蹂躙
脳内に響く人の声に似たナニカ が通知する内容について少し考える。
__突如湧き出した’’モンスター,,
それに四徹で重くなっていた体が不自然に’’回復,,する現象、それらを考えれば自然と浮かんでくる答え、それは──
「ふっ……」
俺は導き出した’’答え,,を意味深に微笑み口にする。
「───だめだわっかんね★」
《───………》
何処かの誰かがわかんねぇのかよとずっこけたような気がするが、仕方が無いじゃんね? こんな少ねぇ現象でこうだ! なんて答えは出てくれんとですよ。
オラ悪くねぇだ。
「ま、分かんねぇからって一人芝居しててもしょんねぇからな。 取り敢えず、妹様迎えに行きますか。」
俺は晩御飯を買い出しに行こうとした足を学校へ向き変える。
「ははっ、にっしても……本当僅か数分でこの惨状か……」
逃げ惑う人々、それを嘲笑し追いかけ回すゴブリンやどこかの漫画や小説で見た事聞いた事があるような生物達が追いかけ回す光景を目に映し、俺は僅かに頬を引き攣らせた。
「日本だけで起こってるのか、それとも世界的に起こってるのか知らないけど。世界崩壊何日前みたいな光景だな。」
ふむ、スマホを起動させ毎日お世話になってるぐーぐる先生を開き、ニュースを見てみる
……へぇ、世界的か、こりゃ世界滅亡かな?
そんな感想を心にしまい妹様に通話する、……が通話 被ったか。
お父上、は…ないな、と なるとお母上かな? 取り敢えずメッセージ残しとけばいいか。
『今から迎えに行くから、場所教えて、そして出来るだけうごかないように』っと。 スタンプは……漢梅スタンプでいいか
さて、と
「今の時間なら、生徒会室…んや、避難場として体育館とかか?」
走って三分くらいかな。
そんな雑な見積りをして走り出そうとしたその瞬間、モンスターたちに追い掛け回されてた人々、そこからはぐれてしまったであろう親子が目に入ってしまう
片足を掴まれ引っ張られる母親だろうと推測できる女性に縋り付き、少女がその大きな瞳からボロボロと大粒の涙を零している。
それを耳障りな声で嗤うゴブリン、
お腹を守る体勢で必死に助けを求める母親、その声は必死、”自分はいいから娘だけは”と声を枯らし、家の中から覗く多数の視線、或いは自分たちを囮になんとかシャッター付きの店に逃げ込んだヤツらに叫ぶ。
「誰かッ……! 娘をッ! お願い……逃げてッ!!!」
助けを求める言葉と、娘に逃げて貰おうとする言葉が混雑し母親としての願いが周辺に虚しく響き──
────その声に答えるのは玩具を逃した、悪意に満ちるモンスター共
悲痛な泣き声を上げる少女に魔の手は差し掛かる
俺は、ソレを思わず足を止め見てしまう、早く妹を、俺の大切を迎えに行かなきゃならない……はずなのに、俺の体は動かない。
────腹が立つ。
こんな事をウジウジと悩む自分に、
俺は片手に持つ先程ゴブリンから奪った錆びてる剣を、投げる──
「────い"や"だァ"!! ママァ"━━━━!!!!!」
──少女に手を伸ばしてたモンスターへと
俺を見ていた窓の隙間などから覗く少ない視線が”あーあ”や”バカなことを”と言いたげな視線に変わるのを察する、
____が、うぜぇよ
何奴も此奴も人を苛立たせやがって……
耳障りな声で嗤うバケモン共も、自己大切で子持ちの妊婦を囮にするヤツらも、それを見てるだけの癖に賢い気取りで人を見下ろすヤツらも、
───こんな法すら機能してるか怪い世界になったんだから、なんて自分のやりたい行動を優先する言い訳をしそうになる自分にも、心底腹が立つ。
異様に軽くなった身体を、今迄培ってきた技術で動かす
飛んで来てる剣に見向きもしない、少女に手を伸ばす事だけに夢中なモンスターへ、一瞬で距離を殺し懐へ潜り込む
そしてそのモンスターの腹に掌底を喰らわせてやる。
投げた剣がそのモンスターの頭部に突き刺さるのは俺がモンスターの内部をぐちゃぐちゃにしたのと同時だった。
突き刺さった剣を引き抜き……
産まれてこの方、自分でもこんなに低い声が出るのかとビックリするほど低い声で宣言する。
「───5分だ。全員無惨に殺してやる、早く終わらせてェから纏めて来いよ」
──《強位の「先ずはさっきから特に不愉快な鳴き声を聞かせてくれてるテメェだ」
『ギャギャ!!』
いきなり現れたように見えたんだろう、俺の登場に呆けてた様子のゴブリンだったが俺が声を投げたらコチラに反応を示した、そして即断で片脚を掴まえてた腕に力を入れようとする所を見ると鈍重な反応速度でも悪知恵だけは働く御様子で、
