月
どこまでも追ってくる月を車の中で見ていた。
今日はシュークリームの頭を取ったような形。
昔お父さんに聞いた。
「ねぇ、どうして月は形が変わるの?」
「それはねお月様が夜忙しくて眠れないから、悲しくて涙を流す。
それで段々元気が無くなって、弱ってしまうからなんだよ。」
「じゃあまん丸いお月様は?」
「あれはね太陽が元気を無くしきった月を元気づけようとして、光と熱
をいっぱいいっぱいあげているからなんだよ。」
「ふーん、いつもまん丸だったらいいのに」
「太陽にだって悩みはあるさ。月の事ばかり考えていられないんだ。
他にとても寒い星があるからね。そういう星も応援しなくちゃならない
んだ。」
「じゃあ月が隠れてしまうのは何故?」
「それはねとても辛いことがあって誰にも見られないように大泣きして
いるんだよ。お月様は恥ずかしがりやだから夜にしか出てこないだ
ろ。」
「じゃあ太陽も辛い事があったら雲にお願いして隠れてしまうんだ
ね。月も太陽も同じだね。」
「そうさ、太陽は昼働いて夜休む。辛い事があったら姿を隠してしま
う。人間とも同じだよ。」
月は可哀相だ。でも何となく月を見上げてみたら笑っているように見え
た。今日の月はなんだか嬉しそうだ。何かいいことでもあったのか
なぁ。車を降りて夜空を眺めた。やっぱり月が一番大きいや。牛乳と
ジャムパンを食べながら月を見ていたら一時間も経っていた。その間月
は沈む事なく、僕を照らしていた。しかし少しづつ痩せ細って見えたの
は錯覚だったのかな。泣いたり笑ったり忙しい奴だ。小さい頃聞いた話
はもう信じていない。ただ人の心の様に満ち欠けする月を人間と同じだ
なと思って僕も泣いた。