第34話 これは俺の終わりであり、本当の始まりかもしれない
「ここが西園寺さんの別荘⁉」
岸本和樹は、その遠くまで広がっている水色の海の景色を見て感動していた。
まさか、西園寺家の別荘が島全土だとは思ってもみなかったからだ。
どんなに富裕層な家庭でも、海の近くにある別荘だと思うのが普通だろう。
「どう? 驚いた?」
「それはそうだよ。だって、まさかね……」
和樹は近くまで歩み寄って来た西園寺智絵理に対して反応を返すが、スケールが広すぎて言葉を失っているのだ。
「岸本さんは、今から海で遊びます? ここ一帯が私の家の土地なので、他人の迷惑も気にせずに遊べますよ?」
「まあ、海に来たら、それは遊ぶしかないよな」
和樹は今日のために水着専門店で新しい海パンを購入していたのだ。
海が近くにあるのに、ただ平凡に眺めているだけでは勿体ないと思い、和樹は別荘の建物がある方へと振り向いた。
すると、別荘の方から誰かがやってくる。
「お兄ちゃん、早く海で遊ぼうよ!」
好奇心旺盛な妹の咲は活気のある走りを見せ、スクール水着のまま和樹の元へと近づいてきたのだ。
「お兄ちゃんは着替えないの?」
「丁度、今から別荘で着替えようとしていたところだったんだ」
「わかった。でも、早く着替えてきてね! 今日、真帆ちゃんがいればもっと楽しかったんだけど。でも、家族旅行ならしょうがないよね。私、一人で先に行ってるね!」
咲はたとえ一人だったとしても、はしゃいだまま、太陽で照らされている砂浜まで駆け足で向かって行く。
遠くの砂浜で妹は足の裏が熱くなったのか、熱がっている仕草を見せていたが、勢いでその場を走り抜け、海へと飛び込んでいたのだ。
「西園寺さんも着替える感じ?」
「私はもう準備は出来てますから」
「え?」
何の前触れもなく智絵理が衣服を脱ぎ始めた事で、和樹は頬を紅潮させてしまう。
次の瞬間、彼女は水着姿になったのだ。
智絵理は普段着の下に、水着を着用していたらしい。
用意周到すぎる。
彼女はお嬢様風な水着を身に纏っており、パッと見、スカートの丈が短くなった感じのワンピースにも見えるのだ。
「私の水着はどうですか?」
「いいと思うよ……でも、西園寺さんって、そういう恰好するんですね。制服とか、体操着姿しか見たことがなかったので珍しいというか」
和樹は気恥ずかしく、頬を赤く染め、照れていたのだ。
「そうかもしれないわね」
智絵理の水着姿は普通に似合っている。
モデルみたいな感じであり、目の前に佇んでいる彼女に対し、心臓の鼓動を高鳴らせていたのだ。
和樹がどぎまぎしていると、誰かが駆け足で別荘の方からやってくるのが見えた。
何かと思い、和樹が遠くの方を見やると、それは稲葉玲奈だったのだ。
むしろ、その姿を見て遠目でも玲奈だとわかる。
玲奈が走っていると、その爆乳が物凄く揺れているからだ。
ビキニ系の水着であり、少しでもそれがズレてしまったら、見えたら駄目なものまでもが露わになってしまうだろう。
和樹はヒヤヒヤしながら、玲奈の姿を見守る。
「和樹君、一緒に遊ぼ!」
「あ、ああ、俺もそのつもりだったんだ」
和樹は玲奈の際どい姿をチラッと見て、軽く返答する。
今まさに、視界の先には露出度の高い二人がいるのだ。
右を見たら、智絵理。
左を見たら、玲奈。
刺激が強く、下半身の存在を隠すためにも、いっその事、このままでもいいような気がしてきた。
「和樹君、どうかしたの? 物凄く顔色が赤いけど?」
「ま、まあ、色々あるんだよ」
「ふーん、もしかして、エッチな想像をしちゃってる感じ?」
玲奈はさらに追撃を仕掛けてくる。
