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某県某所のモスバーガーにて

作者: うまみ

 夜中に小腹がすいたら、なにかとモスバーガーのドライブスルーを利用する。コンビニ弁当の場合もあるが、それは運転が面倒な時くらいなもので、どちらかといえばモスバーガーのほうがテンションが上がるし、なによりモスシェイクが美味くてしかたないのだ。冷えっ冷えのシェイクを帰りしなの車内で飲むのがたまらない。私のささやかな楽しみでもある。

 

 ある日、私は例によってモスバーガーに行った。

「いらっしゃいませ。ご注文がお決まりでしたら、マイクに向かってお願いします」

 変わり映えしないマニュアル接客を受け、これまた変わり映えしないメニュー表を眺める。まあ、かく言う私も、変わり映えしない組み合わせを注文するのだが。

「テリヤキチキンバーガーのオニポテセット、飲み物はコーヒーシェイクで。あとホットドックの単品を一つ。以上で」

「ご注文を繰り返します。テリヤキチキンバーガーのオニポテセット、お飲み物はコーヒーシェイクで。それとホットドックを単品で一つ。以上でよろしかったでしょうか」

「はい」

「ホットドックは車内で飲まれますか?」


 ――は?


 飲まないよ? だって飲み物じゃないもの。

 いやいや、うん。どうせシェイクとホットドックを言い間違えただけだ。わざわざ指摘するほどのことでもないし、とりあえず「はい」と答えておけば大丈夫だろう。

「……はい」

「かしこまりました。ストローを刺してお渡しします」


 ――ストロー? ホットドックに?


 脳内に浮かんだ絵面がヤバい。斜めにぶっ刺さってんのか? それとも垂直ど真ん中にぶっ刺さってんのか? もう分かんねえよ。

 無数の疑問を抱えたまま商品を受けとったわけだが、ちゃんとストローの刺さったシェイクを手渡されたので助かった。


 それから数日後。また例によってモスバーガーに行った。先日のことなんて、すっかり忘れていた。

「いらっしゃいませ。ご注文がお決まりでしたら、マイクに向かってお願いします」

「ロースカツバーガーのオニポテセット、飲み物はコーヒーシェイクで。あとチリドックの単品を一つ。以上で」

「ご注文を繰り返します。ロースカツバーガーのオニポテセット、お飲み物はコーヒーシェイクで。それとチリドックを単品で一つ。以上でよろしかったでしょうか」

「はい」

「シェイクは車内で飲まれますか?」

「はい」

「かしこまりました。ストローに包んでお渡ししますね」


 ――は?


 どうやって包むの? 何本も巻きつけるの? つうかあなた、この前の店員でしょ。

 あぁ、きっと彼は疲れているんだ。だから頭の中がグチャグチャになって変なことを言い出す。ちゃんと休みをもらえてるのか心配になるよ。

 でもまあ、客の私が店員の身を案じたってしかたない。それにこっちとしては、注文通りの商品が受け取れれば問題ないのだ。

 窓口で料金を支払った。いつもなら真っ先にシェイクを手渡されるのに、なかなか出てこない。しばらくして受け取ったシェイクは、しっかり紙袋に包まれていた。

 あのぅ、車内で飲むって言ったよね? なんでこうなるの? こんなことするぐらいだったらむしろストローで包んで寄越せオタンコナス。


 それから数日後。またまた例によってモスバーガーに行った。だが今日は少し違う。いつもは一人だが、今日は友人と二人だ。友人に「変な店員がいる」という話を聞かせたところ、面白がって「行ってみよう」ということになったのだ。

 二人とも別に腹が減っていたわけでもなかったから、シェイクだけ注文することにした。友人が運転手だったので、私は助手席で妙に浮ついていた。

 車がメニュー表の横にピタリと停まる。スピーカーがガサッと音を立てる。

「いらっしゃいませ。ご注文がお決まりでしたら、マイクに向かってお願いします」

 私は固唾を飲んだ。どうせ何も起こらないだろうが、何か起こったら最高に面白いじゃないか。もはやシェイクなんかどうでもいい。

 だがしかし、店員が何かやらかす以前に、友人がとんでもない天然ボケ爆弾を投下してくれた。

「マックシェイク二つ!」


 友よ。君も疲れているのかい?

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