任務中−2
一方で・・。
「彼は今、家の中にいます。しばらく出てくる様子はありません」
「そうか。あと、対象の名前が判明したら連絡してくれ!貴族と関わりがあるとなれば、少しくらいは手がかりがつかめるかもしれない」
そう言われてみると、マリアナの考えはトライアにも理解できた。
「確かに、そうですね。名前が分かり次第、連絡します」
「ああ!あと、明日は私が調査する!交代は大事だ!」
「・・はい。了解しました」
ピッと電話を切った直後・・。
どこからか、微かにキャーという悲鳴が耳に届いた。
(どこ?・・場所把握完了!)
悲鳴が聞こえた場所まで、数メートル。
トライアは猫族だ。耳と鼻の良さは人間の数倍。位置の特定も彼女からしたら、お手のもの。
「でも・・どうしよう」
ターゲットは今は家の中。しばらく出てくる様子はないけど。
離れてる間に、家を出たら・・そのリスクもあるが、とライアが取った行動は・・
「ニャン!(行くしかないよね)」
猫型に変身し、屋根から屋根へ飛び移り移動をする。
「ニャ!さて、そこの人、何をしているんですか?」
「誰だ?猫?」
相手の男は戸惑っている
「そうかもですね。そんなことより、質問に答えてもらいますよ。何をしているんですか?」
「いいから、そこをどけ!」
一秒の間もなく、男が怒鳴り返してきた。
「はぁ〜」
トライアが深くため息を付く。
「(話が聞かない相手には、これしかないですよね)仕方ないです。少し痛いですよ」
弓はまだ完璧ではないから、外す可能性がある。
と判断したトライアは魔法で戦う判断を下し、手を構えた。
「フンッ!無理やりどかしてやる!」
相手が懐から、スッとナイフを取り出した。
トライアは攻撃をされる前に、猛スピードで接近し、手の平にボッと炎を浮かび上がらせる。
「『ファイヤータッチ』」
その炎を相手に接触させることで敵を燃やすことができる魔法だ。
「なんだ?その魔法」
相手はナイフを構えると、トライアの方に突っ走ってきた。
「いいんですか。早めに決着がつくだけですよ」
トライアは、あえて炎をわかりやすく見せてみることにした。
「その魔法が何だ!」
相手がトライアの頭目掛けて、ナイフを振りかざしてきた。
「遅いですね」
その攻撃を猫型に変身し、体を小さくして、攻撃を避けた。
「じゃあ、終わりです」
「待て!降参する!」
男はテイフが命中する前に燃やされる。負けると判断したようだ。
ナイフがカランと地面に落ちる音がした。
「降伏しても無駄ですよ。どっちみち気絶はしていてもらいますから」
だが、トライアは走りを止まる様子を見せない
「待ってくれ!本当に・・」
「じゃあ、眠っていてください。安心を。死なない程度の火力に調整しているので」
手が相手に触れ、男の体がほんの一瞬燃え上がった。
男は声を上げるまもなく、倒れ込んでしまった。
どこも火傷も傷も負わせていない。完璧な力加減。
「そこの壁に寝かせておきましょうか」
「あ、あの。なんで、助けてくれたんですか?」
それに答える前にトライアは男を人目に見つからそうな影の壁にそっと寝かせつけると
「誰かが困っていたら、助けるのは当たり前です。(って、翔様の見ていたアニメ・・でしたよね。で言ってたのを覚えていたなんて言えませんよね)」
「私もその意志、見習いたいです。あの・・何かお礼でも」
トライアは、お礼は別にいらない。
今必要なのは情報
「なら・・」
うまく聞ける言い方を考えてみる。
「いくつか質問させてください」
「質問ですか?」
相手が首を傾げている。
「そうです。僕はこの国は初めてなんです。何か良い情報でもいただけないかと」
ここは正直に言ってもいいと判断を下す。
「情報ですね。具体的に何が知りたいんですか?」
相手も教えてくれる気はある。
「そうですね。まず・・」
質問を始めようとした時だった。近くでガチャッとドアが開く音が聞こえた。
「えっ!」
音の方向からして、ターゲットの家。
「(外出する様子はなかったはず。予想外の事態!戻るしかない)」
トライアは再び猫の姿になると、屋根に飛び乗り、定位置に戻り始めた。
「ちょっと!情報はいいんですか」
その声はトライアには届く前に離れていってしまった。
定位置に戻ると、ちょうど住宅街の角を曲がるターゲットが見えた。
「間に合いました!(人を助けるにしても、時間は使ってられませんね。間に合ったから良かったものの。もし、見失っていたら、翔様やマリアナさんに申し訳が立ちません)」
トライアは息を整えると、再びターゲットを追いかけた。
歴史館内に場面が切り替わる。
「広い!」
「ですね。私もここに来るのは2度目なんですよ」
この国の住民だし、何回か来ていてもおかしくはない。でも、2回は想像よりかは少ない。
「じゃあ、案内できるの?」
「ええ。でも、お二方は初めてですよね。なら、ご自身で見て回るのがオススメですよ」
確かにノエルさんの言う通りだ。
こういうのは自身の足で探したりするのがベスト。
「そうだよね。誰かと一緒に来たことなかったから、分からなかった」
「いつもはこういう場所はお一人で?」
「うん・・」
私も一人でこういう場所に来るのは少し寂しい。
でも、メリットを上げるとしたら、自分のペースでゆっくり見れることだろう。
だとしても、デメリットのほうが多いと思う。
「それは寂しかったと思います」
「ノエルさんは?今日は一人だけど」
キラナの指摘は、たしかにそうだ。何か理由でもあるのだろうか
「今日だけです。前はお兄様につれてきてもらいました。今日は急用で行けなくなってしまったようなので、私一人というわけです」