和樹のアレが、すでに陥落しそうな状況なのに、彼女の進撃は止まる事を知らないらしい。
「ねえ、見たいなら見せてもいいけど♡」
玲奈は、谷間がほぼハッキリと見えている状態なのに、両手で胸を真ん中に寄せたりして、和樹の事を誘惑してくるのだ。
「お、俺、一旦、別荘の方に行くよ!」
和樹は少々俯きがちになり、二人の間をすり抜けるように、その場から立ち去って行く。
はあぁ……良かったのか、これで……でも、もしかしたら、玲奈の下着がズレて……い、いや、そんなヘンタイな事は――
和樹は西園寺家の別荘の建物前で一呼吸をついて、それから別荘の扉を開けようとする。
すると、丁度、中原梨花が現れた。
だが、突然の事態を想定していなかった梨花は態勢を崩してしまい、和樹へと倒れ掛かって来たのである。
「きゃッ!」
「うわッ……イテテ……一体何が……」
なんか重い……え⁉
和樹が瞼を見開いた時には、別荘の扉の前で仰向けになっており、梨花が和樹の上に騎乗するように存在していたのだ。
「な、なんでよ⁉」
「え⁉」
梨花が頬を真っ赤に染め、大声を出す。
和樹も意味が分からず、裏声になっていた。
梨花は現状に恥ずかしくなったのか、その場から逃げるように立ち去って行く。
「手を差し伸べるとかさ、もう少し気の利いた事をしてくれれば良かったのに」
和樹は地面にぶつけた背中を擦るようにして、その場に立ち上がるのだった。
和樹は別荘の、とある一室で上だけ全裸になり、その上からアロハシャツ的な服を着る。
準備を整え終えると、和樹は別荘から出た。
再び外に出ると直接太陽の日差しを浴びてしまい、和樹は眩しさを感じて額に左手を当て、光をカットする。
和樹が砂浜の方へ到着した頃には、四人は海で遊んでいた。
和樹も混ざり、浮き玉を使った遊びに参戦するのだ。
「はい、和樹君ッ!」
玲奈が浮き玉を上へと持ち上げるように弾く。
その次の瞬間、玲奈の上の水着がズレ始め、しまいには取れてしまう。
和樹は飛んできた浮き玉を別の方へ押し返そうとしたが、上半身が全裸状態になってしまった玲奈の姿を見て、それどころではなかった。
しかも、玲奈の水着は、海の中に消えていく。
「な、なんでこんな時にッ!」
玲奈は両手で胸元を隠す。
咲、智絵理、梨花も含め、和樹は玲奈の水着を探す事となった。
「あった?」
「全然」
「でも、これかな?」
「それは魚でしょ」
「でも、こっちの方に」
皆で探している際、和樹はそれらしきモノを目撃し、手にする。
「こ、これは?」
和樹は、玲奈の水着とは違う水着を手にしていたのだ。
「それ、私のなんだけど」
「梨花の⁉」
「というか、ヘンタイ返して!」
梨花は睨みつけてくる。
「ご、ごめん、梨花の水着も流されるとは思わなくて」
「か、返して。私の上の水着返してって!」
「返すからちょっと待って」
和樹は海の波に足元を軽く掬われてしまい、態勢を崩してしまう。
「な、何、和樹君⁉」
近くにいたのは玲奈であり、そのまま彼女を押し倒してしまうのだ。
和樹が気づいた時には、手の平には物凄く柔らかいものが接触していたのである。
「か、和樹君、それはさすがに、こんなところで」
和樹は水の浅い、砂浜近くのところで玲奈を押し倒しており、しかも、梨花の水着を手にしたままで、そのKカップの爆乳を揉みしだいていたのだ。
「お兄ちゃん、ヘンタイだよ」
「まさか、岸本さんがそこまで過激なんて……」
「あんたさ、相当なヘンタイなようね!」
和樹は四人に囲まれたまま、梨花の悲鳴のような罵声が、その場に響く。
和樹の夏休みはこれから始まったばかりだが、先行きが怪しく感じ始めるのだった。




