任務中−3
歴史館内には、何かの像や、ケースに保存された書物などが多く目に入る。
「こちらは王国内線時代の書類ですね。反乱軍からの提案書がこれです」
「提案書?反乱軍が不利だったっていう認識で合っていますか?」
大体、こういう書類を出すのは不利側だもんね。
有利なら、相手の事情なんて考えずに降伏するまで、攻めればいいもんね。
「そうです。反乱軍は停戦書を出しました。それを王国側は飲んだんですが、結局1ヶ月後、戦争は再開され、反乱軍は追い詰められ、降伏しました」
やっぱり、不利側の停戦なんて、余程のことがない限り、こうなる運命なんだろう
「これは?」
キラナが後ろにあった展示物を指さしている。
「あっ!これはですね。王国側の魔法部隊の隊長が使っていた魔導書と杖です」
両方ともボロボロになっている。
かなり使い込んでいたのもあるだろうし、戦火で傷ついたのもあるだろう。
「へぇ〜。デザインも中々に上品。特にこの赤と白の花のマークが綺麗!」
確かに魔導書の真ん中に大きく描かれている。
多分、この国の文様とかかな?
「いい所に目をつけましたね。この花はバラです。そして、これは王家を象徴する文様なんですよ」
「なるほど!薔薇って、美しいもんね」
「フフッ!そうですね!」
私達は歴史館を楽しんでいる。
こんなに楽しんでいていいのかな?でも、連絡もないし、今はいいか!
一方で、トライアは。
ターゲットの男が路地の中にある家に入っていったようだ。
「ターゲット。路地の室内に入りました。どうしましょうか」
「なら、猫型になって、窓からでもこっそり覗いてくれ。異常があれば、捉えるのはオッケーとする」
暴力行使もありと許可がくだされた。
こうなってしまえば、トライアからしてみれば、やりやすい。
「分かりました」
通信を切断すると、言われた通り、猫型に変身した。
「ニャ!(窓はあるかな?)」
取引をするようなヤツの家には窓はあまり作らない。ということも、トライアは翔が見ていたドラマから理解している。
でも、その予想は外れた。
「ニャニャ!(普通に3つ窓がありますね。路地だから、元々人目にはつきにくいと警戒をしなかったのでしょうか)」
そう考えつつも、窓からこっそり覗き込んでみる。
中の声は聞こえない。
でも、顔まではっきりと中の様子は分かる。
中に人は4人。
その内の一人がカバンを持ち出して、それをターゲットが受け取っている
「ニャ〜(これが取引現場っていうやつですね。とりあえず、黒寄りのグレーですね。捉えましょうか)」
人形に戻るのと同時に窓を割る。
ガシャーンと大きなクラッシュ音が響いた。
「さて、何の取引中ですか?僕に教えてくれませんか?」
落ち着いた声で問いかけてみる。
「誰だ?猫?」
「・・今は協力しましょうか。私達の取引を邪魔する敵ですね」
4人の内の片方のリーダーが4本のナイフを取り出し、指の間に挟んだ。
それに引き続き、他の3人も武器を取り出した。
ナイフが二人、拳銃が一人。
「少し、銃は厄介ですね(でも、逃げるわけにはいきませんね!)」
「私達としても、泥仕事はあまりしたくない。降伏するなら、殺しまではしない」
相手がそう上から目線で言ってきている。
「ですが、銃ごときでいい気にならない方が良いですよ。その前に貴方がたは魔法は使えますか?」
4人全員が顔を見合わせ始めた。
「フンッ!魔法なんかなくとも、女一人くらい、余裕だ。4人同時に相手してやるのも申し訳ないくらいにな」
「では!」
トライアが動き出した。
「撃て!そして、ナイフを構えろ!」
「そんな暇があるとお思いで!『フロストブレイク』」
銃を持った男の後ろに回り込み、技を放つと、相手は凍りついた。
「フフッ!」
トライアは小笑いすると、氷に軽く小突いた。
その瞬間、氷は粉々に砕け散った。
フロストブレイクは、相手を凍らせ、破壊する。ただの人間相手なら、ほぼ即死させられる。ファイアタッチと同じレベルの技。
「同じ様になりたくないのでしたら、早く何をしていたのか答えてください」
「こいつ、ただの猫じゃねぇぞ!どうしますか、リーダー!逃げたほうが」
「チッ!撤退を・・」
リーダーがドアの方をチラッと確認した。
「撤退ですか?できるならしてみてください!」
トライアはあえて、氷と炎をそれぞれの手のひらに浮かび上がらせて見せた。
「逃げろー!」
全員が出入り口の扉に向かって、走り出した。
「フフッ!『ファイアオーラ』」
高熱の熱気を放つ技だ。
放った瞬間、3人の男が一斉に倒れた。
「う〜ん。やりすぎてしまいました。(でも、これは翔様に褒めてもらえますよね!)1人しか息していませんね。マリアナさん、どうしましょうか?」
「連れ帰ってきてくれ!事情聴取をする。今、そっちにワープを開く」
星内であることと、座標が分かる。
その2つの条件さえ揃えば、指定した一箇所に宇宙船と繋ぐワープホールを作り出せる。
宇宙船に内蔵されている機能の一つ。
「分かりました」
宇宙船に乗っている6人には、全員腕輪を所持している。能力が付与されているのは、コスモスとマリアナだけだが。
その腕輪を通して、全員の居場所を知れる。
「よいしょ!重たいですね」