」
「ご、ごめん。起こしちゃつた?」
「いや、大丈夫。それで、どうしたんだ?」
「う、うん・・」
また同じような夢を見た。
でも、いつもより鮮明だった、と見たことをそのまま話した。
その夢を翔も見ていたようだ。
「・・っていう事を言ってた」
夢で言われたことで、聞き取れたことを、翔にそのまま話した。
そういえば、この話をテントの中で改めてしようとしたけど、寝てしまったんだっけ。
「オレも似たようなことを言われた。でも、名前の最初の文字はト,だったような?」
「見た目が違うのだから、名前が違うのも当たり前よね」
「それはそうだけど。学校のどこだ?コスモスの予想は?」
う〜ん・・確信はないけど。すぐに思い立ったところはあった。
それは。
「多分、自治会室じゃないかな」
「なるほど、確かに言われてみれば。じゃあ、2日後まで待つしかないな」
翔の言う通りかも。
細かいことは、その時に明らかになるはず。
どれだけ考えても、分かるわけがない。
とりあえず、テントを片付けよう。
2人で協力して、手っ取り早く車に積み込んだ。
「ニャ〜?」
どうしたの?とでも言っているかのように、トライアが首を傾げている。
「んっ?どうしたの?」
「ニャー!」
私、まだあの夢について考えている。
そして、それが顔に出ちゃってた?
「ごめんごめん。ちゃっと考え事してて」
そう言い、トライアの頭を撫でる。
「おーい!コスモス、トライア、発進するぞ。早く乗って!」
「わかった!行くよ、トライア」
私は、トライアを抱えて、助手席に座った。
車を走らせ、帰る最中。
ブーブーとスマホのバイブ音が鳴り出した。
私のスマホだ。
番号は・・会長だ。
「はい、もしもし!」
「よっ!コスモス」
この爽やかな声、久しぶりに聞いた。
「会長、何の用ですか?」
「あっ!今、めんどくさいなぁ、って思った?」
やばい、バレた?
「いや、思ってないです」
「まぁ、いいけど・・一週間後、出張から帰るから、何かお土産はいるか?」
帰ってきてくれるんだ。
あっ、でも・・。
「えっと、翔。1週間後、会長が帰ってくるらしい。何かお土産はいるか、だって」
「分かった、う〜ん・・食べ物系だったなんでもいい。上手いものよろしくって、伝えて」
私もそれでいいか。
「それじゃあ、食べ物系でお願いします」
「オッケー!楽しみに待ってろよ。じゃあ、また1週間後に!」
そう言い終わると共に、電話が切れた。
「やっと、帰ってくるのか」
「旅行の目的の8割が私情だけど。まぁ、私達だけでも、ちゃんと活動できてることの証明にはなるでしょ」
「そうだな」
そのまま、まっすぐ家に帰り、その日は解散した。
明日から、また学校。
そして、夢のことも明らかになる・・はず。
今は体を休めよう。