キラナのやり方ー3
「お疲れ様だ、キラナ」
「ありがとう。それに中々に楽しかったよ・・あっ!」
キラナと目線が合った。
表情は拷問の時とは違う、いつも通りの笑顔をしている。
何を話せばいいんだろう。
「えっと・・お、おつかれ」
とりあえず、私もそう言っておくことにした。
「うん、ありがとう・・ごめんね。あんなところ見せちゃって」
キラナは顔を伏せて、低いトーンでそう言った。
「い、いや・・いいんだよ」
本当に何を話せば良いのか分からず、喉が詰まったように感じる。
「そ、それじゃあ、私はあいつの記憶を消してくる」
「お、俺は、部屋に戻ろうかな」
マリアナと翔も重い沈黙に耐えきられなくなったのか、部屋を出ていってしまった。
「あ、コスモスさん。・・こんな私だけど、また仲良くしてくれる?」
キラナが精一杯の笑顔でそう言った。
こんな笑顔で言われたら、断るつもりはないにしても、ノー、なんて言えるわけない。
「うん。もちろん。少し、怖かったけど」
「怖かった?本当にごめんね。」
「いいんだよ、謝らなくても・・私達も上に行こ!」
いつまでも、ここで話していても仕方がない。
上で、気分転換でもしよう。
「うん!」
そして、尋問側では。
「フンッ!相当、キラナにやられたみたいだな」
「見てたなら・・分かってるはずだろ」
男は弱々しく反論をする。
「まぁ、いい!キラナは聞かなかったが、カインについてどこまで知ってる?」
「言わないって言ったら?」
「まだ、そんな事言う元気があるのか?まぁ。安心しろ。私には拷問をする趣味はない。ただ、言葉で吐かせてやるだけだ」
マリアナは男をものすごい形相で見下ろした。
「少し強がってみただけだ。カインは・・噂では人体実験に関わっている。それに・・人間の臓器を売りさばいているということも聞いた。本当かどうか分からないがな」
「本当のことだ。これは裏取り証拠は入手できている。見たかったら、この場に持ってきてあげても、いい!どうせ、記憶は消させてもらうからな」
マリアナは落ち着いた表情と声でそう言い放った。
「別にいい。私はカインに直接会ったことはないが、正直気に入らない。市民はどうでもいいが、私の部下、同期まで実験のために連れて行かれた。私が組のリーダーになってからは失くしたがな」
「同情をする気はない。だが、奴が気に入らないなら、なぜ、すぐに吐かなかった」
「実は・・私の体には、魔法が刻まれている」
男が落ち着いた声でたどたどしくそう言った。
「どんな魔法だ」
「カインのことに関する情報を特定の3人以外に話してしまうと、死んでしまうんだ。あと・・5分後だろうな」
男はため息を交えながら、そう言った
「何!その魔法の種類は何だ?私であれば、解いてやることもできる」
マリアナは焦燥感に駆られたように、早口になってそう言った。
「この敵である私に慈悲をかけるのか?」
「慈悲ではない。ただ、お前からはまだまだ情報を聞きたい」
「単純に『支配魔法』だ。」
「分かった。『支配解除』これで大丈夫だ」
マリアナは手に魔法陣を出現させると、それを男の頭に近づけた。
すると、頭から紫色の魔力の塊が吸い寄せられた。
「これは封じ込めておかないとな」
塊を容器に押し込むと、蓋をキュッと厳重に締めた。
「ここは素直に礼を言わせてもらう」
「礼はいい!さぁ、続きを言ってくれ」
「分かった」
部屋の外では・・。
「終わったみたいだな。楽しかった顔してるな」
ヴァイスだ。
今はオフの状態だと姿勢から分かる。
「うん!」
「ヴァイスにも・・拷問の趣味があるなんてことはない・・よね」
恐る恐る聞いてみることにした。
「ない。敵は一瞬で倒すだけ」
苦しむ間もなく・・っていうことかな
「そうは言っても・・ヴァイスも戦うときは楽しんでるじゃん」
「いいだろ。結局は殺すんだ」
「はいはい」
キラナが適当な返事で流した。
「そういえば、コスモス。魔法や剣術の腕は上がったのか?」
ギクッ。
あんまり練習ができていない。
「その様子じゃ、あんまりのようだな。来い・・俺が修行してやる」
「今から?マリアナさん、来ちゃうよ」
たしかにそうかもしれない。
記憶処理をするだけなら、早く終わるはず。
でも、もう少し慣れておきたい。
「来たら、練習場にいると言っててくれ」
「まぁ、いいか!じゃあ、練習頑張ってね」
キラナは手を振りながら、上の階に戻っていった。
「じゃあ、行くぞ」
20分後・・
「んっ?コスモス様とヴァイスはどこだ?」
「下で練習中・・聞こえなかった?」
「あそこは防音効果が張られていたはずだ」
「そうだっけ」
キラナがキョトンと首を傾げた。
「そうだ。それにキラナからの要望だったはずだ!ヴァイスが夜に猛練習するから、眠れないから、防音効果を付与してほしい、って言ったのは」
「そうだったね」
ヘヘッと可愛い笑顔でそう言った。