俺の行動、そして周囲の視線からどれが弱みか的確に炙り出したと見える。
十中八九、妊婦の母親を人質に使う気だろう、それとも目の前で殺してこちらの無力を知ら閉める気か。
どちらにせよ
「鈍重すぎなんだよ」
俺の剣がテメェの腕を跳ねる方が速ぇんだよ
ゴブリンの醜悪な面が唖然に染まる前に俺の返す剣がヤツの首を跳ねた。
びぇぇえええんと泣きじゃくる少女が母親に抱き着くのを確認し、俺は目線を周辺に一瞥し、周辺のモンスターの数と仮名だが種類に当てをつける。
ゴブリンが2匹、コボルトが4匹、それにマンションの陰からこちらを盗み見る、豚面の巨体。オークでいいや、それが1匹
で、全部か
「んじゃ殺るか。」
先ずは様子を窺ってる2匹のゴブリンから片付ける、絶妙に距離を取って着き過ぎず離れずの距離だから下手すりゃこの母娘が危ねぇしな。
距離を詰め、1匹を袈裟斬りに、もう1匹を返す剣で斬ろうとしたが、中断。
俺が少し離れた瞬間母娘に向かって4匹居たコボルトの1匹が馬鹿みたいに速ぇ判断で走り出した。
このゴブリン1匹をほおってでもコボルトの方を対処した方がいいと、判断───した瞬間にその判断を捨て、剣をコボルトに向かって投擲。
片手に盾を持ち、グギャギャと何かを唱え出したゴブリンの首に蹴りを叩き込みその首をへし折る。
あっぶね、今の魔法か? 飛び道具持ちは放置出来んわ
投擲した剣がコボルトにぶっ刺さる、それを視認する、そして両手で崩れ落ちる前に掴んだ2匹のゴブリンの死体を遅れて走り出したコボルト3匹に投げ付ける
それなり以上の速度で投げれたゴブリンの死体はコボルトの足留めには十分の時間を稼げた
コボルトの胴体に突き刺さった剣を引き抜き尻餅をついたコボルト2匹の首を刈り取る
辛うじて尻餅を着かず怯むだけにすんだコボルトが俺に向かって鋭利な爪を振るってきた、空気を裂く音共に俺の首に迫る爪を軽く頭を逸らす事で避け、下から振るった剣でコボルトの胴体を袈裟斬り状に斬り離す
「──あと1」
俺はドンドンとアスファルトを揺らし母娘の元に悪辣な表情を浮かべ走るオークを見据えながら呟く、一瞬後に地面が弾けたような音を背後に
分厚い駄肉に覆われたオークの首皮膚へ剣を突き立て、────振り抜く。
血飛沫を撒き散らし跳ね飛ぶオークの頭部
そんなグロテスクな光景を見ないように、泣きじゃくりから立ち直りいい教育の賜物だろう、御礼を言おうと近付いて来た少女の目を手で軽く塞ぐ。
「お、お姉ちゃん……??」
………まぁ、間際らしい見た目だもんな、俺。
「ふっ、少女よ俺はお姉ちゃんじゃなくてお兄ちゃんな?」
「わかった! おねっ……お兄ちゃん!」
「若干怪しかった……怪しかった、がよしっ」
錆びてる剣をその辺に投げ捨てる、
少女の目を塞ぎながら軽く抱き上げ、オロオロとこちらと俺の背後にあるオークの死体に忙しなく視線を移す母親の元へ少女を持っていく。
「ち、ちーちゃん……!」
「あ! おねぇにちゃん! ありがとう!」
少女よ、多分お母様が声を掛けてきたのは御礼を言いなさいとかそう言うことじゃないと思うぞ、てかオネェにいちゃんはヤメテクレ、それならまだお姉ちゃんの方がよきだぞ?
「ちがう……! そうじゃない……!」
「……???」
くっふ……!
「少女よ、目を瞑っていられるか?」
「? 出来るよ!」
「そうかそうか、なら瞑っててなお姉ちゃんとの約束だ。」
「わかった!」
少女の目を塞ぐ手が空いた、その手で地面にへたり込む少女の母親に手を差し出す。
「大丈夫、ではないですね、立てますか?」
「あ、ぇっと、そのッ」
混乱の極みで言葉が出てこない様子の少女の母親に出来るだけ安心できるような雰囲気を纏い微笑み掛ける。
「無理そうですね。 ……少し失礼します。」
「えっっちょ!? キャッ────」
あまり時間も掛ける余裕がない為、一言断りを入れ、少女の母親を横抱きさせてもらう。
そして、2人に負荷を掛けないように何度かマンションの壁を跳躍し、ある程度の階に足を踏み入れる。
唖然と固まってる少女の母親、きちんと目を瞑っていた為何が起きたのか分かってない様子の少女
「へぃ少女よ」
「へぃ! なんだいお姉ちゃん!」
「自分家が何処にあるか分かるかい?」
「なんか大っきいマンションだよ!」
「あ、スマンもう目を開けていいぞ?」
ん? てかマンション……って。
「ぁ、あのぉ……」
「ママ!」
「少女ママさん」
「おうちの前に目を開けたらついてたよ!? 魔法なの!? お姉ちゃん魔法使いさんなの!?」
「ここです、家……」
あ、へぇ〜……ビックラポンのビンゴなんか。