作戦開始
一方で、マリアナ達の様子は・・。
「準備はできたか?ヴァイス」
宇宙船の1階部分にマリアナの声が響く。
「ああ!攻防、完璧だ」
眼帯を付け、黒いマントを靡かせ、黒曜石色の鎧を身にまとう。そして、腕には白い包帯が軽く巻かれている。
これこそが、ヴァイスの真の戦闘服である。
「相変わらずの装備だな」
マリアナが呆れた表情をして、そう言った。
「わぁ!やっぱり、かっこいい」
キラナはマリアナとは反対に目をキラキラさせている。
「だろう!キラナには見る目があるな」
見た目の装備だが、実際は、かなり高品質な防具の一種である。
「そのくらいの知識はある。私は見た目に・・その・・何だ。いや、なんでもない」
「なら良い!早速、行くぞ」
ヴァイスは宇宙船の外に出ていこうとしている。
「あ!ヴァイスも腕輪の電源はオンにしといてよ。すぐに指示を出せるようにしたいから」
「了解した!念の為ってやつだな」
ニヤリと笑って、答えた。
そして、二人で城壁前までやってきたが・・。
「さて、どうするべきか?」
「ヴァイスのその服じゃ・・即取り押さえられるな」
ヴァイスは怪しさが、かなりあるが
マリアナの服装なら、不審者と疑われる可能性は、ほぼあり得ない。
「認めたくはないが、そうだな。壁でも、登るか?それとも、闇魔法で穴を空けるか?」
マリアナは少し、顎に手を当て、思考を巡らすが。
一方で・・。
ヴァイスは、手から黒い塊を出現させ、穴を開ける気満々の様子だ。
「いや、飛んで飛び越える。そして、中に入ったら、路地を通って、指定場所まで行く。というのはどうだ?」
「なるほど。なら、早速・・『浮遊』」
体を自由に浮かせることのできる魔法だ。
飛行距離は、使用者の魔力保有量に依存する。
「置いて行くな!『浮遊』!」
壁の反対側は、ちょうど住居が密集していて、かなり隠密に適していた。
2人は浮遊を解除し、スタッと地面に着地した。
「さて、キラナ。場所まで案内を頼んだ」
「は〜い!まずは、そこを真っすぐ行って!」
「そうしたいが。人がいる。どうする?我なら、不意打ちで眠らせられるが。もちろん殺しも傷もつけない」
キラナは、真っ先にその策に賛成した。
「私は・・いや、賛成だ。時間に遅れるわけにはいかない」
マリアナもしぶしぶ賛成した。
ヴァイスは特攻が遠慮なくできるようになり、喜びを隠しきれず、活き活きとしている。
「なら、ここで見ていろ!我の実力を。『ハイド・オブダーク』」
マリアナの目の前からヴァイスの姿が消え去った。
そして、3秒後・・。
「終わったぞ!マリアナ」
手を擦り合わせながら、余裕な表情を見せる。
「流石だな」
「褒めても何も出ないぞ」
10分後
「あと、そこを右に曲がったら着くよ」
「ああ!見張りは・・いないな」
正面に見張りはいない。
だが、話し声も聞こえない。
「本当に中にいるのか?」
「いることは確実だ。入るぞ、構えておけ」
「当たり前だ!」
ヴァイスとマリアナは腰の剣に手を置いた。
「さぁ、開戦だ!」
二人は同時に扉を蹴り破った。
ドカンと大きな轟音が路地内に響き渡る。
室内の正面に人はいない。
「2階か?」
二人が疑問に感じながら、足を踏み入れた瞬間だった。
目の前が突然、長い廊下に変わった
「んっ?創造魔法か!厄介なものを」
創造魔法は、機器さえあれば、誰にでも使えることが理論上は可能。
その個人の魔力を機器に込め、込めた分に比例して、空間を生成できる。
空間の設定もその機器で行える。
いわば、ダンジョン生成機である。
「キラナ!」
「駄目だな。繋がらない。通信は繋がらないようにされているな」
腕輪を起動させ、キラナと電話を試みるが、接続されない。
「この魔法の破り方、覚えているか?」
「それ、我に聞いているのか?当たり前だ。出口を探す、それだけだ」
ヴァイスが鼻を鳴らし、得意げに答えた。
「ちゃんと分かっているみたいで安心した。面倒だが、行くぞ。それと、敵との遭遇も想定しておけ」
「心配するな。いつでも、警戒はしている」
この生成機はモンスターもある程度設置できる。使用者が強ければだが。
「敵か?足音がする」
右の方から、ガチャガチャと奇妙な音がしている。
「この音はおそらく、スケルトンか」
「ただの骨か。我の敵ではないな」
角を曲がると、マリアナの予測通り、3体のスケルトンがいた。
「5秒・・『ダークフレア』」
ヴァイスがそう唱えると、手から青黒い炎がボッと音を上げて、浮かび上がった。
「燃えろ!」
その炎を正面に投げ入れる。
その瞬間、3体のスケルトンは燃え上がり、灰も残さずに消滅した。
「フンッ。1秒すらも耐えきれないか」
「ヴァイスが強いだけだ。それより、左に2体。足音がする」
「大体、出口は敵がいる方向って、相場は決まっているからな。我もこの機器を扱うならそうする」
空間生成機・・創造魔法を機械を通して、行える高密な機械。
購入するなら、かなりの高額を支払う必要がある。
込めた魔力量分だけ、広くでき、中の罠の設定も細かくできる。
空間魔法でも、ダンジョンに穴を開けることはできない。
基本、足止め用に用いられる。
今回は短くなってしまいました。続きを楽しみにしていた人には申し訳ないです。